スピン経済の歩き方:大戸屋が炎上した背景に、ブラック企業と日本軍の深い関係 (1/5)

» 2019年12月17日 08時04分 公開
[窪田順生ITmedia]

 12月10日にオンエアされた「ガイアの夜明け」の「残業を減らす!45時間の壁」シリーズの中で、同社の山本匡哉社長が、残業を減らすことができない3人の店長たちを指導して、働き方を改革していくという姿に密着をした。本来なら、”困難に挑むリーダー”というイメージが訴求できる企業側にとってもおいしい企画である。実際、大戸屋公式SNSもオンエア直前に「放送直前の今、とってもドキドキしています!!ぜひご覧ください」と嬉しさを隠せずにいた。

 しかし、フタをあけたら「残業を減らす!45時間の壁」というより、さながら「ブラック企業に潜入24時」といったショッキングな内容になってしまっていたのだ。

なぜ大戸屋は炎上したのか

 人手不足を解消しようと単発バイトのサービスを利用したところ、逆に店長の残業が増えるなど、かなり過酷な労働環境に「ブラックすぎる」と視聴者がドン引き。さらに、社長が残業をやめられない店長に、「目が死んでいるんだけど。下向いて、本気になっているとは思えないんだけど」と強い口調で叱責をするシーンに、「精神論ばかりで、パワハラ社長の典型」などと批判が殺到してしまったのである。

 ただ、大戸屋をかばうわけではないが、残業を減らしてたくても減らせないということで職場がギスギスするのは、何もこの会社に限った話ではない。日本全国の会社で見られる「日常風景」である。

 例えば、総合転職エージェントの株式会社ワークポートが全国の転職希望者264人を対象に、働き方改革半年後の評価を調査したところ「働き方が改善された」と回答したのはわずか10.2%。「変わらない」は73.1%で、「悪化した」という回答も16.7%あった。

 つまり、働く人の大多数は、残業を減らすことのできない大戸屋の店長と同様、これまでと何ら変わることのないワーキングスタイルを続けており、その中には、残業を減らせていないがゆえ、上からパワハラまがいのどう喝を受け、死んだような目になっている方たちもかなりの割合で存在しているのだ。

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