日本では全く話題に上らなかったが、楽天モバイルのCTO(最高技術責任者)を務めるタレック・アミン氏が米通信業界向けの専門メディア「Fierce Wireless」で、2019年の無線技術における「最も強力(パワフル)な人物」に選ばれた。
2016年には米携帯通信3位であるTモバイルUS(T-Mobile US)のジョン・レジャーCEO(最高経営責任者)、2017年には英通信衛星ベンチャーであるワンウェブ(OneWeb)創業者のグレッグ・ワイラー会長、2018年には米携帯通信4位であるスプリント(Sprint)のマイケル・コンベスCEOがそれぞれ選出されており、非常に名誉なことである。
選出に当たっては、あらかじめ26人をノミネート。2019年は米連邦通信委員会(FCC)のアジット・パイ委員長をはじめ、米国の携帯通信大手やケーブルテレビ大手、スウェーデンのエリクソン(Ericsson)やフィンランドのノキア(Nokia)、米シスコシステムズ(Cisco Systems)、米クアルコム(Qualcomm)、米グーグル(Google)の幹部ら、そうそうたるメンバーがそろっていた。
この中から読者の投票で決めるわけだが、興味深いのは1回の投票で終わりではなく、「1対1」のトーナメント形式で絞り込んでいく選出方法だ。楽天モバイルのアミンCTOはシードなしだったにもかかわらず、4連勝で決勝に進出。その決勝では10万4148票を獲得し、相手に1万票以上の差をつけて勝ったので驚いた。
米国の「第4の事業者」が強い関心
楽天モバイルの注目度が高いのは、携帯インフラに「ネットワーク仮想化技術」の全面導入を決めたから。部分的な活用はこれまでも進んでいたが、基地局の制御装置からコアネットワークまで全面的に採用したケースは珍しい。楽天の三木谷浩史会長兼社長も「世界に先駆けた初の革命的なネットワーク。(従来の専用装置に比べ)コストが格段に安く柔軟性が圧倒的に高い」と、しきりにアピールしている。
とりわけ米国が楽天モバイルに注目する背景には、携帯電話事業に新規参入を計画する衛星放送大手ディッシュ・ネットワーク(Dish Network)の存在もある。TモバイルUSとスプリントの経営統合が実現すれば、米ベライゾン・コミュニケーションズ(Verizon Communications)と米AT&Tを交えた「三つどもえ」の構図になる。
ディッシュ・ネットワークはこれを機に「第4の事業者」として躍り出ようと名乗りを上げている。スプリントが保有する「Boost Mobile」と「Virgin Mobile」のプリペイド携帯事業を譲り受けたうえで、次世代通信規格5Gを含めた携帯インフラをこれから構築していく。そこで同社が指標としているのが、日本で似たような状況にある楽天モバイルとされる。
楽天モバイルは仮想化技術の導入に当たり、シスコや米インテル(Intel)、米アルティオスター・ネットワークス(Altiostar Networks)、米レッドハット(Red Hat)などと手を組んだ。中国ファーウェイ(華為技術)に対する包囲網が強まる中、多くの米国系ベンダーが名を連ねている点でも、ディッシュ・ネットワークは強い関心を持って楽天モバイルに注目しているもようだ。
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