警察庁は19日、高齢ドライバーの事故対策で、一定の違反や事故歴のある人を対象に免許更新時の「実車試験」を導入する方針を決めた。実際の運転技能を検査し、合格するまで更新を認めないようにする。自動ブレーキなどがついた安全運転サポート車(サポカー)に限定した免許も創設する。
来年の通常国会に改正道路交通法案を提出する方針で、実車試験と限定免許は早ければ2022年度にも導入される。
75歳以上の人には現在、免許更新時の認知機能検査を義務づけている。認知症と診断されれば免許取り消しの対象になるが、死亡事故を起こした人の半数は認知機能の低下の恐れがないと判定されていた。
18年の75歳以上の運転者による死亡事故は460件。全体の約15%で、統計が残る1990年以降で最多だった。事故の原因はブレーキとアクセルの踏み間違いなど運転操作ミスが多く、一部の国で導入されている実車試験を求める声が上がっていた。
実車試験の対象は、信号無視や大幅なスピード超過といった重大な違反歴のある人などを想定し、年齢は75歳以上か80歳以上のどちらかを検討している。実際に75歳以上の運転者のうち過去3年で何らかの違反があった人は約2割という。検査対象となる違反項目は今後、絞り込む。
試験は免許の更新期限内であれば何回でも受けられ、合格者はさらに現行の認知機能検査を受ける流れを見込んでいる。
一方、サポカー限定免許は任意制で、申請すればいつでも取得できるようにし、免許証の表面に限定の旨が表記される。免許の自主返納を考える高齢者のほか、運転に不安がある人にとって新たな選択肢となる。
75歳以上の免許保有者は現在、560万人を超えている。免許の自主返納は増えているが、公共交通機関の少ない地域では車が生活に欠かせないと考える人が多く、限定免許の創設はそうした事情に配慮した形だ。
サポカーは衝突被害を軽減する自動ブレーキや、ブレーキとアクセルを踏み間違えたときに急加速を抑える装置などを備える車で、各メーカーが開発に取り組む。限定免許の創設に伴い、今後、サポカーの統一基準づくりが必要になる。