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【社会】

「見える光景、前と違う」 伊藤詩織さん民事勝訴 続く中傷「被害者の声届けたい」

性暴力被害を巡る訴訟の判決後、東京地裁前で「勝訴」と書かれた紙を掲げるジャーナリストの伊藤詩織さん=18日午前

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 性暴力被害を訴えた民事訴訟で勝訴したジャーナリストの伊藤詩織さん(30)は十八日、支援者らに「刑事事件として明らかにできなかったことを、この民事訴訟で公にできた」と報告した。伊藤さんが声を上げたことは被害を訴える「#MeToo(ミートゥー)」が日本で高まるきっかけに。その行動を「公益」のためと評価した判決に、支援者からは「多くの被害者に勇気を与えた」との声が上がった。 (望月衣塑子、柏崎智子)

 「よい結果をお届けできてよかった。見ている光景が前と全く違う」

 判決を受け、東京地裁前に集まった支援者らを前に、伊藤さんは涙声で喜びを語った。

 二年半前、顔を出して会見をした際は、インターネット上に誹謗(ひぼう)中傷があふれた。今も中傷は続く。「日本は被害者が置かれた社会的、法的環境が本当に遅れている」と訴えた。

 伊藤さんは午後の会見で「誰もが被害者になるリスクがある。声を上げられない人もいる。傍観者にならないことが大事。これからも被害者の声を届けていきたい」と話し、同じような被害者に向け「自らの真実を信じてほしい。アクションはいつでも起こせる。まずは生き延びて」と呼び掛けた。控訴の意向を示した山口敬之氏(53)に対して「自分に向き合っていただきたい」とも訴え掛けた。

 被害届を出したにもかかわらず、逮捕状の執行は見送られ、山口氏はその後不起訴処分に。その一カ月前の二〇一六年六月には安倍晋三首相について書いた著書「総理」を幻冬舎から出版した。

 「逮捕されていたらこの裁判をやる必要はなかった。なぜ逮捕しなかったか。解明しなければ、同じことがトップの一言で起きる。メディアの皆さんに追及してほしい」

 判決を傍聴した伊藤さんの母親(57)は「昔から正義感の強い子で、被害を隠しながら生きていくことはできなかったのだと思う。娘を誇らしく思う」。父親(60)は「週刊誌に話すのも記者会見にも反対だった。バッシングにも傷ついていたが、皆さんに支えていただき感謝です」と話した。

◆「納得できない」元記者が控訴へ

 性暴力を受けたとしてジャーナリストの伊藤詩織さんに訴えられ、敗訴した元TBS記者の山口敬之氏は十八日、東京都千代田区内で記者会見し、「納得できない」と判決を批判。控訴することを明らかにした。

 会見で山口氏は「私は法に触れる行為を一切していない」と強調。判決について「客観的証左に基づいて伊藤さんの主張の矛盾点を複数主張したが、検証されず無視されている。高裁で強く訴えていく」と語った。

 また、就職を頼む立場だった伊藤さんに性行為をしたことが適切だったかを問われると「意に反した性行為は一切していない。犯罪行為はない」とした。

 

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