Vol.5 新魚導入について


新しく入れた生物がすぐ死んでしまうようであれば以下の項目をチェックしてみると良いと思います。
混泳面で問題が生じているようであれば、こちらのページをご覧ください。

■ 自宅水槽の環境
→水温は適したものであるか?
→水質に問題は無いか?
→混泳に問題は無いか?

■ 魚の状態
→入荷直後の個体ではないか?
→薬物採集の個体ではないか?

■ 水合わせ
→水合わせに時間をかけたか?
→水合わせの際にPHショック/アンモニアによるショックを起こしていないか?




■ 自宅水槽の環境
本来は許容範囲内の水質でも導入期には大きなダメージとなる事も多々あります。自宅水槽とショップ水槽の水温や水質の違いなども大きなストレスになります。少しでも環境変化によるダメージを無くす為に、念入りな水合わせと水質チェックが必要です。

■ 魚の状態
これはショップできちんと見極める必要があります。弱った魚を連れてきてしまっているようであれば、
すぐ死んでしまうのは当然の結果です。

海水魚はCB個体が少なく自然採集個体が大半です。例えば、アフリカ沿岸で捕獲された個体は中継基地(国外)で水の入れ替えなどが行われつつ日本に来ます。そこからショップを経て我々の手に届くわけです。
糞尿をすればパッキングされた水を汚し自家中毒死してしまうので餌もずーっと止められています。

輸送技術が向上したとはいえ、この過酷な道のりで大半の魚は死んでしまいます。
仮に生き残った個体もダメージは計りしれません。
ブラジル便などは卸さんの元では生き残った個体でも力なく横たわっている事が多いとも聞きます。
又、我々の元に届く1匹の為に50匹,100匹の魚が死んでいると言われています。




この魚達が一息つけるのはショップのストック水槽です。良心的なショップなら混泳を考え、餌付けをしトリートメントをして状態を回復させます。
一方で、ショップに入荷後に輸送ダメージから死んでしまう個体ももちろんいます。そうするとショップは損失を被るので入荷直後の個体を相場よりも安めに売りさばいてしまおうとするケースも多々あります。

■ 水合わせ
仮に良い状態の個体を選んでも、水合わせに失敗すれば全てが台無しです。
水合わせの際にはpHショックやアンモニアショックといった致命的な現象が起こりがちです。
少しでも魚の負担を減らす為に30分程かけて温度合わせをし、1滴づつ水合わせをする事を推奨します。

■ 水合わせで起こるアンモニアショック
輸送中、魚はCO2を排出し水を酸化させる事でpHが低下します。

”pH値が低い時はアンモニア化合物は主にNH4であり比較的無害です。
しかし、pH値は8.0程度まで高くなった場合にNH4の一部がNH3に変化します。
このNH3は非常に毒性が高く魚が死ぬ原因となります。”

つまり、水合わせの為にpHの高い水を多めに注いでしまうと、元々パッキングされていた水と混ざる事でpHが上昇し、パッキングされていた水の中のアンモニアが有毒化されると言う事です。
対策は輸送時間を短くする事(通販は使わない。)や専用の中和剤の使用です。



最後に
しっかりしたプロセスで導入した魚であっても、1週間前後は不安定な時期が続き病気になる事もしばしばあります。白点・リムフォあたりは高確率で発症しますので治療法をマスターしておくと便利です。そして、1か月、半年、1年、5年と長生きしてくれるはずです。

自然の海で暮らしていたものを、人工的に作った水で飼う、というだけで相当の無理が生じているのは事実です。それを踏まえて、巧く本来の生命力を引き出してあげたいトコですね^^