東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 茨城 > 記事一覧 > 12月の記事一覧 > 記事

ここから本文

【茨城】

富岡-浪江で試運転 常磐線の不通区間 JR東の一部労組「乗客乗員の健康守れない」

JR双葉駅に到着した試運転の電車=福島県双葉町で

写真

 東京電力福島第一原発事故の影響で沿線一帯が帰還困難区域に指定され、不通となっているJR常磐線富岡(福島県富岡町)-浪江(浪江町)間で十八日、運転再開に向けた試験運転が始まった。JR東日本は線路や駅、駅へのアクセス道路の避難指示解除を前提に、来年三月の再開を目指す。だが、JRの一部組合は「乗務員や乗客を被ばくから守ろうとしていない」と批判している。 (佐藤圭)

 常磐線は、日暮里(東京都)から岩沼(宮城県)に至る全長約三百四十四キロ。二〇一一年三月十一日の東日本大震災の揺れや津波で被害を受けた。富岡-浪江間が予定通り来年三月に復旧すれば、九年ぶりに全線開通する。

 試験運転は、線路や電力設備、信号・通信設備などの機能を確認する目的で十八~二十日の三日間実施され、普通電車を毎日二往復運行する。今後も、乗務員の訓練運転を続ける。

 茨城、福島両県を管轄する水戸支社は十八日、ほぼ全域が非常に線量の高い帰還困難区域になっている福島県双葉町の双葉駅構内での試験運転の様子を報道陣に公開した。午前十時二十分ごろ、青いラインが描かれた五両編成の電車が時速三十五キロの低速でホームに入ってきた。水戸支社によれば、この日の試験運転で異常はなかったという。

 富岡-浪江間二〇・八キロのうち、夜ノ森(富岡町)、大野(大熊町)、双葉の三駅を含む一三・六キロがいまだに帰還困難区域。二〇一六年三月から砂利を入れ替えるなどして除染した結果、毎時二〇マイクロシーベルトだった空間線量率は、避難指示の目安(三・八マイクロシーベルト)を下回る二・三マイクロシーベルトまで低下したという。

 ただ、除染の長期目標である毎時〇・二三マイクロシーベルト以下にはなっておらず、線路や駅の避難指示が解除されても、その周囲は帰還困難区域に指定され続ける可能性が高いだけに、乗務員や乗客の安全には懸念が残る。

 JRの社員で組織する「動労水戸」などは今年九月、全線再開の中止を求める集会とデモを水戸市内で開いた。石井真一委員長は今回の試験運転について「高線量地帯を走るのは危険だ。会社から社員の健康について明確な回答はなく、許せない」と激しく反発する。

 水戸支社の堀込順一設備部長は「法令に基づく健康管理をしており、これまで法令に抵触するほどの線量を受けた社員はいない」と話している。

写真
 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】

PR情報