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（喜美子）十代田さんの言うてることは正しい。
人前に出す茶わんやうちには任せられへんうちには　まだ難しい。
けどな？ムチャしたかった…　作りたかった…。
（戸が閉まる音）
♪～
♪「涙が降れば　きっと消えてしまう」
♪「揺らぐ残り火　どうかここにいて」
♪「私を創る　出会いもサヨナラも」
♪～
♪「日々　恋をして　胸を焦がしたい」
♪「いたずらな空にも悔やんでいられない」
♪「ほら　笑うのよ赤い太陽のように」
♪「いつの日も雨に負けるもんか」
♪「今日の日も涙に負けるもんか」
（戸が開く音）
（八郎）信作んとこ電話してきた。
おじさんに喜美子も手伝います言うてきた。
ええ言うてくれはりました。
（小声で）とやあ…。
フフ…。
♪～
八郎と同じものを作るのは簡単なことではありません。
♪～
あっ　あっ　あっ…。
あっ…。
はあ…。
１個作るんに　３か月はかかりそうやな。
人が作ったもんと　おんなじもん作ろういうんは　なかなか難しい。
そもそも　電動ろくろ使いこなすんは何年もかかる。　熟練が必要や。
まあ　そうと分かった上でムチャしてんのやろうけど。
これは　僕がやる　どきぃ？
もっかいやる。　やらせて下さい。これは　諦めぇ。
よいしょ…。
喜美子は　こっちで…　ほい。
１０個作ったらええ。
おじさんに　そう言うて電話しといたから。
そのうち　上手になるで。
負け？うん？
勝った負けたで言うたらうちの負けですか。
誰と勝負してんねん。
陶芸の神様。陶芸の神様？
えらいとこに勝負挑んでるなあ。
それより　まず自分の作ったコーヒー茶わんで誰かがおいしそうにコーヒー飲んでくれてるそう

いう景色を思い浮かべて作って下さい。
絵付けやってる時みたいにな。
深野先生は　ニコニコ穏やか～にやってはったんやろ？
言うてたやん。　喜美子かて絵付けやってる時は　そうなんちゃう？
陶芸と絵付けは違う今やってみて　よう分かったわ。
おんなじや。
おんなじやで？
作ってる人の気持ちが　作品に伝わる。
どんな　もの作りでもそこだけは一緒や思う。
心は伝わるで。
はい。
ふう～。
ほな　この１０個　半乾きさせとく間に残りもう一種類の方　作ろか？はい。
いうても　おんなじもん　１０個作るいうんは簡単なことやないで？はい。
♪～
八郎が自分の作品と格闘している一方喜美子は　コーヒー茶わんと必死に向き合っていまし

た。
♪～
（直子）もうええやん！（常治）あかん。
（マツ）朝まで？　朝までやるん…？
（常治）あかん言うてんのに　もう。ほな　帰ってけえへんの？　大変やなあ。
あかん言うてんねん　お前…。（直子）何で！
いや　ちょっ…。（マツ）そうか…　うん　分かった　分かったよ。
は～い。ちょっ　待て　お前…　あっ…。　お前…。
喜美子や。いや　分かってるわ　もう。朝まで何とか言うとったやん。うん　帰れへんて。
何で帰れへんのや。（百合子）作品作りしてんのやろ。
うん　コーヒー茶わんも作ってるんよ。
カフェ　サニーな。ええ名前付けたよなあ。
名前なんか　どうでもええねんてちょっと　おい…。うち　お給金上がるで。
おっ？（マツ）今　何て？
電化製品の組み立ての作業なんてうまいことできんかったけど最近は　班の中で一番仕事が

早い言われるようになった。
新人研修係の　何とかさんのおかげ？ちゃうわ！
（常治）何や　それ。　何や　それ。ううん…。
仕事してる時　ここにお父ちゃんここにお母ちゃん　ここに百合子ほんで　ず～っと先に喜美子

姉ちゃんの顔が浮かぶ。
あそこに追いついたろうと思ってな必死にやってたら　できるようになった。
休み明けから　うち　副班長やで。
（百合子）ええ！おう…　なっ…。
えらいなあ。副班長手当いうのが　少～しつくんや。
ほやから　ええやんパーマネントあてたって。
ええよ！　ええやんな？　多数決する？直姉ちゃん　頑張ってるやん。
そのうち　百合子の進学のお金もうちが出してやることになるかもなあ。
足！　足　戻せ！　お前は！
ほういうわけで　パーマ！パーマネントあててもええですか！
不細工になんなよ。
ならへんわ！マリリン・モンローみたいになったるぅ！
誰　それ？子どもは知らんでええ。
もっかい　やるでえ。もう　子どもやない言うてるやん！
（常治）おい　お前…。喜美子が帰らへん言うから何か　差し入れ持ってったげようか思て。
な…　何で帰ってきいひんねん？せやから　陶芸やってるからや。
陶芸やってるって　お前　こんな夜中に…ええ　２人きりで？　お前…。
そん…。　せや！　お前様子見てこい！はあ？ええか　ええか？
こっそり　こっそりのぞくんやぞ。ええ？
（小声で）失礼しますぅ。
はあ…。
あっ…。
すごいなあ…。
♪～