okadato の雑記帳

スタートアップでSREとしてはたらくokadatoの雑記です。

SIerからWeb系への転職と、赤の女王仮説

この記事は SIer脱出を語る アドベントカレンダー 2019 19日目の記事です。
とある独立系 SIer からWeb系スタートアップ企業に転職して約一年、この一年を振り返って思うことを徒然草したいと思います。






前置き

本題に入る前に。SIer から Web 系へ」 だと主語があまりにも大きすぎて不適切な気がするので、自分が語らんとする境遇にマッチするよう言い換えたいと思います。


以下に述べるのは 「創業約40年の独立系中小SIer から B2B SaaS のスタートアップ」へ転職したぼく個人の考え です。
言うまでもないことですが、所属する組織や所属していた組織の公式見解は1ミクロンたりとも含みません。
また「脱出」というと「悪し」から「良し」への移行というニュアンスが含まれる気がしますが、良し悪しの話でもありません。
ぼくは前職の人々と今でもよく飲みに行ったり遊んだりしていますし、いまでも愛社精神に満ち満ちています。ほんとだよ。
(ちなみに昨日書いた HAPPY SEEDING はそんな前職の同期のために作ったサービスでした!種村くんおめでとう!!)



さて本題です。

いきなりですが、赤の女王仮説という進化論の学説をご存知でしょうか?


上記のページから引用です。


「同じ場所にとどまるためには、絶えず全力で走っていなければならない」という言葉にちなむもので、進化生物学者リー・ヴァン・ヴァーレンによる造語。現状を維持するためには、環境の変化に対応して進化しなければならないこと、例えば、食うもの(捕食者)は、もし食われるもの(被食者)がより素早く逃げる能力を獲得すれば、今まで通りに餌を取るためには、より速く走れるように進化しなければならないといったことを指す。


転職をしてから一年と少し。ぼくが抱いている感想を端的に表現しているのがこの「赤の女王仮説」です。


引用した文脈のなかで登場する 環境 はエンジニアとしての市場を指し、同じ場所にとどまる は自分が市場のなかで存在できるだけの価値を持ちつづけることを指します。
エンジニアという世界観のなかで引用するには多少こじつけ感があるかもしれませんが、お付き合いいただけると幸いです。



前職、それはガラパゴス

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前職の SIer はよくもわるくも昔ながらの中小企業という感じで、日常業務の中でも以下のような風習がありました。


  • 添付ファイルは暗号化 ZIP 圧縮し、パスワードを別便にて送付
  • インターネットに出る際には必ず Proxy を経由(外部に出るためには専用のスイッチがある席まで物理的に移動していました…)
  • SaaSパブリッククラウドの使用は基本的にNG
  • 開発スタイルは典型的なウォーターフォールで、当初の納期内にプロジェクトが終わることは稀


多少の違和感を抱きつつも新卒で入った会社だったこともあり、社会とはこういうものか〜程度の印象しか持っていませんでした。


また新入社員が一律で受講する研修の内容はいま振り返るとだいぶコアな内容で、



ってな感じでした。毎年研修中につらくて泣き出す子がいたり、課題の成果発表の前日には徹夜してくぁwせdrftgyっyふじこっlp;
※ 会社側から強いられているわけではなく、なんとか完成させたいから徹夜で…!という文化祭前日のようなノリでした。実際に研修中は(基本的には)めっちゃくちゃ楽しかったし、いま振り返ってもかなり学びが多かったです!



閑話休題

上述のように、低レイヤな技術の習得からエンジニアのキャリアを歩み出せたことは非常に大きなメリットでした。


そのいっぽうで、業務でのクラウド利用に対するNGや、受託メインであるがゆえのウォーターフォールの開発スタイル(と、毎年一案件は発生する超大炎上)に対する違和感はいつまでもいつまでもついて回っていました。


毎朝チェックしている Qiita や はてブ、TechCrunch で出てくるような話題や、たまに参加するインフラ技術勉強会みたいなもので例えば Docker について知識を得ても、それを業務に活かせることはほぼない。
ぼくの知る「インフラ」はサーバールームやデータセンターの中に格納されているブレードサーバや、せいぜいプライベートクラウドとしての vSphere 程度であり、AWSGCP?なにそれおいしいの?状態がずーーーっと続いていて、コンプレックスだったのでした。


主なターゲットとなっているお客さんに保守的な大企業や超大手の国内 SIer が多かったので致し方無い部分はあれども、自分が業務のなかで使用している技術と、いわゆるモダンなエンジニアリングの間には大きな乖離があるよなぁというのを常々抱いてはいました。葛藤である。



そして脱出へ

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そんな違和感が鬱積し、転職を考え始めたのが去年の5月頃のこと。
漠然とした違和感の鬱積 が原因であったため、上司や同僚からの「なんで辞めるの?」という問いについて、最後まで明確な答えを提示することができませんでした。。。


1年が経ったいま振り返ってあえて言語化をすると、「この環境でも努力をしなければ評価は得られないが、この環境で評価を得られても外では通用しない」という 危機感の寄せどころのなさ が原因だったのかと思います。
いま振り返るに、そのときは「環境を変え、スタートアップに身を置けば何かが変わるはず」という幽かにみえる青い鳥を求めての意思決定だったのでしょう。


そして「何かが変わるはず」は結果的に正解でした。それを端的に表しているのが冒頭で紹介した 赤の女王仮説 なのです。
いま自分は 全力で走らなければついていけない という危機意識を良い意味で維持し続けています。それは超優秀な同僚や上司に恵まれているからという理由ももちろんあります。
そのいっぽうで、Web系スタートアップという業界自体の持つ、新しい技術を採用し、それで成果をあげている ことを発信しつづけなければ、(エンジニア部門に限定した話ですが)競争力の源泉である優秀な仲間を得られないという問題もあります(人事の てぃーびーさん と仲良くしていることもあり、割とひしひしと感じています )


自分が全力で走り続けることで、自分だけでなく所属する会社が市場から淘汰されることを避けられる。そんな意識を自分事として持てるようになったのです。これは大きい。



構造的なお話

少し抽象度を上げます。自分の中でも整理しきれていない箇所もあり、論旨がブレることをお許しください(アドカレラッシュで手も頭も回っていない)


もともとぼくは(自分で言うのはおこがましいですが)前職では過剰なほどに高く評価していただいていました。し、職場のなかで同じ場所にとどまる ための自己研鑽は欠かさずに行っていたかと思います。
休日に泣きながら RFC 片手に とあるプロトコルの処理用ライブラリを実装したり、何を学べばいいかわからないなりに情処の試験をいくつか受験してみたり。
ただそれはあくまでも 職場のなかで 同じ場所にとどまるための努力でした。走り続けなければ生存できないという健全な危機意識は抱きつつも、小さな生態系の枠組みのなかで生き抜くための努力に過ぎなかったのです。


その小さな生態系を飛び出し、より大きな世界で闘っていくために、ぼくは SIer脱出 という意思決定をしました。


くどいようですがそれは前職の職場環境に問題があったわけではなく、自分の抱いている課題感とのアンマッチに尽きると思っています。
実際に前職で学んだ低レイヤに関する知見や、業務に役立てるために受けた各種資格試験で得た体系的な学びは現職でもかなり活きています。そのうえで、それらをベースに最新技術へのキャッチアップを常に欠かさずに続けていかないと生きていけないという意識こそが 自分の求めていたものであり、淘汰されないために走り続けるモチベーションの源泉にもなっている のです。



おわりに

というわけで結論として、SIer からWeb系スタートアップに転職した身として振り返るに、どちらが良くてどちらが悪いという話は一切ありません。
(今回は趣旨から外れるので挙げていませんが、いま所属している組織に対して抱く課題感も少なからずあります)


エンジニアとして生きていく以上、どんな環境であれ自己研鑽を続けなくては淘汰されてしまう事実に変わりはなく、「淘汰される」環境の広さの問題なのだと解釈しています。
前職にいたころは職場で淘汰されることで市場における自分の居場所さえ失うやもという危機意識がありましたが、現職で淘汰されたとしても、わりとどこでもやっていけるだろうという意識を持つことができています(それが事実かはさておいて…)


また前職で得た大きな学びのひとつに、その場その場で全力で悩み、もがくことで成長できるというものが挙げられます。
いまでも苦しい場面は多々(多々どころかぶっちゃけ毎日苦しいですよ。ギブミー自己肯定感〜)ありますが、悩みながら少しずつ前進していくことを愚直に続けていく所存です。
みなさんもまずは置かれた状況のなかで最善を尽くし、自分が井の中の蛙だなと思ったタイミングでより大きな生態系のなかに 飛び出していく(= 脱出) 努力を繰り返していきましょう。

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脱出という選択を取り "現状を維持するためには、環境の変化に対応して進化しなければならない" 状況下に自分を置くことで絶えず進化していこうという、自分の経験談赤の女王仮説を絡めたお話でした。
かなりの駄文乱文となってしまいましたが、最後までお付き合いいただきありがとうございました。