県内で教員養成の中核を担う琉球大学教育学部が、入学志願者を減らしている。2019年度の志願者は455人で、10年度の994人と比べて約54%(539人)減と半分以下になった。受験倍率も10年度の5・2倍から19年度は3・3倍に低下。予備校や教育関係者からは「敬遠される要因の一つは学校の多忙な職場環境。教員や教員志望者の質に関わりかねない」と懸念する。(社会部・徐潮)
志願者数は10年度の994人から11年度に875人落ち込んだ後、16年度まではおおむね800人台で推移。しかし課程再編で定員減となった17年度に595人となり、18年度も514人とさらに減った。
志願者減の要因の一つとみられるのは、教員の長時間労働や過重負担への懸念だ。県内大手予備校の沖縄受験ゼミナールで進路指導をしている伊佐眞志部長代理(41)は「教員の多忙化は深刻で、中学や高校では土日もボランティアに近い形で部活の顧問をしている。学生は教育学部を避けて他の学部に行き、『保険』で教員免許を取る傾向がある」と話す。
同学部は17年度から、教員免許取得を卒業要件としない「生涯教育課程」を廃止。もう一方の柱である教員養成系の入学定員は100人から40人増となったものの、志願者減少は続いており、生涯教育課程廃止が教育学部全体の魅力減につながったとの指摘もある。
一方、県立高校や公立小中学校の教員採用試験の受験者数も、ここ10年間で3割ほど減少した。琉大教育学部入試部門の委員を務める萩野敦子教授は「『先生はきつそうで、現場に出るのが怖い』という声がある。教員のなり手が減ると、教育学部の志願者も減ってしまう」と危機感を示し、「学生が教員になった後、安心して働ける職場環境を教育委員会は整備してほしい。長期的には教育関係の予算を増やして人員を確保し、教員の負担を軽減する対策が必要だ」と注文する。
琉大は志願者減に歯止めをかける対策として、教育学部の魅力発信や、より充実なカリキュラムの制定に力を入れるという。