「恋に効く」「愛」「きれいになる」「彼とのコミュニケーション」…。現代においてセックスは、女性たちの間でカジュアルに語られ、受容され、「研究」されている。しかし、そのカジュアルさの一方で、「モテ」や「女子力」的なものの延長にセックスが位置付けられることに違和感を覚えるという声もある。
セックスは社会的に構成されているものである。私たちは、セックスの際にどうふるまい、何をすべきで何をすべきでないかといった筋書き(sexual script)を社会的に形成している。このようなセックスの筋書きは、ポルノや雑誌、ネット記事、SNS等で流布されており、私たちのセックス観をつくっている。
本稿では現代の女性たちのセックス観を形成するものについて考える。とくに、女性たちの置かれている社会的経済的位置とセックス観のつながりを重点的に考察してみたい。
※本記事ではセックスという語を、女性と男性間におけるものに限定して使用している
女性のセックス観の形成に大きな影響を与えている存在として、『anan』によるセックス特集が挙げられる。1970年創刊の女性誌『anan』は、従来の恋愛、性愛観を打ち破り、性に積極的な女性像をポジティブに打ち出した代表的な雑誌として位置付けられよう。
しかし、そのような『anan』のセックスの語られ方に2000年代以降大きな変化が生じているという。そう指摘するのが、北原みのりによる『アンアンのセックスできれいになれた?』(2011年)である。「これを読んでフェミニズムに目覚めた!」という1冊に選ぶ人も多い、フェミニズムの入門書的名著である。以下では、同書に沿って、セックス観の変化についてみてみよう。