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はったり和尚の「大人の」料理勝負

作者:吉邑 正

-我らが一行和尚、今回は、本気の様ですね―-。

-昔―-ある山奥の村に、持国寺じこくじという寺が在り、一行いっこうという風変わりな和尚が居った―-。



-ある時、村の料理自慢な者が勝負を挑んだが、とんちを使ってこれを、ことごとく敗った為に、和尚は料理名人との評判が立った―-。






-それを聴いた、領主(殿様)で美食好きな杉岡裕政すぎおかの ひろまさは「噂の料理名人一行を呼んでまいれ―-!」と家臣に命じた―-。




-和尚が城に召されると、殿様は「一行、よく参った―-余のかかえる料理番は、都で修行した料理名人じゃが、勝負してもらうぞ―-」と言いつけた~。一行和尚は頭を下げていたが、内心ちょっと、やばい雰囲気になってきたと焦っておった―-。





-城の庭には幕が張られ、殿様の料理番=上戸川味心かんどがわの みしんという男が鉢巻きに、たすき掛けという姿で仁王立ちしておった―-。




~一行和尚は覚悟をきめ「そろそろ本気を出さねばならない様じゃのぉ―-」と呟いた―-。




~一匹の、丸ごとの猪が食材として用意されており、味心は鮮やかな包丁さばきで肉を切り、一行和尚にも分けてくれた―-。


-太鼓が打ち鳴らされ、いよいよ料理勝負開始である―-




-味心は、大根や蕪を入れた牡丹鍋を作って、玉子と芹を使ったタレで食べさせる斬新な料理を出し、殿様は大満足であった―-。




~一方、一行和尚は、さいころ状に切った猪の肉を串焼きにしたが、殿様は「噂の料理名人の和尚の料理にしては、ちと拍子抜けじゃ―-」と言った―-。~一行和尚は「拙僧の料理は、前菜にございます―-主菜は、夜になるまでお待ち頂かねば、お出しする事は出来ませぬ―-」と応えた―-。



-殿様は「それでこそ、そのほうに料理を作らせた甲斐があるというものじゃ―-苦しゅうない、待ってつかわす―-」と承諾した―-。



~一行和尚は「それでは、お女中を一人、お貸し願います―-」と言って準備にとりかかった―-。










-さて、夜になって、城の天守閣の一室を借りた一行和尚は、そこで料理を振る舞うと言い、殿様は沢山の家臣や女中を伴ってやって来た―-。




-和尚は部屋の前で「これよりは、お女中達には、ご遠慮願いまする―-」と、女達を退けると「それでは、真言立川流密教料理の真髄を味わって頂きます―-」と言って、殿様達を部屋の中に入れた―-。



-部屋の四隅には蝋燭が灯っていたが、中は薄暗かった―-。-香が焚かれ、中央には、大きな布に墨で描かれた、六芒星の様な男女和合の図の曼荼羅が在り、その上の物は布で隠されていた―-。





~一行和尚はまず、殿様と家来達に酒を飲ませたが、それは鯉の血を混ぜた物であった―-。-そして次にキノコを少しかじらせたが、それは、紅天狗茸であった―-。




-殿様達は、怪しい雰囲気と、酒や催淫性の物を食べて、すっかり幻惑されていたが、和尚が中央に在る物を覆った布を剥がしたので、それを見て驚いた―-。




-曼荼羅の上には全裸の女が手に印を結んで横たわっており、彼女は気を失った様に眠っていた―-。-そしてその身体のあちこちには生の猪の肉が貼り付けてあった―-。




-和尚は「ナウマク サマン ダボダン ナーム―-」と呪文を唱え始めた―-。-殿様は、女の乳房に貼られた肉を一切れ食べたが―-その刹那、気を失って倒れた―-。




-家来達はあわてて、殿様を介抱するやら、一行和尚は謀反人として捕らえられて牢に入れられるやら、城の中は大騒ぎとなった―-。




-翌日、気がついた殿様は、一行和尚を牢から出し、自分の御前に座らせると「一行~あっぱれな料理であった―-。-あの様な料理は世に二つと在るまいぞ―-」と誉めた―-。



~一行和尚は「実はあの後、続きがございましたが、お召し上がりになりますか―-」と訊いた―-。-殿様は「それは遠慮しておく―-」と言って笑った―-。




~一行和尚は、殿様から沢山の褒美をもらって山寺に帰って行った―-。






-いかがだったでしょうか―-。



-この話は「はったり和尚の料理勝負」の続きですが、こちらが和尚の実力の様ですね―-。

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