[PR]

 トランプ米大統領による「ウクライナ疑惑」をめぐり、米下院(定数435)は18日、トランプ氏を「権力の乱用」と「議会の妨害」で弾劾(だんがい)訴追する決議を賛成多数で可決した。米大統領が弾劾訴追されるのは、21年ぶりで史上3例目。来年1月から上院(定数100)で弾劾裁判が行われる見通し。無罪になる公算が大きいが、トランプ氏が再選を狙う同年11月の大統領選への影響も注目される。

 権力の乱用は賛成230票、反対197票、議会の妨害は賛成229票、反対198票で可決された。どちらも、与党の共和党で賛成した議員はいなかった。

 決議によると、トランプ氏はウクライナのゼレンスキー大統領に対し、バイデン前副大統領らの「疑惑」に関する調査を要求。実現させるために、ホワイトハウスでの首脳会談の開催や、4億ドル近い軍事支援の凍結解除を取引材料にしたとされる。決議は、大統領選でライバルになる可能性があるバイデン氏に打撃を与えることが目的だったとして、「自分が政治的に有利になるよう、米国の安全保障や他の極めて重要な国益を毀損(きそん)し、大統領の権力を乱用した」と批判した。

 決議はまた、下院が9月に弾劾調査を開始した後、トランプ氏が行政機関や政府職員に対し、協力をしないよう指示したことも弾劾に相当すると指摘。「大統領の度重なる不正を隠蔽(いんぺい)し、下院に専属する弾劾の権限を奪う役割を果たした」と断じた。

 決議はトランプ氏について「職にとどまれば国の安全保障と憲法への脅威になる」と主張。今後も同じような行動を繰り返す可能性が高いとして、弾劾と罷免(ひめん)、米国の公職に就く権限の剝奪(はくだつ)を求めている。

 弾劾裁判で大統領が罷免されるためには、上院で出席議員の3分の2以上が「有罪」と判断する必要がある。現在、上院では共和党が53議席を占めているため、20人以上が造反しない限り、トランプ氏は罷免されない。(ワシントン=土佐茂生)