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死ぬ気でやらない「5%の努力」が良い。その理由と成功の法則とは?

死ぬ気でやらない「5%の努力」が良い。その理由と成功の法則とは?
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世の中には、「ドミノ倒し式に成果を2倍、3倍にする」といった、魅惑的な宣伝文句を謳ったビジネス本やセミナーがたくさんあります。そうした本を読み、セミナーに参加したときは、「自分にもできる」とやる気がわいてきますが、しばらくすると意欲はしぼんでしまうものです。

そうした手段によって成功を手にするのは、ごくわずかな人だけ、それはなぜでしょうか?

このような本などで語られる理論を、「日常生活に適用するのは非現実的で、大半の人にとっては到底無理なこと」だからと説くのは、マイケル・オールデン氏です。

どん底を経験した起業家の「5パーセントの法則」

オールデン氏は、マーケティング関連の優良企業ブルー・ベース・マーケティングの創業者で、米国で最も人気のある通販番組の司会者も務めています。

その前は、企業弁護士として年に20万ドル以上を稼いでいましたが、若い頃は薬物常用者の親族に囲まれて育ち、破産や離婚を経験するという順風満帆とは程遠い人生でした。

そんな波瀾万丈の人生を歩んできたオールデン氏が、もっとよい人生を送りたいと考えている人にすすめるのが、「5パーセントの法則」です。

これは一言で言えば「生活のあらゆる面で、さらに5%の努力を重ねれば、目標を達成できるだけでなく、その目標を上回る成果を出せる」というもの。詳細については、著書の『5%MORE 「死ぬ気」でやらない成功術』(浦野壽美子訳/マイクロマガジン)で論じられています。

ビジネスの現場で、発破をかける意味合いで使われる「人の2倍の努力」とか「120%の努力」でなく、たった「5%の努力」。それにはどんな効用があるのでしょうか。

5%多く稼ぐには

多くの人が、今より多くの収入を得たいと考えています。しかし、それがうまくいかないとすれば、それは才能とか運が足りないのではなく、5%の努力がなされていないせいかもしれません。

オールデン氏が弁護士を目指してロースクールに通っていた頃、生活費を稼ぐために電話セールスのコールセンターで働いていました。そこでは、十数人の電話営業スタッフをまとめるチームリーダーを募っていました。

チームリーダーには、チームの売上をもとに少額の報酬が支払われる仕組みでしたが、マネジメント業務のせいで自分が電話営業をする時間が減って、収入が下がる心配がありました。

そのため多くのスタッフが、チームリーダーへの道に消極的な一方、オールデン氏はこれを、会社に対する自分の価値を高める好機と捉えました。しかし、それには今までは良好な関係を築こうとも思っていなかった同僚たちと、うまくやっていかねばなりません。

ここでオールデン氏は、5%の努力を実行します。その努力とは、同僚たちに胸襟を開き、チームのためにいくらかの時間を割くことでした。

スプレッドシートやメールなどの限られたツールを使って、チームのやる気を維持し、メンバーに責任感を持たせました。

短いミーティングを毎週行い、目標設定の時間をとり、まえの週の成績を検討します。やる気を起こさせる引用句をメンバーに毎日メールし、目標を達成するまであとどれくらいかを定期的に知らせました。(本書66~67pより)

これにかけた時間は週1時間ほどだったそうです。5%どころか1%にすぎない努力でした。

にもかかわらず、オールデン氏のチームは部署内でトップの成績を毎週あげ、自身はさらにお金を稼ぐことができました。

オールデン氏は、5パーセントの法則によって収入を増やすのは、才能ある一部の人にしかできないことではないと力説します。

例えば、年収が2万5千ドル弱の4人家族(米国では貧困レベルとされる)が、5%の努力と工夫で、ほんの5%だけ収入を増やすとどうなるでしょうか。

その額は1年で1200ドルほどですが、それを貯金に回すことが可能となります。

貯金によって心の余裕が生まれると、お金を稼ぐ方法を探すための時間を5%増やす気になれ、さらに増収のチャンスが出てきます。

ずっと必死に頑張るのではなく、もう少しの努力、熱心さ、根気があればいいと、オールデン氏は述べます。

生産性を高めたいなら、やりすぎない

現代人の大半は、朝起きた時から夜寝るまでの間、さまざまなタスクに追われながら生きています。この状況を打開するには、何かを一気に変えなくてはいけないのでしょうか?

オールデン氏の答えは「否」です。これも、5%の小さい改善の積み重ね、5%の行動の変化でいいそうです。それだけで、やがて全体の生産性が高まると説きます。

逆に生産性を上げようと、あれもこれも取り組もうとするマルチタスクの弊害は、ご存じの方も多いでしょう。マルチタスクは、かえって効率を下げてしまうという問題があるのですが、さらに別の問題もあることをオールデン氏は指摘します。

エモリー大学で行われた調査実験では、一定期間マルチタスクを強いられた被験者は、さまざまなテストを受けたあと、あまり自制心が働きませんでした。

実験は次のように結論づけられています。

「実験結果によると、変化する要求を受け入れるための思考の切り替えは、利点とその欠点とを比較検討されるべきである。五つの実験の結果によって、思考の切り替えが精神的負担となり、自己調整能力が抑制されることは証明されている。(中略)繰りかえし思考の切り替えを行うと、実行機能が損なわれ、その後の作業の自己調整能力が著しく低下する」(本書208~209pより)

この実験結果をふまえてオールデン氏は、「さらに5%のことをもっと効率的にうまく行いましょう。目の前にある仕事にさらに集中すれば、さらに多くを達成できるのです」とアドバイスします。

子育てにも5%の努力を

5%の努力は、なにも仕事の現場にだけ通用するというわけではありません。これは、人生のあらゆる局面で適用可能で、子育てにも当てはまるそうです。

オールデン氏が、まだ小さい子どもにすべき5%の努力の1つとして「読み聞かせ」を挙げています。

なぜ子供への読み聞かせが重要なのか。答えはかなり単純明快です。

読み聞かせによって、子供読解力やテストの成績、社交性、コミュニケーション能力、最終的には生活全般の能力が向上するからです。

早くから読み聞かせをしてもらっていたり、読むことを学んだりしている子供が、いずれよりよい人生を送れることに疑いの余地はありません。

この、ほとんどの人がすでに経験的に知っていることは、自然科学によっても証明されています。(本書153pより)

これに関しての5%の努力とは、読み聞かせを1日の5%の時間(72分)費やすことです。そこまでは無理でも、もう1ページだけ読むというようなささやかな努力が、子どもの人生に前向きな力を与えるのです。

さらに、子どもに「もう少しだけ」話しかけるというコミュニケーションの努力も、子どもの脳の発達にいい影響をもたらします。5%の努力で申し分ないのです。


上に挙げたのは、本書に書かれている内容の一部にすぎませんが、5パーセントの法則は、どんな人にも、どんな状況にも適用可能だとオールデン氏は説明しています。

企業社会でよく言われる「2倍の努力」だと、次第に失速し放り投げてしまうのがオチですし、人間の本性に反しています。

本書を参考に、もう少しだけ力を尽くす、仕事を頑張る等々、人生のさまざまな局面で始めてみてはいかがでしょうか。


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Image: Shutterstock.com

Source: マイクロマガジン

鈴木拓也

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