楽天証券、待望の投信の取り崩しサービス開始へ。高コストな毎月分配型投信終了のお知らせ New!
水瀬ケンイチ
日本経済新聞によると、楽天証券は12月29日から、個人投資家が保有している投資信託を毎月自動で取り崩すサービスを始めるとのこと。
楽天証券は29日から、個人投資家が保有している投資信託を毎月取り崩すサービスを始める。想定する利用者は高齢者で、年金生活を補完するため、運用資産の一定比率を受け取れるようにする。主な証券会社では初の
今までもSBI証券などで毎月取り崩しサービスはあったのですが、金額を固定した「定額取り崩し」でした。今回の楽天証券の毎月自動取り崩しサービスは「定率取り崩し」が可能になる待望のサービスとなります。
資産形成期は、ドルコスト平均法のような「定時定額」投資だと相場が安い時にたくさん買って、高い時に少しだけ買うという買い方に自動的になることが期待できます。
一方で、資産取り崩し期においては、「定時定額」取り崩しだと相場が高い時にちょっとしか取り崩さないのはよくても、相場が安い時に時にたくさんの取り崩しを行うことになり、結果的に資産の毀損が加速してしまうという問題がありました。
したがって、取り崩し時は、「定時定額」ではなく、「定時定率」の方がよいということになります。拙著「お金は寝かせて増やしなさい」第6章で出口戦略のひとつとして書いたとおり、「積み立て時は定額、取り崩し時は定率」というわけです。
しかしながら、前述のとおり主要ネット証券の取り崩しサービスは定額取り崩しのものしかなく、定率取り崩しの登場が待たれていました。なかなか出てこなかったのですが、まあ自分が取り崩す数十年後にはなんとかなるだろうと楽観視していたところ、楽天証券が定率自動取り崩しサービスを実現してくれそうです。
老後の生活費の足しにするようなケースで、定額の方が使い勝手がよいと考えるか、定率で資産寿命を伸ばす方がよいと考えるかは、人それぞれだと思います。私は効率的に増やして、効率的に取り崩すのがよいと考えるので、定率取り崩しサービスは大歓迎です。
ただ、いつ、どれだけ資産を取り崩すかは、投資家によって人それぞれ違うはずです。儲かっていようがいまいが関係なく運用会社が勝手に月○○円分配と決めつけて分配してしまう毎月分配型投信は、投資家がどれだけ取り崩すかを決められる「自動取り崩しサービス」より機能的に劣ります。
運用会社のファンドマネージャーも、預かり資産を増やすべく頑張っているのであって、増えたそばから(あるいは増えてないのに)分配して預かり資産を減らしたい人はあまりいないはずです。
なお、報道によると、楽天証券では定率だけでなく、定額で取り崩すこともできるようになるとのことです。定率でも、定額でも、それを決めるのは運用会社ではなく個々の投資家であるべきです。
低コストで無分配あるいは分配金再投資の投信で長期間かけてコツコツ資産形成を行い、リタイア後には、その増えた投信を、毎月取り崩しサービスでコストをかけることなくコツコツ取り崩していく。主体はあくまでも個々の投資家。これが効率的な長期投資です。
今まで、一部の金融業界人やファイナンシャル・プランナーが、なぜか熱烈におすすめしていた「毎月分配型投信」という存在は、投信販売会社の自動取り崩しサービスの浸透により、いずれその存在意義を失うことになるかもしれません。
「毎月分配型投信はニーズがあるから売れるんだ」と開き直る金融業界人の言葉もたくさん聞いてきました。しかし、それはほんとうに顧客の利益のためなのか、それともご自身の利益のためなのか、いずれ立ち止まって考えさせられる局面を迎えることになるでしょう。
資産形成期の投資家のなかにも、投資に対して将来の資産形成ではなく現在の「キャッシュフロー」を求めるかたがいらっしゃいます。私とは異なる考え方であるものの、否定はしていません。
ただ、そのキャッシュフローの時期と水準を決める主体は、運用会社(毎月分配型投信)ではなく個人投資家(手動もしくは自動取り崩しサービス)であるべきだということが、このブログ記事でいちばん伝えたいことです。
投信の販売会社にとって自動取り崩しサービスは、高コストな(利幅の大きい)毎月分配型投信の販売と競合するだけでなく、自社の利益の源泉になる預かり資産を自動的に減らす方向に働くため、各社ともなかなか力が入らなかった分野です。
にもかかわらず、個人投資家の利便性向上を考慮した自動取り崩しサービスを始める楽天証券さんには拍手を贈りたいと思います。
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