「そんなに飲むなんて、本当日本酒が好きなんだね」
数えるのを辞めた程に言われた言葉だ。
はっきりと言っておくと自分は日本酒が好きなわけではない。
そりゃ確かに飲むさ、研究にもしたぐらいだし。
飲んだ本数で言えば、歳上にも早々負けることはないだろう。
というか勝ってる奴は肝臓を労るべき。休肝日はビールを飲む日ではない。
そもそも日本酒を大学の研究テーマにしたのだって
「他の人が楽しそうに喋ってるのに自分は一切分からない。悔しい」
という劣等感から来るもので、当時は日本酒の旨さも一切感じずに、取り敢えず数さえこなせば分かるだろうと苦行飲酒をしていた。
アルコール度数は高い、味はわからない、量は多い、無駄に高い。
まぁあんまり関わりたくない奴だよね。とっつきやすい缶チューハイが人気な理由もよく分かる、分かりすぎて和歌になる。
飲み始めた頃は何回体調を崩して便座にお辞儀したか。良くも悪くも体質的にアルコールには耐性があったもののザルではない。
間違いなく辛い日々だった。
分かるか?
教授から「データを大台に乗せるために2ヶ月で20本行きたいね」って死の宣告をされた気持ちを。こちとら自費やぞ。少しは払え。
それなのに無謀な研究を続けたのは、日本酒が面白いからだ。
・アルコール添加臭がキツく二世代前ぐらいのもの
・安くて飲みやすいけど特徴はないもの
・未来を見た結果、今に置いていかれるもの
・もはや日本酒ではないもの
・若者に手に取ってもらおうと工夫したもの
・ウオノラゴン
色々な種類があるわけで飽きない。
味の種類には限度があるので中には同じようなものもある。だから飽きないというのは嘘になるが、それにしても味わいは多い。
たまーに買ったゲテモノがクリーンヒットすることもある。旭興のロゼとかオススメ。
そんなものと出会うたびに「米だけでこんな味が出せるのか」と可能性に心を躍らせる。
だから飽きが来るまでは向かい合おうとは思う。さながら題の如き日本酒に。