36.2%。阿部寿樹が残したこの数字が語るのは、リーグ最強の右打ちの技術である。今季キャリアハイを記録した阿部の130安打を、方向別に分類した。右方向(右中間、右翼、一塁、二塁)が47本もある。今季のセ・リーグには規定打席に達した右打者が16人いるが、全安打に占める割合で最も多いのが36.2%の阿部。2番目が会沢(広島)の29.8%(104安打中31安打)で、最少はロペス(DeNA)の12.8%(133安打中17安打)だった。
「打率が落ちた6、7月あたりに『引っ張りが多いな』って感じたんです。僕は引っ張るとゴロが多い。そのときに得意な方向へって打撃を思い出したんです。自分ではもっと右方向が多いくらいのイメージでした」
自己分析の通り、凡打は左方向が多い。今季の躍進を支えたのは間違いなく右打ちだが、最も印象に残っているのは7月9日の広島戦(ナゴヤドーム)だという。5回に遠藤から右中間フェンスを直撃する二塁打を打った。「真っすぐをねらい、振り抜けた」という理想に近い打球だった。
このオフから取り組んでいるのは、明白なストロングポイントのさらなる強化だ。増やしたいのは安打数や割合ではなく飛距離だ。この16人の中で、右方向への本塁打がなかったのは中村(ヤクルト、5本)、大和(DeNA、0本)と阿部(7本)だけだ。
「フェンスまでは飛ばせるんですけど、越えられるようにしたいんです。表現としては右に引っ張るというか。そのために意識しているのは右手、右半身ですね。卓球のドライブを打つイメージです」
広いナゴヤドームが本拠地だから量産とはいかないだろうが、ビジターを中心に数本打てれば打撃の幅はグッと広がるはず。来季は実質2年目。厳しくなる他球団の警戒網を、進化した右打ちで打ち破る。