鬼の常識、人の非常識
よく見れば、そのYシャツは俺の物だった。
俺の指摘に対して鬼は、「何も羽織っていないと無作法だろう」と当たり前のように答えた。
「ちゃんと正装は下に着てるんだしよ」
そう言う鬼からは、確かに胡座の隙間から虎柄の下着が覗いている。
釘付けになる視線を無理やり逸らすと、横を向いたまま話を進める。
「どうせ勝手に拝借するなら、下も履けよ!」
俺だって男なんだ。
目の前にセクシーな女性がいれば見とれてしまうし、こんな恰好をされれば、その、ムラムラしてしまう。
俺の葛藤を知ってか知らずか、奴はYシャツの裾を摘まみながら口を開く。
「ちゃんと太ももまで覆ってるし、問題ないじゃないか。それにお前に迷惑が掛かる訳でもないだろ。」
大問題だ!
俺は心の中で叫ぶと、ちらりと彼女へと目をやった。
確かに太ももまで隠れている。しかし、肉質的な太ももは雄の本能を刺激して止まない。
目を上げてみれば胸が苦しいからだろう、第三ボタンまで開けられた胸元からは、豊満な双丘が零れ落ちそうになっている。
改めてその扇情的な姿を視界に収めた時、思わず喉がごくりとなった。