side-A 珍しい依頼者
作業が一段落ついたのは正午を少しばかり過ぎた頃だった。
俺は身体をほぐしながら作業を眺め続けていた物好きの顔を見ようと顔を向け、思わず感嘆の唸りが口から漏れた。
絹糸のような銀髪は異国の血だろうか。
白くてすらりとした人間の上半身に、毛並みの整った栗色をした馬の下半身。
この国で長らく鍛冶屋をしているが、人馬族の客は初めてだった。
俺が見つめていると、彼女は眉間に皺を寄せて口を開いた。
「そんなに
俺は荒々しく吐き出されたその言葉を聞いて、慌てて謝罪の言葉を口にする。
「い、いや!すまねぇ!確かに人馬族ってのは珍しい客だが、それにしても…」
俺の視線の先に気が付いたのだろう。彼女は自分の髪の毛を摘んで、俺の言葉を遮るようにして皮肉気に口を開いた。
「
そんな彼女の説明を遮るようにして、俺は無意識にその言葉を口にしていた。
「ああ…そんな綺麗な髪は見たことがねえ。あんたは天女の娘なのかい。」
何か言葉を飲み込んで目を見開いたかと思うと、今度は白い肌を真っ赤に染めていく彼女。
そんな彼女を飽きることもせずに見つめていた俺だったが、漸く自分の失言に気が付くと慌てて言い訳を始める。
「いや、これはそう意味じゃなくてだな」
「ただ、素直な感想を」
じっと押し黙る彼女に気まずさを覚えた俺は、自分でも分からない言い訳を続けていく。
――カツン――
鋭く響いた足音に思わず言葉が止まり、工房内に久方振りの静寂が訪れた。
突き出された脚に視線を移し、再び彼女の顔へと視線を戻すと、彼女は鋭い眼差しでこちらを見据えていた。
彼女は一度だけ深呼吸をすると、ここに来た理由を口にした。
「私の蹄鉄を打ってほしい。」