2019-12-20

夜勤明けの帰り電車を待つ

現在私は工場勤務で、昼勤夜勤を繰り返す部署にいる。工場の御多分に洩れず、最寄り駅に各駅停車しかまらないような田舎職場があり、住んでいるのも各駅停車しかまらない安さだけが売りのアパートである夜勤場合、いつ終わっても30分は電車を待つ必要がある。

私は、かつてこの30分が嫌いで仕方がなかった。

工場勤務は退屈である。ただ同じ作業を繰り返すのみ。作業をしながら考え事をするか、うるさい環境を利用してそこそこの音量で歌うくらいしか退屈しのぎがない。そんな退屈が終わった後に30分も無為時間を過ごしたくない、早く帰って飯食って酒飲んで寝たい、以外の感情がなかった。

去年の今頃、勤務中退屈しのぎに考えていたことを、30分の退屈しのぎに文章に起こすことを始めた。工場勤務者の御多分に洩れず、私は頭が良くない。私がそれまでに書いた文章なんて、2ページと1行の読書感想文が恐らく最長だろう。四苦八苦しながら、勤務中もどう表現したらいいかを考えて考えて、駅最寄りの喫煙所タバコを吸いながら文章に起こす。あっという間に1000字、2000字くらい書けてしまう。2ページと1行の3倍以上の長さを、なんの苦労もせずに書けてしまうのだ。

かくして私は、この30分を文章を書くためだけに使うようになった。それからというもの、30分のために書くことを見つける、勤務中に考える、実際に書く、という日々を過ごしていた。誰にも見せない、自由に書く文章の楽しさを垣間見しまったのだ。

そして今、初めて他人に読んでもらうことを意識して文章を書いている。

12月初日4月から夜勤のない部署への配置換えが決まった。去年まで待ち望んだ常昼勤務だが、4月以降私は文章を書くことを辞めてしまうかもしれない。そう思うと、誰かに読んでもらいたいという感情が湧き出てきた。

この文章の書き始めが12月2日、夜勤9回=4.5時間かけて、ここまででおよそ800字。奇しくも2ページと1行に近い。誰かに読んでもらいたいと思った瞬間、文章を書くのが非常に難しく感じる。しかし、かつての2ページと1行とは比べ物にならないほど意味のある文章だと自負しているし、何より書いている間、ずっと退屈しなかった。

4月以降、私は文章を書くことを続けているだろうか。それはその時になってみないと分からない。しかし、これだけは言える。

今の私は夜勤明けの電車待ち30分が、たまらなく好きだ。

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