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【私説・論説室から】

真実を救う国 葬る国

 トランプ米大統領が破り捨てる書類を拾い集め、復元するホワイトハウススタッフの苦労が紹介されていたが(六日付本紙「本音のコラム」)、ドイツでも地道な取り組みが続けられている。

 東西統一が目前に迫ると、旧東ドイツの秘密警察「シュタージ」は市民の監視などの記録を廃棄しようとした。手で破りシュレッダーで細断したが、焼却は間に合わず、約一万五千もの袋に詰めたままにした。

 ドイツ政府は公文書として保存することを決め、紙片の復元を進めている。最近では、「Eパズラー」というソフトで、紙の形状や文字を照合して手作業以上に効率を上げている。それでも気が遠くなるような作業だ。

 膨大なシュタージ文書の公開は、家族や友人までが密告者だった現実を知らしめる悲劇も招いた。しかし、一党独裁の恐ろしさを具体的に明らかにした意義は大きい。

 紙切れを拾い集めジグソーパズルを作る作業は見栄えはしないかもしれないが、不正をただし歴史に真実を残そうとする志は尊い。

 トランプ氏の書類復元を紹介したワシントン・ポスト紙は、対比する形で、安倍首相主催「桜を見る会」の招待者名簿廃棄を、あきれ顔で報じている。

 民主主義などの「価値観」を共有する国々の仲間だと胸を張れるのか。このまま、うやむやにしていい話ではない。 (熊倉逸男)

 

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