女剣闘士見参!   作:dokkakuhei

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第6話 モぬけの殻

 エ・ランテルにある冒険者組合の軒先、ここには今ちょっとした人だかりが出来ている。殆んどは事件の匂いを嗅ぎつけた野次馬だ。

 

「本当にありがとうございました!」

 

 共同墓地での戦闘から1日経って、その顛末を聞いたンフィーレアが深々と頭を下げる。

 

「いやいや、護衛任務を受けておきながら依頼主を危険に晒してしまったんだ、むしろ謝らなければならない。」

 

 白金のプレートを下げた魔術師風の男が畏まって、依頼人である少年に頭を上げるように促した。

 

「ならば礼は私からさせてもらおう。ズーラーノーンの拠点を突き止め、その首魁を打ち倒した事、本当に感謝する。」

 

 そう言って会話に入ってきたのは歴戦の戦士の風格を備える壮年の男。エ・ランテル冒険者組合長プルトン・アインザックである。

 

「いえ、それも我々だけの力ではありません。というか寧ろあの方々の活躍有ってこその結果です。」

 

 そう言って魔術師はリカオン、クレマンティーヌ、ガガーランの3人を示す。実は霊廟地下でリカオン達が戦っている時、地表のメンバーもズーラーノーンの襲撃に遭っていた。信者達が霊廟を包囲したのだ。その際、クレマンティーヌが押し寄せる魔法の間を縫いながら跳び回り、信者達を次々に殺して回った。その場にはクレマンティーヌの動きを目で追える者は居らず、敵味方共殺戮ショーを漫然と受け入れることしかできなかった。

 

 アインザックとしては事件の当事者を何人か捕らえて尋問を行いたいと思っていたが、如何やら全員死んでしまったらしい。いや、ここは高望みすべきではない。街の脅威が1つ取り除かれたことを最大限評価すべきだ。まあ、実態としてはクレマンティーヌが口封じのために念入りに全員殺して回ったというのが正解なのだが。

 

「この度の素晴らしい活躍、既に聞き及んでいる。街を代表するものとして本当に感謝したい。」

 

 アインザックは3人に近づき恭しく言葉をかけた。先ず面識のあるガガーランに歩み寄り握手を交わす。その間もアインザックの視線はチラチラとリカオンとクレマンティーヌを気にするように忙しく動いた。話す機会を伺っているようだ。

 

「すまないが、彼女らを紹介してもらっても?」

 

「リカオンとクレマンティーヌ。今日会ったばかりでそれ以外は知らねえ。自分で聞いたらどうだ?」

 

「そうなのか?てっきり蒼の薔薇の知り合いかと思っていたが。」

 

 アインザックはくるりと向き直り、リカオンとクレマンティーヌの2人に正対する。

 

「私はプルトン・アインザック。こう見えてこの街の責任者の1人だ。差し支えなければ握手をしたいところなのだが。」

 

 そう言って右手を差し出した。残念ながらクレマンティーヌの興味を引くことはできず、そっぽを向かれてしまう。対して、リカオンは友人の愛想のなさを取り繕うように笑顔で握手に応じた。

 

「どうも、先程も紹介に預かりました。リカオンです。」

 

 握手をしてみてアインザックは驚く。一流の戦士は相手に触れただけでその力量が分かる。それは手の感触で剣の握り方や、腕の筋肉のつき方、体幹、動きの癖といったものが推し量れるからだ。しかしリカオンの手からは何も見えてこなかった。強いというのはなんとなく分かったが、アインザックの物差しではリカオンの強さを正確には測れなかった。

 

「あの…?」

 

 リカオンは自分の手に触れた瞬間、掴んで固まってしまったアインザックに心配そうに声をかけた。薬屋の2人といい、この街では初対面の人間の手を握りしめて離さない決まりでも有るのだろうか。今度から握手を求められた時は慎重になろうとリカオンは思った。

 

「ああ、いや、すまない。綺麗な手だったのでつい時間を忘れてしまったよ。はは、は。」

 

 アインザックがお茶を濁す。リカオンは眉を顰めて不思議そうな顔をした。

 

「おいおいオッサン浮気か?」

 

 ガガーランが面白そうに茶化す。アインザックはわざとらしく咳払いする。

 

「失礼した。ところで早速で悪いのだが、都市長が君たちに会って話をしたいと言っている。それにささやかだがお礼もしたいと。良かったら共に来ていただけないだろうか。」

 

「お礼って?」

 

 リカオンが図々しく訪ねた。アインザックはそれに嫌な顔1つせず丁寧に答えてくれる。

 

「都市の危難を退けたことに対して、都市長が栄誉賞を贈りたいと。」

 

「…ふーん。」

 

「街を救った英雄として機関紙に載せるとも。」

 

「……ふーん。」

 

「…後は超高級レストランのシェフに会食を用意させると。」

 

「行く!!!」

 

 アインザックは早くもリカオンの扱い方が分かった気がした。

 

 

 るんるん気分で前を歩いて行くリカオン。それに引き摺られる格好のクレマンティーヌ。後をついて行くガガーランとアインザック。アインザックは共にいた白金冒険者チームにも声をかけたのだが、彼らは元々のンフィーレアの依頼があると言って断った。謙虚な者達だ。

 

「ところで。」

 

 アインザックは前を歩く2人を見ながらガガーランに語りかける。

 

「彼女達、いや彼女だけか?私には途方もないくらいに強者に思えるのだが。君はどう見ているんだ?」

 

 アインザックの視線はリカオンにずっと向いている。ガガーランは自分が近くで見て判断したリカオンの強さを伝えた。

 

「俺の見立てではフルアーマーのガゼフのおっさんより強い。それに墓地ではまだ本気で戦ってない。」

 

 アインザックは信じられない言葉に息を飲んだ。ガゼフの強さを知っている身ではガゼフより強いとは到底認めたくはない。ただ墓地での彼女の戦績(スコア)はスケリトル・ドラゴン2体に動死体(ゾンビ)多数。それも一撃、二撃での話だ。そんな芸当はガゼフでも難しいのではないか。しかもその上まだ本気ではないと言うのか。言葉を疑うように視線をぶつけるが、ガガーランは至って真剣の面持ちで冗談を言っているようには思えない。

 

 アインザックはハッとなる。

 

「…では、先日彼女と門外で争ったアンデッドは我々が思っているよりも遥かに強大なのか。」

 

「ああ、もっと真剣に対策を考えたほうがいいぜ。」

 

 

 ーーー

 

 

 リカオン、クレマンティーヌ、ガガーランの3人は街の中心部にある建物で、都市長がいる応接間に通されていた。権力者らしい格式を整えつつ、くど過ぎて嫌味にならない程度に整えられた内装は見ていて気持ちがいい。ここの統治者のバランス感覚がとても優れていることを表している様だ。

 

「都市長ってどんな人なの?」

 

 リカオンは興味本位でガガーランとアインザックに聞いた。

 

「聡明で理知的な素晴らしい人だ。」

 

 アインザックが答え、ガガーランが頷きで同意した。ガガーランが頷くまで若干のタイムラグがあったのが少し気になったが、まあ置いておこう。リカオンはスラッとした長身でメガネをしている男性を想像した。

 

 リカオンは案内されるまま応接間に入り、そこで奇妙なものを目にした。調度品はエントランスや廊下と同じ様に美しく整えられている。その他にも歴代の権力者と思われる肖像画が並び、寄贈品らしい刀剣や盾も置かれている。その部屋の中、上座に座るおおよそこの場に似つかわしくない風体の人物。これ以上ないという程肥え太り、ぷひー、ぷひーと呼吸をしている人間。服の襟に首の肉が締め付けられてすごく苦しそうだ。額に付いた肉が垂れ下がり、目は窪んでしまってよく見えない。

 

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 リカオンは子供向け間違い探しゲームの問題を見る様な目で上座の男を見つめる。彼は客人がこの部屋に来たことを察知すると、おもむろに立ち上がった。

 

「よおこそ、このたびはきていただいてかんしゃする。わたしがぱなそれいだ。いちおうこのまちのとっぷということになっている。」

 

 ぷひー、と再び気の抜けた鼻息が漏れる。リカオンは軽く会釈した。男の喋り方に抑揚が無さ過ぎて上手く聞き取れなかったからだ。そして説明を求める様にアインザックに顔を向ける。何かの間違いではないかと訴える視線を添えて。しかしアインザックがパナソレイと名乗る肉塊と普通に会話しだしたのを見てその期待は打ち砕かれた。

 

 パナソレイはリカオン達に席に着くように指示する。恐る恐る椅子に座るが、やはり男の巨体が気になって落ち着かない。しかしそんなリカオンを余所に会話は進んでいく。

 

「さて、はなしはとおっているとおもうがわたしからもまちをすくってくれたことにかんしゃをもうしあげたい。ほんとうにありがとう。とくにががーらんくんにかんしてはほんらいならさきにほうしゅうをやくそくしてからいらいというかたちをとるのがすじなのだが、さきんじてうごいてもらってとてもありがたいことだ。」

 

「ああ、気にすんな。ズーラーノーンは何処でも厄介ごとの種だ。潰しておくに越したことはない。…でも俺たちをここに呼んだのは何も礼を言いたいだけじゃないんだろ?」

 

「きみにはおみとおしか。こんかいのけんにかんしてはちゃんとほうしゅうはじゅんびする。しかし、もっとじゅうようなことがあるのだ。とくにそこのおじょうさんがいちばんかぎになることだがね。」

 

「ふぇ、私?」

 

 いきなり話を振られて困惑するリカオン。パナソレイの言葉が聞き取りづらく全く頭に入ってこないのでまともに耳を傾けていなかった。さながら寝ている時に先生に当てられた学生の気分だ。

 

「門外のアンデッドの事ですな。」

 

「さよう。」

 

 アインザックが口を挟んだ途端に部屋の空気が変わる。パナソレイはそれに重々しく答え、ガガーランも興味津々だ。

 

「みっかまえにやつがもたらしたひがいはじんだいだ。あれがまちなかでおこなわれていたかもしれないとおもうと、いや、…こんな話し方はもう辞めだ。とにかく、奴に対する備えをしなければならないのだ。」

 

 パナソレイの雰囲気が変わった。話し方は理路整然となり、目つきも鋭いものに変わる。リカオンはいきなりの変化に目を丸くする。

 

「驚いたかい。アレをやっていると大体の人間がどんな性格か分かるのでね。君は性格も考えも顔に出てとても分かりやすいな。」

 

「す、すいません。」

 

「素直なところは美点だ。でも、自制を求められる事も多々ある。覚えておき給え。」

 

 パナソレイは小さく笑みを浮かべる。今の彼の風格はこの部屋のどの調度品よりも格式高く見えた。この姿を見れば誰もパナソレイが本当にこの部屋の主人なのかと疑う者はいないだろう。

 

 

「さて、君はあのアンデッドと唯一戦った人間だ。何か知っていることはあるかね。やはりズーラーノーンと何か関係が?」

 

(んー。あのアンデッドって多分モモンガさんだよね。)

 

「関係ないんじゃないのかな、多分。」

 

「なんと、やはり君は詳しいことを知っているんだな。奴はどれくらい強いんだ?君と何方が上なんだ?」

 

「メチャクチャ強いですよ。私より遥かに。」

 

 リカオンの断定に空気が静まった。クレマンティーヌは片目を開けて口を尖らせた。ガガーランは腕を組んで眉間にしわを寄せている。アインザックは驚愕に目を見開き、パナソレイは歯を食いしばって汗を額に浮かべている。

 

「街なんかその気になれば1時間と掛からず灰に出来ます。」

 

 リカオンの追撃にパナソレイは心を打ち砕かれそうになった。

 

「そんな、個体でそれだけ強いなど、対策のしようが無いではないか…。」

 

 相手が軍なら籠城でも何でもすればいい。ただ、1人で壁を打ち破る化け物に対してはパナソレイの持つ手札は脆弱すぎた。

 

「何か、何か打てる手はないのかね。」

 

 アインザックが藁にも縋る思いでリカオンに聞く。

 

「…消極的だけど、相手を刺激しないようにするしかないと思う。敵対しない者には割と寛容だった気がする。」

 

 リカオンはユグドラシル時代のアインズ・ウール・ゴウンの行動パターンを思い返す。彼らは悪質な愉快犯のPK集団だと噂されていたが、ターゲットは異業種に仇成す者と明確に決まっていた。

 

「そうか…。取り敢えず冒険者組合の方では全冒険者に御触を出そう。奇妙なスケルトンには絶対に手を出さないこと、戦闘になっても撤退を優先することだな。」

 

「後はこの門外のアンデッドの対策班を構成し直さなければ。撃退はできなくとも民の被害を抑えるように緊急時の連絡網の整備や避難誘導の手法を確立しなければ。この門外のアンデッドに…、ふむ、そろそろこいつに名前を付けようじゃないか。」

 

「奴の名か…。」

 

 その時、今まで黙っていたクレマンティーヌが唐突に喋り出した。

 

「門外…、もんがい…、モン…。ねえ、モンガっていうのはどう?」

 

 おしい。リカオンは思わず噴き出しそうになる。他3人もそれはちょっと、という顔をしていた。

 

「何か文句ある?」

 

「アリマセン。」

 

 クレマンティーヌは英雄級の威圧感で周りを納得させた。かくして、モンガ対策本部が本日より活動を始める。

 

 

 ーーー

 

 

「ヘックショイ!」

 

 アインズは呼吸器もないのに思いっきりくしゃみをした。

 

「どうかなさいましたか?」

 

 アルベドが報告を中断し、心配そうに覗き込んだ。

 

「いや、何でもない。」

 

 アインズは鷹揚に手を動かし、アルベドに続きを促す。

 

「では。以前アインズ様の命令で動向を探らせていた女に関してなのですが。」

 

(ああ、そんな命令もしてたっけ。)

 

「女を見張っていたら面白い物がかかりました。我々と同じくあの女を尾行していたらしい不審なグループがいたので捕らえ、そのうちの1人を拷問(任意聴取)したところ法国の関係者だということがわかりました。」

 

「ほう。」

 

「所属は風花聖典、任務内容は裏切り者の捜索だと。」

 

 アインズは少し考える素振りを見せてから口を開く。

 

「ということはあの2人組は法国の者で、何らかの理由により亡命しているということか。」

 

「断定は出来ませんが、可能性はあるかと思います。」

 

「ふむ。」

 

 やはり法国に関してはまだ情報収集が必要だ。あのレベルの人間をまだ擁していると仮定すると、法国の保有戦力は他の国家より頭抜けている。このままこの世界で傍観者を気取っていても、いつ足を掬われるか分からない。我々も地盤固めを早急に行うべきだ。

 

「アルベド、王国の情報はどれほど集まっている?」

 

「はい。現在セバス、ソリュシャンの他、影の悪魔(シャドウデーモン)を80体投入し、王族や貴族の情報を中心に政治及び経済の状況を集めております。進捗としては97%程、情報整理は主にデミウルゴスが、補佐としてユリ・アルファが就いております。」

 

「そろそろ魔導師アインズ・ウール・ゴウンとして王国に接触すべきかな。」

 

「タイミングとしては適切な御判断だと思います。接触相手は誰を選びますか?やはり戦士長経由でランポッサ三世でしょうか。それとも有力貴族であるレエブン侯、若しくはボウロロープ侯になさいますか。」

 

 アルベドの質問にアインズは暫し考える。

 

「第一王子バルブロに取り入る。」

 

「…恐れながら、理由を伺ってもよろしいでしょうか。」

 

「まず、今回の目的はこの世界で情報収集を簡易に行う為の一定の地位を築きつつ、無用な闘争に巻き込まれないために外敵の目を眩ます隠れ蓑を探すことだ。」

 

 アインズは地図を広げながら答える。そしてナザリックの場所を指差しながら言葉を続ける。

 

「完全に情報が揃うまで潜伏しておくのもいいかと思っていたが、法国が何やら活発に動いていることを考えるとじっと構えて迎撃一辺倒では遅きに失することもあるかもしれない。」

 

 机に据え付けられた万年筆で法国の実働部隊が確認された地点に丸を付けていく。

 

「法国は他国の領土でも御構い無しに活動をしている。これは現状の勢力図を一変させようと企んでいる証拠だ。これに我々も巻き込まれる可能性は高い。」

 

 アインズは地図上で法国から引っ張って来た矢印をナザリックに突き刺す。

 

「ただ別にこれだけでは何の痛痒も感じないのだが、評議国の存在が厄介だ。我々が普通に迎撃しようとするとこいつらに目を付けられてしまうだろう。奴らは部外者を毛嫌いしている様だしな。奴らとはまだ事を構えたくないので、あまり派手に動くことはできない。」

 

 地図上の評議国がギザギザで囲まれていく。

 

「我々が今自然に取り入れるのは戦士長のコネがある王国だけだ。しかし王国は王族派と反王族派で内部分裂している。ここに我々が入る事でパワーバランスを崩壊させ、天秤を動かす事は現状避けたい。他国に付け入る隙を与えない為だ。」

 

「なるほど、そこで対外的には第一王子として国王に親しく、支持基盤としては反王族派のバルブロだと。あくまで中立をアピールする訳ですね。しかもバルブロなら傀儡としてうってつけの人材。」

 

「…そういう事だ。」

 

 本当は聡明な者に取り入ると自分のボロが出そうなので、阿呆そうな人間が良かったという事は口が裂けても言えない。裂けるどころか皮膚さえ無いのだが。

 

「取り敢えず、地盤が固まるまでは王国には今の勢力図を維持してもらわなければならない。地盤が固まった後は王国を足がかりに勢力を拡大するか、若しくは見限って他の国に行くか考えよう。独立してもいいかな。」

 

「左様でございますね。」

 

 アインズは説明が上手くいった事に安堵する。次の報告に移ろうと机に広げられた資料をめくろうとする。

 

「ただ、1つ障害になりそうな懸念材料が。」

 

「…何だ。」

 

「第三王女のラナーでございます。」

 

「デミウルゴスの資料にも上がっているが、そんなに留意すべき人物なのか?」

 

「はい。思考能力が人間のそれとはまるで違います。精神の畸形、いや異形と呼んでも差し支えないですね。」

 

 アインズは悩んだ。ラナーに直接接触するのは不自然だし、何より計画が露見する可能性があるのでそもそも避けたい。しかし、放置するわけにはいかない。

 

 

「…考えておく。」

 

 アインズは問題を先延ばしにした。

 

 その後、アルベドの報告が終わり、アインズは王国参入計画に取り掛かった。戦士長に貰った招待状を確認し、王族、貴族への手紙を用意する。後はこれを手に王城に赴くだけだ。アインズは大口企業との契約を取り付けて来いと上司から言われた時の事を思い出していた。

 

 少し気分が重い。気分転換にモモンでもう一騒動起そうかな。適度に冒険者でも襲うか。アインズはナーベラルに<伝言(メッセージ)>で声を掛け、準備をし始めた。

 

 

ーーー

 

 

ここは法国の政治中枢のとある一室。荘厳な雰囲気が漂う部屋の中では神官服に身を包んだ男女が険しい表情で会話している。

 

「陽光聖典に続いてクレマンティーヌを追っていた風花聖典も消息不明になるとは。」

 

「犯人は同一人物だと思うか?」

 

「土の巫女姫のこともある。やはり漆黒聖典を最大限投入して早急に情報を得るべきでは。」

 

「破滅の竜王に関してはどうする?」

 

「一連の事もそれが原因かも知れない。とにかく情報が必要だ。」

 

会議が喧々諤々と行われる。

 

「…良いだろう、"漆黒聖典"を呼べ。指令を出す。」

 

 

 

この三日後、リカオン、モモン、漆黒聖典はとある森の一角で一堂に会す事になる。

 

 

 

 

 

 







誤字報告ありがとうございます。適用させていただきました。

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