性暴力被害、伊藤詩織さんが勝訴 元記者に賠償命令

社会・くらし
2019/12/18 10:59 (2019/12/18 13:15更新)

性暴力被害を巡る訴訟の判決後、東京地裁前で「勝訴」と書かれた紙を掲げるジャーナリストの伊藤詩織さん(18日午前)=共同

性暴力被害を巡る訴訟の判決後、東京地裁前で「勝訴」と書かれた紙を掲げるジャーナリストの伊藤詩織さん(18日午前)=共同

ジャーナリストの伊藤詩織さん(30)が、元TBS記者の山口敬之氏(53)から性暴力を受けたとして、1100万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は18日、「酩酊(めいてい)状態で意識がない伊藤さんに合意がないまま性行為に及んだ」と認定し、山口氏に330万円の支払いを命じた。

鈴木昭洋裁判長は判決で「伊藤さんには被害を虚偽申告する動機がない」とする一方、山口氏の説明は重要な部分で不合理に変わっており、信用性に重大な疑念があると述べた。刑事手続きでは山口氏は嫌疑不十分で不起訴となっており、結論が分かれた。

山口氏は、伊藤さんが著書などで被害を公表したことで名誉を傷つけられたとして、逆に1億3千万円の賠償を求めたが、判決は「公表内容は真実で、名誉毀損には当たらない」として棄却。公表は「性犯罪被害者を取り巻く状況の改善につながると考えた行為で、公益目的だ」と指摘した。

伊藤さんは判決後、地裁前での取材に「私たちが勝利しました」と落ち着いた声で述べた。促されて「勝訴」と書かれた紙を手に持つと、何度も「ありがとうございました」と繰り返し「この字を見たら実感してきました。勝ったんですね」と表情をほころばせた。

判決によると伊藤さんは2015年4月、就職先の紹介を受けるため山口氏と会食した際に意識を失った。伊藤さんはその後、ホテルで性的暴行を受けたと主張。山口氏は、合意に基づく性行為だったと反論していた。

TBSテレビは「元社員の在職中の事案であり、誠に遺憾だ」とコメントした。

伊藤さんは実名を公表して性暴力問題の深刻さを訴える著書を17年10月に出版するなどし、日本での「#MeToo」運動の広がりに影響を与えた。

山口氏は午後に記者会見する予定。

伊藤さんは準強姦容疑で警視庁に被害届を提出したが、東京地検は16年7月に嫌疑不十分で不起訴とした。東京第6検察審査会も17年9月、不起訴を覆すだけの理由がないとして、不起訴相当と議決した。〔共同〕

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