気象

まだまだ続く黒潮大蛇行「過去3番目の長さに」(動画)

 九州から本州の南岸に沿って北上する黒潮は、2017年8月以来、2年以上にわたって蛇行が続いていて、過去3番目の長さを記録している。海洋研究開発機構(JAMSTEC)の観測チームは「終わる徴候はなく、2020年に入ってからも継続する」という予測を発表した。

黒潮大蛇行とは

 世界最大規模の海流のひとつ黒潮は、東シナ海を北上して、九州の南から太平洋に入り込み、本州の南岸に沿って北上し、房総半島沖を東へ向かうルートを取るものだが、2017年8月、異変が起こった。

 

 黒潮の流れが本来のルートをはずれ、紀伊半島から東海沖で海岸線から大きく離れて、伊豆諸島の八丈島付近まで南下を始めたのだ。

史上3番目の長期化

 黒潮大蛇行が発生すると、蛇行した黒潮と本州南岸の間に、深海からの冷たい水が上昇するため、漁場にも影響を及ぼすうえ、東海から関東地方には、黒潮から分かれた海水温の高い暖水が移動するため、沿岸の潮位が上昇し、浸水リスクが高くなることで知られる。

夏には小蛇行も発生

 1965年以降、これまでに5回の大蛇行が観測されているが、▽最も長く続いたのは1975年8月〜1980年3月までの4年8カ月、▽次いで1981年11月〜1984年5月の2年7カ月、今回は史上3番目の長さを更新中だ。

 

 JAMSTECによると、今年6月には黒潮大蛇行とは別に、九州の南東でも離岸(小蛇行)が発達。これが黒潮の下流に移動して、四国の足摺岬でも大きな離岸が始まった。

2020年も続く予測

 蛇行の規模を判断するのは、南下位置が北緯32度を越えるかどうかがカギを握るが、今月4日時点の推定流路では、紀伊半島最の潮岬で離岸した流れが、北緯32度以南で蛇行して、八丈島の北を通っているのが確認されている。

 

 大蛇行を作る反時計回りの渦(D)が東に移動すれば終息に向かう可能性もあるが、現状では来年以降も西に移動すると予測される。

 

 長期化する黒潮大蛇行の影響で、漁場が移動して、沿岸漁業には深刻な影響が及んでいる。シラスやカツオ、桜えびなどの漁獲量も減少しているうえ、静岡沿岸の潮位の変化は、台風の進路に影響し、沿岸では浸水・冠水被害のリスクを高める。見えないところで起きている自然現象にも注意を向けたい。

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