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2020年、いよいよアベノミクスの「最終結論」が明らかになる…!

「デフレ脱却」できなければ…

世界経済は「停滞局面」にある

これまで当コラムでは、個別の話題にフォーカスしてコメントをしてきたが、全体感を示す「ビッグピクチャー」を明確に示したことがなかったので、今回は、年末のこの場を借りて提示してみたい(この手の「ビッグピクチャー」についての質問を受けることが多くなったこともあるので)。

 

結論を先にいえば、これまでのアベノミクスについては、日本経済の流れをデフレスパイラルからまだ十分ではないながらもデフレ脱却の方向性へ変えたという点で評価している。ただし、まだ点数をつけて総括をする段階ではなく、最終的なアベノミクスの評価は来年の動向如何で決まると考える。

そこで、まず、現在の世界経済に対する見方について言及したい。

IMFが発表している世界の実質GDP成長率をみると、2018年1-3月期の前年比+4.2%をピークに減速し、直近時点で3.1%まで減速している(2019年暦年の見通しは同+3.0%)。

この成長率を過去と比較すると、1990年代序盤、2000年序盤とほぼ同じである。これらの時期はいずれも大きなバブル崩壊(日米欧での不動産バブル崩壊、及びITバブル)後の調整局面に当たる。今回は2008年のリーマンショック後とはいえ、リーマンショックからはすでに10年の月日が経過している。

したがって、過去と同じようなバブル崩壊後の調整局面かどうかは微妙だが、いずれにせよ、「停滞局面」にあるといってよいだろう。そして、世界の貿易数量の減速もこのIMFの世界実質GDP成長率の動きと整合的である。

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米英の景気は堅調に推移する

主要国をみると、米国は実質成長率で2%程度の「底堅さ」をしぶとく維持している。このところの住宅投資の回復や自動車販売台数、及び新規ローンの契約額の底打ちを考えると、今後も底堅く推移するのではなかろうか。

一方、中国だが、先日の米中貿易交渉の一応の決着で一息ついた格好だ。しかし、中国は日本でいえば、1980年代で経験したような安定成長への移行期であり、成長率の劇的な上昇は考えにくく、減速は避けられないと考える。来年は5%後半程度の成長へ減速するだろう。また、中国当局が「痛み」を覚悟して将来のために構造改革に優先的に取り組むのであれば、さらに成長率が減速するかもしれない。

 

筆者が最も厳しいと考えるのが欧州である。特にユーロ圏を主導するドイツの経済悪化が著しい。そのドイツだが、特に設備投資の悪化が著しい。これは、欧州における厳しすぎる自動車排ガス規制の影響で自動車の販売台数が大きく落ち込んだことが影響しているようにみえる。

ドイツの設備投資の悪化は、これまで好調であった東欧諸国の景気にも悪影響を及ぼしつつある。ドイツはEV(電気自動車)への転換を図ろうと必至だが、元々、エレクトロニクス産業に競争優位性を持たないドイツが短期間でEV分野で競争力を獲得するとは考えにくい(これはフランスやイタリア等の他のユーロ圏の自動車産業も同様であると考える)。

以上より、ユーロ圏は一種の構造調整期に入った可能性も否定できないのではなかろうか。ユーロ圏諸国の景気停滞は継続を余儀なくされると考える。