ハンコ押印ロボットを眺める。1枚2分弱かけて丁寧に押印:2019国際ロボット展

丁寧なページめくりに強み。冊子の電子化もできます

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12月11日、「ロボットによる押印作業の自動化」という、最新テクノロジーと"古き良き"日本文化が融合されたようなサービスが発表されて話題となりました。18日にスタートした展示会「2019国際ロボット展」にて、ハンコ押印ロボの実物を見ながら、サービスの狙いを聞きました。

押印自動化サービスは、日立キャピタルのサービスとして2019年3月から提供予定。契約時に膨大な書類を押す必要がある金融機関や自治体をターゲットとして、ロボットをレンタルする月額制サービスになる見込みです。

押印ロボット

押印マシンはデンソーウェーブのアーム型ロボットCOBOTTAを2台搭載。カメラとスキャナー(PFUのScanSnap)活用して、書類めくりから電子化までの一連の作業をロボットが代行する仕組みを整えました。

ロボットによる押印作業は契約書1枚あたり1分〜2分程度かかるゆっくりとした動きですが、しっかりと印影を押して、押印後の書類をスキャンしています。ロボットの動作ではデンソーウェーブの先端技術が活用されており、押印時にハンコの全面にまんべんなく荷重をかける動きをする点や、紙を傷つけずに1枚ずつはがし取るために風を吹き付けて持ち上げている点など、細かな動きに工夫が施されています。

押印ロボット▲ハンコ押し職人のごとく、1枚1枚、丁寧に押印
押印ロボット▲もちろん、一回毎に朱肉でインクをつけています(乾燥しないのでしょうか)
押印ロボット▲紙を持ち上げた後にちょっと停止するのがページめくりのミソ。一緒に持ち上げてしまった紙を自重ではがせるそうです

紙に押印する位置は、紙のフォーマットに応じて指定することができ、たとえば複数のテンプレートがある場合でも、画像認識でどの書類かを判別して、指定した位置に印影を残すことができるとしています。社印や代表印など、複数の角印を扱うこともできます。

ただし、このロボットの本質的なところは「ハンコを押す」という作業ではなく、「どうしてもデジタル化できない書類のデジタル化」にあると言えます。スキャンした書類はRPA(ソフトウェアによる自動処理)のワークフローと連携して、ただフォルダに分類して保存するだけでなく、たとえば特定のメールアドレスに送信するなど、さまざまな活用が可能です。

展示会場の担当者は「たとえば電子承認機能と組み合わせて、出張中の部長が遠隔地から電子承認するとハンコが押されるシステムも作成可能」と話します。

さらに、このシステムでは書類をめくってスキャンする機能により、冊子を傷つけず電子化することもできます。米Googleが「図書館プロジェクト」の一環として図書館の蔵書を1ページずつスキャンして撮影する仕組みを導入していますが、それと似たような動作を導入できることになります。

もちろん、押印作業やスキャンは人力で行った方が安上がりで早く済む可能性が高い作業ですが、ロボットなら正確性という強みがあり、さらに24時間稼働させ続けることができます。会場の担当者は商用サービスとして投入される際には、「書類を入れておく箱」を用意して、深夜に作業し続けられるような仕組みを用意したいと説明しました。レンタル価格については現時点では明らかにされていませんが「人を1か月雇って作業してもらうよりも安い月額料金を目指したい」(会場担当者)としています。

押印ロボット
▲なお、国際ロボット展のデンソーブースではハンコロボ以外にもCOBOTTAのさまざまな活用例が展示されています。こちらは薬剤を調合・攪拌する研究向けの用途
押印ロボット
▲プリンターに紙を継ぎ足すロボットは、三菱UFJ銀行に導入されています

筆者としては電子化するならば電子決済も含めて導入した方がシンプルで安上がりになるのではないか、といいたいところですが、IT大臣がハンコ推進派の日本においては、さまざまな事情でハンコ文化を廃止できない企業や自治体も多く存在するはずです。そうした団体がデジタル化を進める上で、書類整理の効率化を含めた次点の選択肢として、電子化ソリューションと直結した押印ロボット化はアリな選択肢なのかもしれません。


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