営業マンの職を奪う「不気味な職業」の台頭に気づいていますか

ある資本家からの問いかけ③
三戸 政和 プロフィール

インサイドセールスとは

インサイドセールスとはその文字通り、社内(インサイド)で行う営業(セールス)であり、電話やネットを使って営業をする仕事だ。

この種の営業というと、テレアポが思い浮かぶだろう。大きく捉えれば、テレアポもインサイドセールスのひとつになるが、正確には少し異なる。「インサイドセールス」が新たな概念として登場してきたのは、インサイドセールスの手法が、これまでのものとは区別されるべきものだからだ。

その手法についてこれから詳しく述べていくが、簡単にいえば、インサイドセールスとは、テレアポも含む営業プロセスを細分化して、システマティックに営業を進めていく手法である。インサイドセールスに対応して、通常の「営業」は「フィールドセールス」と呼ぶ。

インサイドセールスはアメリカでは90年代頃から研究されていたようだ。アメリカは国土が広く、顧客の訪問に大きなコストが掛かることがその理由だ。そしてインサイドセールスは2008年のリーマンショックをきっかけに、企業が業務の効率化を強く求められる中で、広く普及し始める。

アメリカの経済誌フォーブスによると、2017年のアメリカの販売動向調査では、収益5億ドル以上の企業の売上のうち、インサイドセールスによるものは28.8%を占め、2018年には3割を超えると予想されている。調査対象の大企業は、インサイドセールスの割合を平均で40.3%まで増やしたいと答えており、インサイドセールスは増加傾向にある。

また国勢調査によると、アメリカにはBtoBの営業マンが570万人で、そのうちインサイドセールスの営業マンが43.5%を占めるという。その数も今後、フィールドセールスの営業マンに近付くと予想されている。

こうしたインサイドセールスに関するデータは、ヨーロッパでも同様の傾向を示している。欧米においてインサイドセールスは、フィールドセールスに肩を並べるまで存在感を高めているのだ。

一方、日本ではインサイドセールスへの認知度はまだ高くない。インサイドセールスに関わるサービスを提供する世界的な企業、セールスフォースによると、2019年の時点で、日本のビジネスマンのうち、7割がインサイドセールスという言葉自体を聞いたことがないという。インサイドセールスの導入率も10%程度とまだまだ低い。

しかし欧米における普及で見られるように、日本でもこの流れは大きく広がっていくだろう。私はその兆候が、国勢調査の「営業・販売事務従事者」の増加に現れていると考えている。そしてこの流れは、「営業マンの絶滅」が近づいていることへとつながっていくのだ。

 

なぜインサイドセールスが営業職を消すのか

なぜインサイドセールスが「営業」をなくすことにつながるのか。それはインサイドセールスとはなにかについて、詳しく見ていけばわかる。

この記事では「営業」を、「潜在顧客を発掘し、コミュニケーションによって顧客のニーズをヒアリングし、商品を提案し、価格などの条件を交渉して、販売をまとめること」と定義してきた。

旧来の営業はこのプロセスをすべて、ひとりの営業マンがやるというものだった。営業マンが自分で見込みのありそうな顧客に電話を掛け、粘ってアポを取り、何度も訪問して親密になり、商品やサービスの契約に結び付け、その後のフォローもする。根性が求められる部分も多い。

インサイドセールスはこの営業プロセスを細分化するところから始まる。実際に細分化するとこんなイメージだろうか。

①見込みのありそうな客を集め、リストを作る
②見込み客のリストを元に電話やメールなどでアプローチする
③商品やサービスの説明
④ニーズのヒアリング
⑤商品・サービスの提案と見積もり作成
⑥訪問のアポ取り
⑦販売条件の交渉
⑧契約のとりまとめ
⑨販売後のフォロー、アフターサービス

インサイドセールスが広がる欧米において、このような営業の細分化は進み、これらのプロセスは精緻に管理されている。それぞれのプロセスにおいて、その目的は何か、そのために何をするのかが整理され、担当する人員も決まっているということだ。

インサイドセールスの基本的なイメージは、これらの細分化したプロセスのうち、インサイドでできる部分についてはインサイドでやり、残りはフィールドセールスに引き継ぐというものだろう。つまり、機械化や外部化していくということだ。

しかし、冷静に考えてみてほしい。ネット全盛の現代において、この細分化された営業プロセスの中で、インサイドでできないものがあるのだろうか。

顧客を訪問したところで、見せるのはタブレットにまとめられた資料であり、顔を合わせて話したいならスカイプなどでも十分だろう。電車などを使って顧客を訪問して帰ってくると、時間もコストも掛かる。インサイドセールスでできるものは、なるべくインサイドで対応した方が効率的であることは間違いない。 

このため欧米では、営業プロセスのすべてをインサイドで完結させてしまうことが増えている。先ほどのフォーブスの記事にある「およそ3割の売上」というのはインサイドセールスで完結した売上だ。つまりインサイドセールスは、これまでフィールドセールスで行ってきたプロセスの一部だけでなく、すべてを代替しつつあるのだ。

そこに、急速なテクノロジーの発達が加わる。細分化された営業プロセスを見ればわかるだろうが、その中には、いまや人よりもテクノロジーに任せた方がいいものが少なくない。そこにテクノロジーがどんどんと入り込んでいるのだ。そのテクノロジーがいわゆるセールステックである。

つまり、いまの流れはこうだ。フィールドセールスがインサイドセールスに代替されつつあり、それがさらにセールステックへと置き換えられ始めている。然るに「営業はいらない」ことにつながるのだ。