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【社説】

日本郵政不正 統治の大改革が必要だ

 日本郵政グループがかんぽ生命保険の不正販売について社内調査を公表した。予想通り不正の規模は大幅に拡大した。統治機能低下は著しく日本郵政は組織のあり方を根幹から見直す必要がある。

 調査によると、過去五年間で法令や社内規定に違反する疑いのある契約数は一万二千件を超え、九月末の中間報告時点から倍増した。金融庁は日本郵政と傘下のかんぽ生命、日本郵便に行政処分を科す方針だが、長期間の業務停止など非常に厳しい措置が必要だろう。

 かんぽをめぐっては保険料二重払いや無保険状態の契約などが次々に発覚。今回の調査では、商品の虚偽説明など法令違反の疑いが濃い悪質な事例もあった。

 不正の温床になったのは職員に対する過剰なノルマだ。ただそのノルマの背景に、日本郵政全体が持ついびつな企業構造があるのは間違いない。

 日本郵政は二〇〇七年に民営化した。だが現段階で国が57%の株式を保有している。このため民業圧迫を避けるため商品の販売上さまざまな規制がある。

 一方、民営化法の規定で全国一律サービスを続ける義務もあった。採算に関わらず多くの郵便局を維持する必要があり、その赤字を保険販売で穴埋めせざるを得なかった。その結果、現場職員は厳しいノルマを課せられた上、競争力アップが見込めない保険商品を売らされていた。

 日本郵政はスタート直後から相反した目的を掲げて営業を続け、そのしわ寄せをすべて現場がかぶっていた形だ。さらに経営陣はその矛盾の修正を怠り、現場での不正横行を長年放置した。この点で歴代を含む経営者たちの責任は免れないはずだ。経営体制の全面刷新を早急に求めたい。

 同時に民営化の制度設計を行った国にも大きな責任があることは言うまでもない。日本郵政は依然、国が株を持ついわば中途半端な民間企業だ。その組織のありかた自体が不正の出発点となったことは否定できない。

 民間活力による利便性の向上と、地域格差のないきめ細かなサービスの両立を目指した郵政民営化をこのままのやり方で進めていいのか検証すべき時期だろう。

 かんぽ不正の被害者は顧客であり七割以上が六十歳以上の高齢層だ。顧客に寄り添ったサービスと、そのための職員育成とは何か。日本郵政には企業統治の原点まで見つめ直す変革を求めたい。

 

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