全国大会2019 北陸エリア予選 準決勝:でぃすく(富山) vs. つむーじー(富山)
撮影者:瀬尾 亜沙子
ライター:渡邊 康史
時は満ちた。
2019年、平成から令和へと時代が移りゆく中、各地のCSで、店舗予選で、そしてグランプリや超CSや大型大会で、しのぎを削ってきたデュエマプレイヤーたちの戦い。
そのクライマックスを飾る全国大会エリア予選は、ここ福井県で行われる北陸エリア予選から始まる。
ここ福井県は、恐竜の化石が多数発掘されることで知られる。フクイサウルスやフクイティタンといった恐竜たちの骨格標本が、太古の姿を現在に伝える。
時を経た現在、そんな白亜紀の記憶に導かれるように集ったプレイヤーたちは、数多くの死闘を繰り広げる。目指すはただひとつの椅子、全国大会の参加権。北陸エリアにおけるデュエマプレイヤー生態系の頂点という称号だ。
時刻は17時を半刻過ぎた頃、冬の訪れとともに太陽はいち早く姿を消し、辺りは夜闇に沈む中、未だ戦いの手を止めぬ者がいる。
一人はでぃすく。
富山県を中心に活動する彼は、拠点とするカードショップのプレイマットを手にこの戦いに乗り込んだ。愛用の《蒼き団長 ドギラゴン剣》のスリーブが光る。
でぃすく「このスリーブを使うと調子がいいんですよね」
彼は不敵に笑う。
彼の前に立ちはだかるのは、同じ富山県を拠点として、新潟や長野に足を伸ばして活動するつむーじー。
つむーじー「ここ最近はいろんなCSに参加できるようになったので、実戦経験はかなり積ませてもらってますね」
こちらもまた、獰猛な笑みが口元に浮かんでいる。
1日がかりの激闘の果て、闘志未だ消えぬ両雄。ゲームの準備を進めながら談笑する2人の姿に、気負う様子は見られない。
そこにあるのは確たる意志。
「お前を倒して決勝に行く」。
ただそれだけだ。
ヘッドジャッジが試合開始を告げる。戦いの幕が上がる。
全国大会2019北陸エリア予選準決勝、いざ尋常に、デュエマ・スタート。
先攻:でぃすく
互いの第1ターンから第2ターンにかけて、両者の様子は対称的だった。
先攻のでぃすくはじっくりと、1手1手を熟考しながらマナチャージを行っていく。
一方後攻のつむーじー、こちらはプレイに迷いがない。
そして、先に動いたのはつむーじーである。後攻第2ターン、光のカードが2枚マナゾーンに置かれた上で《音奏 プーンギ》をバトルゾーンに送り出す。
だがこれを受けた先攻第3ターン、でぃすくはマナチャージの後、《ダチッコ・チュリス》を戦場に送り込む。次に出すビートジョッキーのクリーチャーのコストを3コスト減じる。
その結果、送り出されるのは──。
でぃすく「《DROROOON・バックラスター》、軽減入って1コストで!」
登場時のGR召喚で《グッドルッキン・ブラボー》が呼び出され、GR召喚を行う。これに伴い、《DROROOON・バックラスター》のGR召喚時効果が誘発。つむーじーの《音奏 プーンギ》をいともたやすく葬り去ってみせた。
ボード・アドバンテージで優位に立ち、ゲームの支配権はでぃすくに傾く。一瞬にしてゲームの主導権を握られたつむーじーはしばし瞑目した。
先程までとは打って変わって、手を止め、次の一手を模索するつむーじー。でぃすくのデッキは『赤単“B-我”ライザ』。ここでまごつけば、でぃすくのクリーチャーはつむーじーのシールドを食い荒らすだろう。
しばしの思考時間を置き、意を決してマナチャージ。その後、手札から決意とともに《♪銀河の裁きに勝てるもの無し》を放つ。GR召喚を行い、手札の3コスト以下の呪文をノーコストで唱えることの出来る光の呪文だ。
つむーじーの呼び声に応えて超GRゾーンより登場したのは《ブルンランブル》。そして踏み倒しで選んだのは、2発目の《♪銀河の裁きに勝てるもの無し》。再びのGR召喚で、《ポクタマたま》が着地する。《ブルンランブル》が登場時効果で《ダチッコ・チュリス》と相討ちになり、頭数を減らす。だが、まだ盤面には《グッドルッキン・ブラボー》と《DROROOON・バックラスター》が残る。
先攻第4ターン。でぃすくはマナチャージの後《一番隊 チュチュリス》を投下。これで残る手札は1枚。その手札を、でぃすくは迷うことなくバトルゾーンに送り込んだ。
《“轟轟轟”ブランド》。マスターG・G・G能力により、ノーコストで降臨。双極篇以降、幾度となく猛威を振るった火文明の決戦兵器だ。
《“轟轟轟”ブランド》の登場時効果で1枚ドロー。その手札をそのまま墓地へと落とすことで、《ポクタマたま》が戦場の露と消える。
でぃすく、ついに大きく動いた。《グッドルッキン・ブラボー》がまず斬りかかる。つむーじーのシールド・トリガーは発動せず。《グッドルッキン・ブラボー》はマナドライブ能力によりアンタップし、再び攻撃。このシールドブレイクにおいても、つむーじーのシールドは沈黙を守る。
つむーじーからため息が漏れる。
当然だ。つむーじーが今日持ち込んだ『赤白ビートジョッキー』は、いわゆる「受け札」を分厚く取った構築。現在マナに2枚見えている《DNA・スパーク》や、《♪正義の意志にひれ伏せ》といったシールド・トリガー呪文を抱え、相手のビートダウンを受け止めてカウンターアタックを仕掛けていく戦略を取っている。だが、肝心のシールド・トリガーが発動しないことには、元も子もない。
そんなつむーじーの苛立ちを他所に、でぃすくの手は止まらない。ついに動く《“轟轟轟”ブランド》が、2枚のシールドを食い破る。
つむーじーはブレイクされたシールドを確認する。その表情が俄に活気を取り戻した。
つむーじー「≪(♪正義の意志に)ひれ伏せ≫ッ!」
シールド・トリガー呪文《♪正義の意志にひれ伏せ》、満を持して超動。その効果はGR召喚と相手クリーチャー1体のタップ。これにより、つむーじーの場にも遅れて《グッドルッキン・ブラボー》が馳せ参じる。さらに、残る1枚のアタッカーであった《DROROOON・バックラスター》がその言葉通りにタップされ、平伏してしまった。
かくして攻撃の手が止まってしまったでぃすく。シールドを4枚削ったものの、余力を残した状態でつむーじーにターンを譲り渡してしまった。
ここまで、ゲームの流れを実質的に主導していたのはでぃすくだった。先攻を取り、ボード・アドバンテージを握り、あまつさえライフ・アドバンテージでも圧倒した。
しかし、そこへ来て待ったをかけるシールド・トリガー。首の皮一枚つながったつむーじーがこの後、反撃に転じるのは必定だ。
《DROROOON・バックラスター》に平伏を命じるつむーじー、それはまさに、このゲームの支配権を簒奪する意思表示である。
後攻第4ターン、つむーじーは流れを手繰り寄せるための行動に打って出る。マナチャージと共に≪ゴリガン砕車 ゴルドーザ≫を召喚。2回攻撃を可能とする4コストのアタッカーだ。
≪ゴリガン砕車 ゴルドーザ≫が《グッドルッキン・ブラボー》を葬ると、効果でアンタップ。続く攻撃は《“轟轟轟”ブランド》への自爆特攻。一見無謀な行動だが、この自爆特攻によりラスト・バーストを炸裂させ、呪文面≪ダイナマウス・スクラッパー≫で《DROROOON・バックラスター》と《一番隊 チュチュリス》をまとめて焼き尽くす。盤面に残されたのは《“轟轟轟”ブランド》のみ。でぃすく、つむーじーに引導を渡すことが難しくなった。
でぃすくとつむーじーの両雄がしのぎを削る光景は、かつて生存のための戦いを繰り広げ、その屍をここ福井県に横たえた恐竜たちの姿を想起させる。
恐竜が生きた白亜紀の地球において、全ての生命体はただ敵対者を打ち負かし、自らの子孫を繁栄させることを目的に生きていた。肉食恐竜は草食恐竜を喰らうための鋭い牙と爪を持ち、草食恐竜は肉食恐竜を圧倒するための巨大な体躯や角、装甲を身につける。
原初の時代は、力と力のぶつかり合い。
西暦が2000年以上を数える現代、恐竜たちの体躯が化石となって息づくように、でぃすくとつむーじーの2人に流れる血潮には恐竜たちの記憶が息づいている。
シールドを削りながら、ボード・アドバンテージを奪い合う。ループコンボやコントロールといった小難しい概念を抜きにして、ただただ互いのクリーチャーが拳を固めて殴り合う。
原初のデュエル・マスターズ、闘争本能のぶつかり合いが、今まさに繰り広げられている。そして、その終局の時は近づいていた。
《“轟轟轟”ブランド》を残してターンが戻ってきたでぃすく。しかし、彼に使うことを許された手札は1枚、なおかつマナは4枚。このターンでは、《“轟轟轟”ブランド》で相手の残り1枚のシールドを突破するしかない。
手札を抱えたまま、《“轟轟轟”ブランド》が最後のシールドを叩き割る。つむーじーはそのシールドを一瞥し、再びバトルゾーンにそのカードを置いてみせた。
《♪正義の意志にひれ伏せ》。
再びのGR召喚だ。《ポクタマたま》が呼び出される。すでに登場している《グッドルッキン・ブラボー》を含めると、合計打点は3体。だが、まだでぃすくを葬るには程遠い。
ところが。
つむーじーはすでに、勝利への道筋を固めていたのだ。
迎えた後攻第5ターンで、マナチャージと共に《ナゾの光・リリアング》が投下される。登場時効果で呪文をノーコストで撃ち出す。ここでは《♪銀河の裁きに勝てるもの無し》が放たれる。ここでGR召喚、さらに続く呪文踏み倒し効果で打ち出されたのは……《瞬閃と疾駆と双撃の決断》。
火のパーフェクト呪文、この最高のタイミングで超動。コスト3以下のクリーチャーをバトルゾーンに投下する効果と、自分のクリーチャーにスピードアタッカーを与える効果が選ばれる。2枚目のリリアングがバトルゾーンにやってくるとともに、先程投下したリリアングにスピードアタッカーが付与された。そして、残る手札は1枚。
つむーじーは声高らかにその名を呼ぶ。彼が決着を託す最終兵器、その名こそ──。
つむーじー「《“轟轟轟”ブランド》ォッ!!」
力と力のぶつかり合いの果て、ついにでぃすくは、致死打点を形成して殺到するつむーじーのクリーチャーたちの前に、膝を屈してしまった。
Winner:つむーじー
試合終了後、つむーじーはこう語る。
つむーじー「ジョーカーズが増えてきましたし、昔ながらの受けが強いビートダウンなら行けると思ったんですよね。がっちりハマって良かったなと」
屈託のない、晴れやかな表情を見せるつむーじー。一見優しげな彼の笑顔の中で、決勝戦も食らってやるという決意がみなぎるのを、筆者は見逃さなかった。
穏やかな表情の下に、ティラノサウルス・レックスの獰猛さを隠し持った男、つむーじー。決勝戦に向けて、今はただ闘争本能の牙を研ぐ。
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