<以前からこのブログに寄稿をお願いしています櫻井元さんから大変重い内容の論考をいただきましたので連続掲載します。ご熟読をお願い致します。藤永茂>
勝手に入植した先で親切に助けてくれた先住民を裏切り、騙し、殺戮し、彼らの土地と資源を奪い、労働力が必要になると今度はアフリカの黒人を奴隷化し、酷使し、虐待し、その後も長きにわたって有色人種を差別し続け(藤永先生のブログ「アメリカでの黒人差別」2007年10月3日などを参照)、外に向かっては、残虐な独裁者を支援する一方、意にそわない民主的な動きには拷問・暗殺・クーデター・戦争挑発・軍事侵攻などのあらゆる汚い手段で不当な介入を続ける(中央情報局CIAや全米民主主義基金NEDによる策動、アメリカ陸軍米州学校SOAによる悪行、「死の部隊」death squadsによる非道など)―。そんな米国の真の歴史を、藤永先生はこれまでご著書やブログを通して本当に長い間、地道にかつ丁寧に解説してこられた(ご著書『アメリカ・インディアン悲史』から、最近のブログ記事「米国によるボリビアのクーデター」に至るまで)。そして、そんな米国が、他国の人権や民主主義の擁護を声高に叫ぶ時の「欺瞞」と「危険」とに真摯に警鐘を鳴らしてこられた。
藤永先生は以前、ブログの中で、ベネズエラのウゴ・チャベス大統領を汚い手段でつぶしにかかった米国を批判され、ジャーナリストJohn Pilger氏による次のドキュメンタリー作品をご紹介くださった。米国への「幻想」があまりに強いこの日本において、対米追従、日米の軍事一体化、平和憲法の破壊、米国の戦争への本格的な参戦へと道を誤らぬよう、米国という国の「実像」を知るうえでも、このJohn Pilger氏の作品はたいへん貴重なものだと思う。
The War On Democracy
もっとも残酷残忍な国は?
https://blog.goo.ne.jp/goo1818sigeru/e/3c0b797a4727fc9dc5279fd9a8cf04b5
ウゴ・チャベスが亡くなった
https://blog.goo.ne.jp/goo1818sigeru/e/912063c9c649a3abb3ab3ff42f0193f6
藤永先生は、シリアで起きたことは「内戦」ではなく「侵略」であり、米国をはじめシリアを敵視する国々が「アラブの春」に乗じて画策した国際法違反の侵略であると強調されてきた。米国がシリアに対して長年にわたり執拗に干渉を続けてきたことは、もはや否定できない事実だろう。
シリア戦争は外国の侵略戦争である。内戦ではない。
https://blog.goo.ne.jp/goo1818sigeru/e/c83413d30f664684987fd887a5e7bea9
CIA activities in Syria
https://en.wikipedia.org/wiki/CIA_activities_in_Syria
Timber Sycamore
https://en.wikipedia.org/wiki/Timber_Sycamore
シリアで起きたことは実に汚らわしい侵略であるが、侵略者のウソにまみれたという意味でも汚らわしいものであった。そもそも「侵略」を「内戦」とすりかえるのもウソなら、侵略する側が侵略される側をおとしめるために拡散した数々の話もウソだった。例えば、「ツイッターの少女Bana al-Abed」もウソ、「救急車の少年Omran Daqneesh」もウソ、「アレッポ最後の病院Al Quds hospital」もウソ、「人間屠殺場Human slaughterhouse(拷問監獄)」もウソ、「シーザーの写真Caesar photographs(拷問死写真)」もウソ、そして「化学兵器の使用」もウソだった。
これらのウソには、マスコミ、有識者をはじめ、国境なき医師団、アムネスティ・インターナショナル、ヒューマン・ライツ・ウォッチなどの国際NGO、そしてOPCWといった国際機関までが加担した。例えば、以下を参照。
Exploitation of Bana al-Abed: Parents use child to whitewash terrorists in Aleppo
https://www.rt.com/op-ed/397339-bana-abed-syria-aleppo-twitter/
MintPress Meets The Father Of Iconic Aleppo Boy, Who Says Media Lied About His Son
https://www.mintpressnews.com/mintpress-meets-father-iconic-aleppo-boy-says-media-lied-son/228722/
Syria War Diary: What Life Is Like Under ‘Moderate Rebel’ Rule
https://ingaza.wordpress.com/2017/09/03/syria-war-diary-what-life-is-like-under-moderate-rebel-rule/
About Bias and Propaganda on Syria
Open Letter to MSF/Doctors without Borders
https://dissidentvoice.org/2016/05/about-bias-and-propaganda-on-syria/
Amnesty International’s Kangaroo Report on Syria
https://dissidentvoice.org/2017/02/amnesty-internationals-kangaroo-report-on-syria/
The Caesar Photo Fraud that Undermined Syrian Negotiations
https://dissidentvoice.org/2016/03/the-caesar-photo-fraud-that-undermined-syrian-negotiations/
さて、どの世界にも不正に対して声をあげる勇敢な内部告発者がおられるが、化学兵器禁止機関(OPCW)の中にも、そうした人たちが現れた。詳しくは以下の記事を参照。
OPCW Whistleblowers: Management Manipulated Reports - Douma 'Chemical Weapon Attack' Was Staged
The OPCW and Douma: Chemical Weapons Watchdog Accused of Evidence-Tampering by Its Own Inspectors
OPCWの不正とは、シリアの化学兵器使用疑惑について現地調査をした専門家たちの声を無視し、米国の圧力のもと調査結果を捻じ曲げ、それとは真逆の報告書を公表していたというものだった。
OPCWの現地調査の対象となったのは、2018年4月7日、シリアの首都ダマスカス近郊のドゥーマでの化学兵器使用疑惑。米・英・仏の三国がアサド政権の犯行だと主張し、4月14日という早い段階で、公正な調査も国連決議もないなか、シリアに向けてミサイル攻撃を強行、大きなニュースとなったあの事件だ。
OPCWが公表した報告書が現地調査の結果を無視していたことは、2019年5月、「技術的アセスメント」という内部文書がリークされたことでまず明らかになった。文書の作成者は南アフリカの弾道学の専門家Ian Henderson氏(文書のリークは氏自身ではなく他の内部告発者によるものらしい)。反政府側はシリンダーがヘリから投下されたと主張したが、現地調査の結果、シリンダーと建物の傷の状態からしてその主張には矛盾があり、人の手で置かれた可能性が高い(事件捏造の可能性)という結論になり、リークされた文書にはその内容が記されていた。調査チームの8人のうち1人を除く多数がこの見解だったという。しかし、OPCWの上層部はこの結論を無視し、外部の専門家を使い、この見立てとは真逆の最終報告書を公表した。
そして今回、現地調査チームから別の内部告発者が現れた。身の安全を考慮し、先の記事ではAlexという仮名になっている。Alexは、現地のサンプル採取や中間報告書の草稿(これも上層部によって無視された)を担当した。彼は、先のIan Henderson氏と共に、まずはOPCW内部での自浄をと監察部局に問題点を伝え内部調査を求めたが、拒否されてしまった。そして、他のあらゆる方法で問題提起を試みたが時間かせぎの対応をされ、9か月近くにわたって上層部に訴えたものの空しい結果に終わり、もはや組織の外に訴えるほかないと判断するに至ったという。
ブリュッセルで開かれた内部告発者支援団体主催の会合でこの人物と接触したというジャーナリストJonathan Steele氏(英国ガーディアン紙外報部長を歴任)の記事から、その内部告発の内容を見ていきたい。