自分に自信をつけるためには、どうすればいいか?

田中泰延氏(以下、田中):最後のご質問者の方です。関東学院大学からお越しです。Aさん。ようこそいらっしゃいました、拍手。

(会場拍手)

これはね、やっぱり最後にちょっと、僕も幡野さんにおうかがいしたい。ガツンとしたご質問です。Aさんからのお話です。

「端的にいうと、自己肯定感が低く、自分に自信がない。友達とのやりとりやバイト先で人から褒められても、素直に受け入れられない。自分の思っていることを口にできない。でももっと自分に自信を持って、考えていることを伝えたり、行動できるようになりたい」。

「大学2年生で20歳なのだが、最近、高校時代の数学の先生と食事をした。そのときに『家族に自分の思っていることを言えない』という話をしたら、『それはおかしい』と言われた。そのときに、自分は変なのだろうかと悩んでしまった。自分を変える、自分に自信をつけるために、どうすればいいですか?」。

幡野広志氏(以下、幡野):あら、大変だこりゃ。

田中:なにかAさんから補足あれば、ぜひおっしゃってください。

A氏(以下、A):補足はとくに、このままで大丈夫です。

幡野:自信がない感じでしたね、今ね。

田中:自信がない感じ、出てたね(笑)。そうかぁ。

幡野:唯一、広告系じゃない人ですね。

田中:広告系じゃない人(笑)。

(会場笑)

幡野:学科では何を勉強してるんですか?

A:今は心理学を中心に勉強してます。

田中:関東学院大学って、どこにあるの?

A:神奈川県の横浜市です。

「自分の思っていることを家族に言えない」という悩み

幡野:心理学を勉強していても、やっぱり自分のことはわからないものですか?

A:私の学部は、集団行動や集団の中での人の心理を扱う社会心理学がメインで、自分のことを学ぶわけではないので。

幡野:個人のことではなく。へぇー。……それより、「高校のときの数学の先生と食事」っていうところ、ちょっと気になっちゃいましたけど。

(会場笑)

田中:ドキッとしましたけどね。

幡野:高校の時の先生に会いますか?

田中:会わないでしょう。それ、なんでまた?

幡野:しかも数学……それはいいけど(笑)。

(会場笑)

田中:数学、珍しいね(笑)。

幡野:男性?

A:あ、はい。一応(笑)。

田中:ドキッ。大丈夫?

A:大丈夫です、大丈夫です(笑)。

幡野:それは、なにか人生相談をしたの?

A:高校のときは、同じ市街なんですけど、地元からはちょっと離れた学校に行ってて。数学の先生も私と同じ地元だったので話が合って、ただ単に卒業してからご飯に行っただけで。人生相談じゃないんですけど、「悩んでることないか」という感じの話の流れになって、それを話したという。

田中:そっか。

幡野:(家族に)自分の思っていることを言えない、ってこと?

A:はい。

自己肯定感が低くなった一番の原因

幡野:なんで自己肯定感が低いんでしょうね。自分ではなんでだと思います?

A:自分で自分を認めてあげられないというか。それが一番大きいのかな、って思ってて。

幡野:なんで自分のこと認められないんでしょうね。

A:……なんか、まだまだだって思っちゃうんですよね。

幡野:なんでみんな侍みたいなことを言い出すんですかね(笑)。

(会場笑)

田中:拙者、まだまだでござる(笑)。

幡野:「まだまだ私なんか」みたいな(笑)。

田中:でもさ、「まだまだ」っていうことは、自分が経験を積んだり勉強が進んだりしたら、「まだまだ」じゃなくなると思ってるんじゃないですか? 段階の途中と思っているわけで、根本的にダメだと思っているわけではないんですよね。

A:私が根本的にクソ人間なので(笑)。それで「自分はダメなやつだ」って思いこんじゃってて。何をするにも、褒められたりしても、自分はダメだから素直に受け入れられない、みたいな。

幡野:なんで自分のことをクソ人間って思うんですか。

A:小学校ぐらいまでがピークだったんですけど、めちゃめちゃわがままだったんです。周りのことがぜんぜん見えていなくて、自己中だったんですね。中学校ぐらいで部活とかに入ってからは、それがイヤで。「私、周りからめっちゃ浮いてないか?」って思い始めて。わがままだし、自分の意見を押し通したがるみたいな。

協調性がないとやっていけない部活だったので、よくないなと思って、直したいと思って、高校も地元の人がいない離れた所に行って。なんとか変わった……変わってはいないんですけど、一応わがままとかは抑えられるようになったんですけど。

逆に、自分の思っていることを昔のように強く……無神経になんでも言いたいわけじゃないけど、思っていることとか、意見をあんまりちゃんと言えなくなっちゃったのかなって。

親に褒められたかどうかが自己肯定感に影響する

幡野:なるほどねぇ。子どものときに褒められたことあります?

A:私、子どもの頃の記憶がなくって(笑)。

田中:記憶がない!

(会場笑)

幡野:まぁでも、確かに僕も2歳のころとか記憶がないですね。

田中:それはみんな、だいぶないですよ(笑)。

(会場笑)

A:小学校の自分がわがままとか、そういうのはわかるんですけど。どういう環境だったかとかはぜんぜん思い出せなくて。

幡野:あぁ、そうですか。家庭環境とか?

A:家庭環境はよくなかった、っていうことだけ覚えてて。褒められたっていうような、強い印象に残った出来事はとくに。

幡野:あのね、自己肯定感が低い人はいっぱいいるんです。たぶんね、今日は、さっきの岡田大毅君以外は、全員自己肯定感が低いんです。彼は自己肯定感の塊だったんだけど(笑)。

(会場笑)

決定的な違いは、親が褒めたか褒めていないかの違いだと思う。たぶん大毅君のお父さんとかお母さんは、すごく褒めてたと思うよ。だからああやって自信があるんでしょう、根拠のない自信なんだけど。(Aさんは)褒めてもらっていなかったんじゃない?

A:それを聞くと、そうかもしれないです。

幡野:僕もそうなんですよ、僕も親から褒められた記憶がぜんぜんなくて。今はいろんな人から褒められる。写真を撮っても文章を書いても褒められるんですけど、Aさんと同じで、違和感しか感じないです。褒められるとちょっと、なんか疑っちゃわない?

田中:そうなの?

幡野:疑っちゃいます、僕は。褒められると疑うよね?

A:「本当に?」みたいな。

田中:俺はいつも「なんでこんなにコイツは俺への褒め方が足りないんだ」って思うよ。

(会場笑)

幡野:自己肯定感って大事ですから(笑)。

幼少期に“ヨイショ芸”で育てられた田中泰延氏

田中:僕の場合は、本当にギャグみたいな話なんですけど。うちの父親が広島生まれで、僕は「ヒロ君」って言われてたんですけど、なにかちょっと書いても「ヒロ君は天才じゃあ! もうヒロ君の小学校のほかのやつは全部バカ! ヒロ君だけが天才! 明日学校でみんなバカにして歩けぇ!」って言うんですよ。

(会場笑)

もう本当、毎日それ。ほんで、「ヒロ君以外はみんなバカじゃあ!」ってずっと育てられた俺は、「そんなわけないやろ」と(笑)。

(会場笑)

でも、そこまで言うと、ギャグなのか本当なのかわからないけれども、ヨイショ芸みたいな感じで、気分は悪くないわけ。

幡野:あぁ、そりゃそうだ。

田中:だから、僕はずっとヨイショ芸を受けて育ってきたから、なにか本を書いたりして褒められると「褒め方が足りねぇなぁ」と思って、机に足を上げちゃうんですけど(笑)。

(会場笑)

幡野:いやでもね、これはたぶん直らないと思う。僕も直らないので。それで、僕は自分の子どもが3歳なんだけど、適切に褒めるということをしているんですね。それはやっぱり、将来のことを考えても。

でも僕は今36歳になって、いろんな人が褒めてくれるけど、やっぱり信じられないというか。「いや、そんなことないでしょ」ってちょっと思っちゃうし。でもこれは、悪いことばっかりじゃなくて、天狗にならなくてすむんです。逆に自己肯定感の高いタイプだったら、もしかしたら天狗になっちゃってるかもしれないから。それはそれで、もしかしたらよかったのかもしれないけど……。

田中:(マイクを鼻に当て天狗のまねをする)

(会場笑)

幡野:でもやっぱり一番いいのは、天狗になることでも、「私なんか」とか「俺なんか」じゃなくて、適切に自己評価することのほうが大事なんじゃないかなぁ。