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 このままでは、地球温暖化の危機を回避できない。そんな不安が膨らんでくる。

 「温暖化対策を強化しよう」という機運が盛り上がらないまま、25回目の国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP25)が終わった。

 温暖化対策の国際ルール「パリ協定」のスタートは来年に迫っている。国際社会は厳しい現実を直視するべきだ。

 開幕式でグテーレス国連事務総長は「各国は野心を大幅に高めないといけない」と呼びかけた。現状では、「産業革命前からの気温上昇を2度未満、できれば1・5度に抑える」というパリ協定の目標を実現できない。各国は来年、再提出する国別目標に対策の強化を盛り込むよう求められているのだ。

 だが、海面上昇で水没の恐れがある島国などと、二酸化炭素(CO2)の排出量が多い国々との立場の違いは大きかった。会期を2日も延長して調整した末、ようやく採択された成果文書は、国別目標の引き上げについて「可能な限り高い野心を反映するように強く要請する」という表現にとどまった。

 CO2削減量を国際的にやり取りするルールについても合意できず、来年のCOP26に先送りされた。国際社会が危機感を共有できないようでは、「すべての国が対策に取り組む」というパリ協定の根幹が揺らぐ。グテーレス氏が「がっかりした」と述べたのも無理はない。

 特に責任が重いのは中国、米国、インド、ロシアなどの主要排出国だ。上位10カ国で世界の排出量の約3分の2を占めており、これらの国が本腰を入れなければ大幅な削減は難しい。そのことを自覚するべきだ。

 石炭火力に固執する日本への風当たりも強い。

 G7のなかで日本だけが石炭火力の新設にこだわっている。会場で演説した小泉環境相が脱石炭を表明しなかったため、温暖化対策に後ろ向きな国に環境NGOから贈られる「化石賞」を受賞したのは当然といえよう。梶山経産相の国内会見で出た石炭温存発言とあわせ、計2回の不名誉な受賞である。

 どんなに省エネや再エネの拡大に努めても、石炭火力を使い続ける限り、温暖化対策を真剣に考えていないとみられてしまう。それが世界の潮流であることを、小泉氏だけでなく安倍首相らも認識する必要がある。

 海外のシンクタンクの分析では、昨年、日本は世界で最も気象災害の影響が大きかったという。気候変動対策は日本にとっても待ったなしである。安倍政権は速やかに脱石炭へと方針を転換し、本気でCO2削減に踏み出さねばならない。

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