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障害者と関わるのは面倒? 外注ビジネスで露呈した「社会の本音」

障害者は障害者だけで暮らせばいいのか

障害者は「駒」なのか?

「知的障害者の仕事に成果を期待しなくていい」「障害者は障害者同士で一緒にいた方が幸せ」――。あなたはこう思ったことがあるだろうか。

これは、私が障害者雇用の取材する中でよく耳にした言葉で、珍しい考え方ではない。同じような意見をよく聞いた。「面倒なので障害者と関わりたくない」のが本音だろう。

その本音に応えるかのように今、「働く障害者」と「働く場所」をセットで企業に提供する障害者雇用の「外注ビジネス」が広がっている。

国が定める法定雇用率を満たそうと、さまざまな業種の企業が「外注ビジネス」を利用している。そうすれば、障害者を受け入れる環境を整えることなく、数字上はコンプライアンス遵守の姿勢を示せるからだ。

外注ビジネスの先駆けとして、人材派遣会社の子会社が千葉県内で2011年に始めた「企業向け貸農園」がある。

障害者が作業するビニールハウスが建ち並ぶ「企業向け貸農園」(さいたま市岩槻区で2019年9月20日)
 

広大な敷地に建つビニールハウス群で、さまざまな企業に区画が貸し出されている。区画を利用する企業は、農園で作業する障害者と雇用契約を結ぶことで、雇用率の達成につなげる。

農園で作業する知的障害者や精神障害者を農園運営会社が集めてくるため、利用企業は自ら障害者を集める必要はない。農園での作業内容は決まっており、障害者に任せる仕事を本業から選び出す手間もかからない。

「雇用率を売るビジネスで、障害者を雇用率達成のための駒としか考えていない」
「障害者の隔離政策のようだ」
「障害者はもっと働ける」

こうした憤りの声を障害者の就労支援に携わる関係者からよく聞く。農園での作業は、どの会社に属していようが、ほぼ同じ。土を使わない「養液栽培」という方法で野菜を育てるため、種まきや水やり、収穫などの軽作業ですむ。

農園を訪れると、手持ち無沙汰の障害者も少なくない。収穫する野菜は市場価値を求められず、売り物にしない。それぞれの企業で社員への無料配布などが行われている。