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「"この奴隷、鬼だけど大丈夫か?"って」 | 「"この奴隷、鬼だけど大丈夫か?"って」 |
さもない様子でさらっと告げるベリスの言葉に動揺したのはナスタリアの方である。 | さもない様子でさらっと告げるベリスの言葉に動揺したのはナスタリアの方である。 |
「ちょっと、ベリス。あなた鬼の奴隷を買ってきたって言うの?いつも 後先考えない ばかみたいな行動ばかり取るけれどさすがにそれは考えなしが過ぎるでしょう…。まさか、鬼の特性も知らずに購入したなんて言わないわよね…?」 | 「ちょっと、ベリス。あなた鬼の奴隷を買ってきたって言うの?いつも 後先考えない ばかみたいな行動ばかり取るけれどさすがにそれは考えなしが過ぎるでしょう…。後から調べたってことは、鬼の特性も知らずに購入したなんて聞きたくないけど…」 |
「うん。安かったし、強いに越したことないし。まさか性欲が強すぎて扱いにくいだなんて思わないじゃない!」 | 「うん。安かったし、強いに越したことないし。まさか性欲が強すぎて扱いにくいだなんて思わないじゃない!」 |
「思う、思わないじゃなくて、一般常識なのよ。その知識は」 | 「思う、思わないじゃなくて、一般常識なのよ。その知識は」 |
いつも注意をしているが、ベリスは物事を深く考えずに直感で行動をすることが非常に多い。 | ことある事に本人にも注意をしているが、ベリスは物事を深く考えずに直感で行動をすることが非常に多い。 |
今回も、鬼の奴隷はどのような欠点があるのかを考えることなく、利点だけを検討材料に買ってしまった。 | 今回も、鬼の奴隷はどのような欠点があるのか、注意点などを確認することなく、利点だけを検討材料に購入を決めてしまった。 |
ベリスの言うとおり、鬼は人よりも力が強く、体は丈夫で戦闘に向いているため護衛にはもってこいだ。 | ベリスの言うとおり、鬼は人よりも力が強く、体は丈夫で素早く機敏である。そのため戦闘には非常に向いている。護衛にはもってこいだ。 |
だがその反面、恐ろしいほどに性欲も強く”そういうこと”のために性奴隷として鬼を購入する貴族もいるくらいだ。 | だがその反面、恐ろしいほどに性欲も強いらしい。”そういうこと”をするために性奴隷として鬼を購入する貴族もいるくらいだ。鬼は強いため捕虜になることは珍しく、奴隷の鬼など巡り会うことの方が難しいくらいである。それをいくらでもお金は用意すると奴隷商へ無理やり用意させる者もいるらしいのだ。 |
奴隷として購入したからには処理方法は問わないにしても、主人がその恐ろしいほどの性欲を処理する義務がある。 | そんな鬼を奴隷として購入したからには処理方法は問わないにしても、主人がその恐ろしいほどの性欲を処理する義務がある。放っておくことは法としても許されていない。過去に押さえきれない性欲のために手に負えない程凶暴化した鬼おり、世間的にもその対応が問題視されたためだ。 |
”そういうこと”にトラウマを抱えるベリスが扱い切れるわけがないのだ。 | ”そういうこと”にトラウマを抱えるベリスが扱い切れるわけがないのだ。 |
「奴隷として買いはしたけど、乱暴に扱ったり嫌がることを強制する予定もなかったし隷属の印だけは残すけど、普通の護衛と同じように扱う予定だったの。デイルは五体満足だったけど怪我が酷かったからます回復薬で手当てしてげた。そのあとは、奴隷商から食事も満足にさせてもらえてなさそうだったから一緒に食事したり、護衛してもらうから装備を揃えに行ったりちゃんと宿で部屋を取って休めるようにしたくらい。護衛してもらうから必要なことしただけで特別なことはしてないはずなんだけどなぁ~」 | 「怪我が酷かったから連れて帰ってからまず回復薬で手当てしてあげでそのあとは、一緒に食事したり、護衛してもらうから着の身着のままじゃ可哀想だから装備を買いに行ったり、家に連れて帰ったけど身の危険を感じたから、宿屋に部屋を取ったけど、護衛してもらうから最低限必要なことしただけで特別なことはしてないはずなんだけどなぁ~」 |
通常、護衛を雇った場合でも契約期間内の食事や宿を取るのは当然だし、けがをさせた際の治療も程度にはよるが雇い主が負担する場合が多い。装備を揃えるのは、まぁ護衛は装備を整えてくるので必要ないが、奴隷であった彼は装備は持っていないし、装備なしでは護衛もできないので必要なことなので、彼女の言う通り必要なことしかしていなかったのだろう。 | 通常、護衛を雇った場合でも契約期間内の食事や宿を取るのは当然で、けがをさせた際の治療も程度にはよるが雇い主が負担する場合が多い。装備を揃えるのは、まぁ護衛は装備を整えてくるので必要ないが、奴隷であった彼は装備は持っていないし、装備なしでは護衛もできないので必要なことなので、彼女の言う通り必要なことしかしていなかったのだろう。 |
「ちなみに、彼の怪我の程度はどのくらいだったの?」 | 「ちなみに、彼の怪我の程度はどのくらいだったの?」 |
「 夥しいおびただしい数の鞭の跡でしょー、刀傷っぽくて皮膚が裂けてところが複数個所、筋肉ごと抉れて化膿してるところと後は骨折箇所がいくつかあったくらいかな。 A級回復薬わたしじゃ治しきれなくてS級回復薬が必要なぐらいには酷い怪我だったよ。この人よく生きてるな、って思ったけど鬼が頑丈なら納得!」 | 「背中一面の鞭の後、貫通痕、創傷、骨が見えてる所もあったかな。内臓はわかんないけど、全く無事とはいえないんじゃないかな~。 A級回復薬わたしじゃ治しきれなくてS級回復薬が必要なぐらいには酷かったよ。この人よく生きてるなって思ったけど鬼が頑丈なら納得!」 |
薬師である私たちにとっては怪我の具合とどの程度まで回復薬の効果があるかは非常に重要な情報だ。特にナスタリアは数年前までは各回復薬の効果・効率があがるように研究をしていた過去もあり、実際に使用した経験談には非常に興味がある。ぜひこのまま面倒な話を聞くのではなく有意義な回復薬の効果について熱く話し合いをしたいところである。 | 薬師である私たちにとっては怪我の具合とどの程度まで回復薬の効果があるかは非常に重要な情報だ。特にナスタリアは数年前までは各回復薬の効果・効率があがるように研究をしていた過去もあり、実際に使用した経験談には非常に興味がある。ぜひこのまま面倒な話を聞くのではなく有意義な回復薬の効果について熱く話し合いをしたいところである。 |
それを許してくれる相手ではないのはわかってはいるが、面倒ごとから逃げたいのは私も一緒なのだ。現実逃避位は許してほしい。 | それを許してくれる相手ではないのはわかってはいるが、面倒ごとから逃げたいのは私も一緒なのだ。現実逃避位は許してほしい。 |
「じゃなくて!私は回復薬の効果の話をしにきたんじゃないの!」 | 「じゃなくて!私は回復薬の効果の話をしにきたんじゃないの!」 |
「まぁまぁ。ベリスとしては、必要最低限の対応をしていただけなのに気付けば知らないうちに溺愛されて執着されていて、昔のことを思い出して怖くなったからなんとかして彼を手放したいから私に助けて欲しい、と言うわけね」 | 「まぁまぁ。ベリスとしては、必要最低限の対応をしていただけなのに気付けば知らないうちに好かれていて、昔のことを思い出して怖くなってなんとかして彼を手放したいから私に助けて欲しい、と言うわけね」 |
「さすがナスタリア話が早い!」 | 「さすがナスタリア話が早い!」 |
「それはほめ言葉として受け取りたくはないけれど。ちなみに彼を購入したのはいつ頃だったのかしら?」 | 「それは褒め言葉として受け取りたくはないけれど。ちなみに彼を購入したのはいつ頃だったのかしら?」 |
「う〜ん。だいたい1ヶ月弱、ってところかなぁ」 | 「う〜ん。だいたい1ヶ月弱、ってところかなぁ」 |
・・ | |
一ヶ月弱であれなのだ。 | 一ヶ月弱であれ・・なのだ。 |
彼女以外は視界に入らない様子で彼女と自分以外はこの世にいてもいなくてもいい、そう本気で思っていそうな顔を彼はしていた。きっと邪魔するものは容赦なく消し去ることも厭わないだろう。それがたとえベリスが悲しむ結果となっても。きっと彼はベリスさえいればそれだけでいいと考えいる。 | 彼女以外は視界に入らない様子で彼女と自分以外はこの世にいてもいなくてもいい、そう本気で思っていそうな顔を彼はしていた。きっと邪魔するものは容赦なく消し去ることも厭わないだろう。それがたとえベリスが悲しむ結果となっても。きっと彼はベリスさえいればそれだけでいいと考えいる。 |
そうなるくらいに、彼はよっぽど優しさや人の暖かさに飢えていたのだろう。 | そうなるくらいに、彼はよっぽど優しさや人の暖かさに飢えていたのだろう。 |
仲間に裏切られ、奴隷に落とされた後も人と関わることは彼にとっては苦痛を伴うものでしかなかったはずだ。心も身体も、彼は人に傷つけられ痛めつけられている。他人は自分を傷つけるものだと認識しているかもしれない。 | 何年奴隷をしていたのかは知らないが、人と関わることは彼にとっては苦痛を伴うものでしかなかったはずだ。心も身体も、彼は人に傷つけられ痛めつけられている。他人は自分を傷つけるものだと認識しているかもしれない。 |
そんな中で自分を買った主人ベリスは痛めつけることをせず、彼を”奴隷鬼”ではなく”人”と同じように扱ってくれた。それだけでも彼にとってベリスは得難い人だと感じているはずだ。だから彼はベリスを手放したくないと執着している。話を聞くとこうなることは当然であったとナスタリアは考えた。 | そんな中で自分を買った主人ベリスは痛めつけることをせず、彼を”奴隷鬼”ではなく”人”と同じように扱ってくれた。それだけでも彼にとってベリスは得難い人だと感じているはずだ。だから彼はベリスを手放したくないと執着している。話を聞くとこうなることは当然であったとナスタリアは考えた。 |
だが、問題は彼がベリスに心を囚われるきっかけとなったベリスの行動である。 | だが、問題は彼がベリスに心を囚われるきっかけとなったベリスの行動である。 |
彼女は優しい。貴族だろうが、平民だろうが、奴隷だろうが分け隔てなく優しできる人だ。差別はしないし、他人を見下すようなこともしない。貴族には珍しいタイプだと思う。 | 彼女は優しい。貴族だろうが、平民だろうが、奴隷だろうが分け隔てなく優しく接することのできる人だ。差別はしないし、他人を見下すようなこともしない。貴族には珍しいタイプだと思う。 |
社交界で虐められている令嬢を庇い、貧困のため飢えた人には食事を与え、足腰をいためた老人の手を取り案内してあげる。できそうでなかなかできない人が多いのが現状だ。それでも彼女は目についた問題には手を差し伸べる。 | 社交界で虐められている令嬢を庇い、貧困のため飢えた人には私財をはたいて食事を与え、街中で困っていた足腰を傷めた老人の手を取り案内してあげる。できそうでなかなかできない人が多いのが現状だ。それでも彼女は目についた問題には手を差し伸べる。 |
だが、彼女の優しさは真綿でくるむ様な慈悲に満ちた優しさではない。 | だが、彼女の優しさは真綿でくるむ様な慈悲に満ちた優しさではない。 |
人に優しくすること自体は素晴らしいことだ。ナスタリアとて異論はない。きっかけや理由がどうあれ、親切にされて気分を害することははないし、どんな人にでも手を差し伸べられる彼女は聖女のようだと吹聴する人もいるくらいだ。 | 人に優しくすること自体は素晴らしいことだ。ナスタリアとて異論はない。きっかけや理由がどうあれ、親切にされて気分を害することははないし、どんな人にでも手を差し伸べられる彼女は聖女のようだと吹聴する人もいるくらいだ。 |
だが、ナスタリアから見たベリスは優しい人ではない。 | だが、ナスタリアから見たベリスは優しい人ではない。 |
なぜなら彼女の優しさは相手のことを考えてとる行動ではないからだ。 | なぜなら彼女の優しさは相手のことを考えてとる行動ではないからだ。 |
目に付いた困っている人を彼女の気分次第で気まぐれに手を差し伸べるだけのちょっとしたお遊びのようにしか見えない。 | 目に付いた困っている人を彼女の気分次第で気まぐれに手を差し伸べるだけのちょっとしたお遊びのようにしか見えない。 |
貧困で苦しむ人々は、一時的に施しを受けたところで、翌日以降にはまた貧困で苦しむことになる。彼女に抱いた希望を他の人に求めても、同じように手を差し伸べてくれる人がいるわけではない。 | 貧困で苦しむ人々は、一時的に施しを受けたところで、翌日以降にはまた食事に困り、貧困で苦しむことになる。彼女に抱いた希望を他の人に求めても、同じように手を差し伸べてくれる人がいるわけではなく、自分たちに冷たい世間にさらに絶望していく。 |
虐めから庇われた令嬢は次回以降の夜会では、お前のせいで恥をかかされたとさらに酷い目にあっているところを見かけたのは一度だけではない。 | 虐めから庇われた令嬢は次回以降の夜会では、お前のせいで恥をかかされたとさらに酷い目にあっているところを見かけたのは一度だけではない。 |
彼女はその場限りで手を差し伸べ、次回以降につながるような対処はいつもしないのだ。 | 彼女はその場限りで手を差し伸べ、次回以降につながるような対処はいつもしないのだ。 |
もっとも、ベリスも一度気にかけた人を覚えているわけではない。 | もっとも、ベリス自身も一度気にかけた相手を覚えているわけではない。 |
前回と同じような状況でもう一度顔を合わせることがあったとしても、ベリスは覚えていないため、視界に入り目に留まらなければ、気に掛けることはない。 | 前回と同じような状況でもう一度顔を合わせることがあったとしても、ベリスは覚えていないため、視界に入り目に留まらなければ、気に掛けることはない。 |
彼女を見かけたときから、前回受けた優しさを期待し、自分に助けを与えてくれると希望をもった人々からすると優しくしてくれた彼女に無視をされたように感じていることだろう。 | 彼女を見かけたときから、前回受けた真綿で包まれた優しさを期待し、自分に助けを与えてくれると希望をもった人々からすると優しくしてくれた彼女に突き放されたように感じたことだろう。 |
さらには、相手のことを覚えていないばかりか知らない人に急に馴れ馴れしくされて怖いと思うのか、冷たい目をして去って行くことまである。 | さらには、相手のことを覚えていないばかりか知らない人に急に馴れ馴れしくされて怖いと思うのか、冷たい目をして去って行くことまである。 |
その時の絶望したような表情をした彼らの気持ちを考えると、ナスタリアはベリスの優しさは凶器と紙一重なのだと考えているのだ。 | その時の瞳から光を失ったような絶望に満ちた表情をした彼らの、その気持ちを考えるとナスタリアはベリスの優しさは凶器と紙一重なのだと考えてしまう。 |
そして放っておけないナスタリアが彼らの環境を良くするために、領主へ話をつけて仕事を斡旋したり、令嬢のまわりの大人と話をつけて和解できるように働きかけたり、必要以上に奔走する羽目になる。 | そしてそんな人々を放っておけないナスタリアが彼らの環境を良くするために、領主へ話をつけて仕事を斡旋したり、令嬢の周囲の大人と話をつけて和解できるように働きかけたり、必要以上に奔走する羽目になる。 |
誰に頼まれたわけでもない。ナスタリアはどうしてもそんな彼らを無視することはできない性分なだけだ。絶望に色を失っていく濡れた瞳をそのままにすることはどうしても彼女にはできないことだった。 | 誰に頼まれたわけでもない。ナスタリアはどうしてもそんな彼らを無視することはできない性分なだけだ。絶望に色を失っていく濡れた瞳をそのままにすることはどうしても彼女にはできないことだった。 |
そんな彼女の優しさに心を奪われた哀れな鬼。 | そんなベリス優しさに心を奪われた哀れな鬼。 |
ベリスを見つめる彼の青みを帯びた漆黒の瞳を思い出し、なぜか胸の深いところがぎゅっと締め付けられる感覚にナスタリアは違和感を覚える。 | ベリスを見つめる彼の青みを帯びた漆黒の瞳を思い出し、なぜか胸の深いところがぎゅっと締め付けられる感覚にナスタリアは違和感を覚える。 |
なぜ、と考えようとしたところでベリスが再度話しはじめナスタリアの意識は思考の中から引き戻される。 | なぜ、と考えようとしたところでベリスが再度話しはじめナスタリアの意識は思考の中から引き戻される。 |
「ナスタリアは魔力が強いから隷属の印を書き換えることくらいできるでしょ?彼にかかっている隷属の印に組み込まれている内容はこの用紙の通りよ」 | 「ナスタリアは魔力が強いから隷属の印を書き換えることくらいできるでしょ?彼にかかっている隷属の印に組み込まれている内容はここに書いてる通り何だけど…」 |
「ぐらいって、ベリスは出来ないのに簡単に言わないで欲しいわ…」 | 「ぐらいって、ベリスは出来ないのに簡単に言わないで欲しいわ…」 |
そう言いながらベリスが差し出した奴隷商との契約用紙を受け取る。 | そう言いながらベリスが差し出した奴隷商との契約用紙を受け取る。 |
文字数: 3367 空白数: 9 空白込み文字数: 3376 改行数: 174 改行込み文字数: 3550 単語数: 56 |
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