我が心、鬼知らず
「お前料理上手いな~」
そう言いながら俺の料理に舌鼓を打つこの女は鬼らしい。
咄嗟に助けを呼ぼうとした俺の口を異常な腕力で塞ぎ、頭の角を指差しながら説明をする謎の女。
最初は未だ夢の中なんだと自分に言い聞かせていたが、残念ながらこれは現実のことのようだ。
改めて寝ようとしたところを叩き起こされた俺は、侵入者の「腹が減った」という命令の元、我が家の備蓄を献上することにした。
目の前で胡座をかいて幸せそうに料理を平らげていく鬼。
聞きたいことは山ほどあるが、まずは一番の問題点から指摘しなければならないだろう。
「おい」
俺が言葉を掛けると奴は箸を止め、「なんだ?」と返しながらこちらに注目する。
食事の音が鳴り止み部屋の中に静寂が訪れる。
俺は意を決すると、その問題点を口にした。
「なんでYシャツ一枚なんだ」