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【競馬・ボート・競輪】

アーモンドアイが熱発38.5度で“大事を取った” 理由 馬体温なら心配不要…そこには関係者の思惑が[有馬記念]

2019年12月20日 1時21分

運動を終えたアーモンドアイをやさしく撫でる国枝調教師

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[競馬は科学だ~若原隆宏~]

 出目などで結果的に目から外れて馬券を買うケースは別にして、有馬記念のアーモンドアイについて、まじめな文脈で逆らおうとするなら、最大の争点は香港遠征を「熱発回避」した調整過程となるだろう。どんな熱発だったのか。

 「熱発した」とされるのは香港への輸送が予定されていた11月30日朝。「38・5度」だとされている。「随分、高熱だなあ」と思うファンも多かろうが、比較する物差しがすり替わっていることにお気づきだろうか。平熱が「37度」とされる人間の体温が38・5度ならかなりの熱発だ。しかし馬の平熱は「38度」。発熱器官である筋肉に富む競走馬では、実態としてはこれよりもう少し高い。

 体温は測り方によっても示す数字が異なる。人では体温計の先を差し込む場所は口の中(舌下)、脇の下(腋窩=えきか)などがあるが、口腔(こうくう)温の方が若干高い傾向がある。腋窩温は少し低めに出る。「人の平熱は37度」のはずなのに、腋窩温で37度だと「微熱」と、われわれが経験的に考えるのは、こうした事情がある。

 馬では肛門に体温計を挿入して測る直腸温を用いることが多い。ほかに、運動生理学の実験では肺動脈血温をモニターすることもある。以前、夏季競馬の暑熱対策にからめて紹介した、放水で馬を冷やす実験では肺動脈血温で冷却効果をみていた。この実験では運動によって42度まで上昇させ、39度以下になるまでの時間を調べている。運動後の体温としては38度台というのは「十分冷やされた状態」にあたる。

 「38・5度で大事を取った」。とる「大事」にもいろいろある。国枝師にそこを問うと「まあ、普段なら特段問題にもならない。大丈夫だとは思ったが、輸送して、ぶり返して取り消したら(どこを使うという選択肢が)何もない」。

 関係者の思惑は複雑に絡み合う。高度な腹の探り合いを正面から聞いたって迷惑がかかるだけだ。だから直接的な聞き方はしなかった。記者はこの答えを「国枝師は有馬記念が使いたかったんだな」と、受け取った。

 

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