半径300メートルのIT:「パスワードレス認証」が進行中 FIDOで変わる、セキュリティの常識 (1/3)

IDとパスワードの組み合わせによるセキュリティに、多くの人が限界を感じています。そこで現在、数学的な仕組みを利用してパスワードレス化を実現する、新しいセキュリティアライアンス「FIDO」が広がりつつあります。

» 2019年12月17日 07時00分 公開
[宮田健ITmedia]

 皆さんは数学はお好きでしょうか。私は数学が得意だったわけではないですが、素数や円周率には神秘的なものを感じていました。実は、インターネットの安全を支えているのも、数学なのです。

素数を発見したのは、古代エジプトの数学者、ユークリッド。2300年後、ネットの世界の安全を守る技術になるとは想像していなかったでしょう(出典:大英博物館)

 「素因数分解」を覚えていますか? ある自然数を素数の積で変換する計算です。例えば「15」なら「3×5」。この例であれば簡単ですが、では「11088899」は? ――これを見ただけで素因数分解できる方はほとんどいないでしょう。正解は、「3329×3331」。

 しかし、これが「3329×3331は?」という問題であれば、計算は簡単です。つまり「3329×3331=11088899」という計算式には、3329と3331の積算は簡単なのに、11088899の素因数分解は難しいという非対称の関係があるのです。この性質は一方向性関数と呼ばれ、暗号にも活用されています。

閉める鍵と開ける鍵が別にある「公開鍵暗号方式」

 セキュリティ技術の代表「暗号化」においては、サーバ側と自分で共通の鍵を持つ「共通鍵暗号方式」がすぐに思い浮かぶと思います。共通鍵は玄関の鍵に例えられる通り、情報の発信者と受信者で同じ秘密を共有するもの。暗号化する鍵と復号する鍵が同じなので、鍵を複製すると誰でも解錠(復号)ができてしまいます。そうなった場合、鍵を交換するしかありません。

 そこで考えられたのが「公開鍵暗号方式」です。公開鍵暗号方式では、情報の送信者は暗号化するために「公開鍵」を使い、受信者は復号するために「秘密鍵」を使います。このとき、受信者の秘密鍵は、誰とも共有されていません。公開鍵から秘密鍵の情報を類推するのは非常に困難なので、情報の盗聴が不可能になります。

 公開鍵と秘密鍵は、冒頭で述べた一方向性関数の性質を利用して作られています。公開鍵からは秘密鍵を類推しにくいので、秘密鍵は秘密のままでセキュアに情報のやりとりができるのです。……ここまで、かなり大ざっぱに説明しました。詳しく知りたい方はまず「5分で絶対に分かるPKI 」をどうぞ。

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