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REUTERS/Arnd Wiegmann

2019年、ビル・ゲイツが語った、読書、教育、経済のこと

By Kohei Fukuda

たくさんの本を読むことでだけ、得られることがある――。

次世代のビジネスパーソンのためのグローバルメディアQuartzは、あらゆる分野で「世界で次に起きること」を独自の方法で伝えてきました。

なかでも、ビル・ゲイツへの幾度にわたる単独インタビューは、ほかのメディアにはできない一番のキラーコンテンツです。

マイクロソフトの創業者であり、現在はビル&メリンダ・ゲイツ財団でグローバルの課題に取り組むゲイツの言葉には、次世代のビジネスパーソンが学ぶべき示唆が溢れています。今回は、ゲイツがQuartzだけに語った「頭の中」をご紹介します。

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ゲイツが語る「読書法」

たくさんの本を読んでいると、いろんな物事に類似点があることに気づきます。つまり、「これとこれは似ているな」と考えることで、物事をより簡単に理解できるのです。

例えば、チェス盤の上で、いろんな駒をランダムに置いて、「この配置を全て記憶しなさい」とチェス棋士に言っても不可能です。なぜなら、チェスの駒の配置というのは、どう物事が進展していくかの「論理」だからです。

(プロである棋士でさえ)、非論理的で、正しくない配置を見せられても、覚えられないのです。彼らの符号化のシステムは、それを吸い上げるようにはできていないのです。

これは、実は、私が大きな歴史事象が好きな理由の一つでもあります。

(原文:How Bill Gates remembers what he reads

大きな広いフレームワークがあれば、そこに全てを配置することができます。つまり、大きなタイムラインや地図が見えていれば、科学(的研究の)の枝分かれだったり、「何が今までに分かっていて、何がまだわかっていないのか」が見えてくるようになります。

徐々に増えていく知識というのは、比較的容易に維持できます。初めてローマについて学ぶときよりも、(長い歴史を経た)今の方が潤沢に学べるのは自明ですよね。

ちなみに、私がなぜ、ローマを引き合いにだしているのかというと、今エリザベス女王についての本を読んでいるからです。そこには、多くの異なる科学分野が登場します。◯◯学(ology)みたいなのが山ほどあるのです。

そうすると、無限にそういう学問が登場してくるようにも見えます。

が、そのうち「何が重要か」を知るためにはどうしたらいいのか。最初のうちはとても難しいですが、次第に、スコープが見えてきて、全てのピースがハマってくるはずです

そうなってくると、「この事象がここに属していて、逆に、これまで得た何の知識と矛盾しているのか」、「次は、ここを調べたら面白そうだ」と考えることが楽しくなるはずです。逆に、せっかく本を読んでも一致しないことがあれば、不満が貯まるものです。

ゲイツが語る「学びを得る瞬間」

自分が一番学びを得るタイミングは、何かについて、聞いたとき、読んだときというのが多いですが、もう一つは、自分が称賛している人から「何か」を見つけることもあります。

投資家のウォーレン・バフェットが、私にとって素晴らしいロールモデルなのは、彼が会社の評価額についてだけではなく、自身の人生を通して、良い事例を提供したり、教えたりすることをきちんと考えているからですね。

そして、彼は88歳になっても、自分の仕事を愛していますね。今も、週6日は働いていますよね。だからこそ、事例というのが、重要なのです。

(原文:Bill Gates on how he would educate himself if he were 15 years old

ゲイツが語る「教育」

私は、さまざまなオンライン講義をずっと見ています。

中には、もちろん単なるウィキペディアみたいなものもありますが、多くの場合は、いろんな概念を思い出させてくれますし、それは素晴らしいことです。

書籍からオンラインに移ったことで、講義を受けることは、簡単になりましたし、よりインタラクティブにもなりました。モチベーションのある学習者にとっては劇的な変化です。

今や多くの科学の分野は、とても複雑になっています。

(原文:Bill Gates on how he would educate himself if he were 15 years old

その分、あらゆる機関の研究をオンラインで互いに見つけ出すことができるようなりデータセットも潤沢に得られるようになりました。

だから、残っている課題は、「学習を面白くする」こと。子どもたちに「あ、XとYについてもっと知りたいな」「X軸とY軸でグラフを作るのはワクワクする」と思わせることです。

しかし、これには抽象的な思考が必要なので、多くの生徒は「他の生徒はできるけど、僕にはできない」と考えてしまい、高校でこうした学習を頑張ろうという意欲を持てないのです。

それが、高校を中退するのか、もしくは好奇心を満たして4年生大学へ進学し様々な分野に向かうという違いを生み出してしまい、キャリア形成や、将来の出会い、経済的な機会において、驚異的な差が生まれてしまうのです

ゲイツが語る「マクロ経済」

残念ながら、実際は、経済学者は、マクロ経済を理解していません

経済学は、あるインプットに対して、確実なアウトプットが期待できる物理学のようなものとは違います。

金利は通常に戻るのか、またどうして通常に戻らないのか?窓からボールを落として、「何が起こったの?」と物理学者に聞けば、その現象に理解を与えてくれるでしょうが、経済学者の場合、そのようにはいきません。

経済学者のジョン・メイナード・ケインズが「アニマル・スピリッツ」と呼んだように、経済には様々な要因が多すぎて、我々が予測することは不可能なのです

今日に至っても、人々は(リーマンショックのあった)2008年に何が起こったのかを言い争っています。

(原文:Bill Gates: “Economists don’t actually understand macroeconomics”

だったら尚更、将来を予想することは困難です。2008年に債権の格付けに関わった人たちを見てみてください。まったく、改革が行われていません。コンセンサスというものは生まれていないのです。

アメリカの10年債利回りの下落や、最近のドイツ銀行でのケース、30年債の下落も、マクロ経済では踏み込めない領域です。

ウォーレン・バフェットが言うように、あらゆる経済学の教科書を読み、マイナス金利について学ぼうとしても、参照先はありません。一方で、アメリカを抜きにすると、現在、世界の政府が抱える債務のほぼ半分はマイナス金利になっています。

これには明確な理由があります。それは、常に景気減退のリスクがあり、トレーディング戦争はそのリスクを高めているということです。実際、近年のマクロ経済の指標をみると、そのリスクはかなり高まっているといえます。

とはいえ、私はそのコントロール下には入るつもりはありません

というのも、私は、どのHIVの研究者を援助するか、どのマラリアの薬や、蚊を殺す新しい方法に出資するかを考えているからです。ゲイツ&メリンダ財団では、そうした世界経済に関する案件には手を出しません。

ゲイツが語る「目標設定法」

世界は非常に複雑に思えます。しかし、確実に強い足取りで前進しています。

我々は、例え話をすることが多いです。例えば、もしすべての地域が良い方向に3倍のスピードで進んだら、と。そして、それをあらゆる目標設定にあてはめてみるのです。

(原文:The Gates Foundation says that inequality stands in the way of progress

ゲイツが語る「社会主義」

「全ての物事を平等すべき」という常識的なアイデアは、いつの時代も魅力的に映ります。

アカデミズムも常に、社会主義的な志向をしてきました。確かに、社会主義は魅力的です。ただ、全くうまくいかないのです。

逆に、驚きを禁じ得ないのは、市場主義のシステムがうまくいき続けていることです。このシステムは一見、非効率にしか見えませんから。

会社にしろレストランにしろ、それぞれが別々に自分のビジネスを立ち上げる(市場経済の)方法なんて、非効率でしかないはずなんです。逆に、(社会主義的に)、それぞれの事業者に「事業を変えて、タイ料理を作ってくれ」と指導する方法だってあるわけですよね。

(原文:Bill Gates says socialism has “worked extremely poorly”

加えて、(市場経済において)、クリエイティブ・ディストラクション(創造的破壊)が、うまくいっているのも驚くべきことです。

これもとてつもなく直感的なやり方です。何千人もの人々がそれぞれ別々により良い製品を作ろうと挑戦し、結果として価格のシグナルを通じて、資源を常に素晴らしい方法へと再配分するものなのですから。

特に、共産主義国家に馴染みの薄い世代の波の中では、見えにくいのかもしれませんが、実際に共産国家に住むのは本当に悲惨なことでした。だから、より資本のある西側諸国のシステムが先を行くことができたのです。

もう一つは、物事のコスト、そして、世界の資源は有限であるということを知らなければなりません。今、我々は裕福になったので、多くの人が、我々は無限に裕福だと考えているのかもしれませんが、そうではありません。

ゲイツが語る「アフリカの未来」

多くのアフリカの国々がシリアと同じ様な道を進むかもしれません。

人々は、シリアは農業の生産性が低かったために、国も不安定になっていったと言います。

同じことがアフリカにも言えます。アフリカでも、農業の生産性に問題を抱えそうな国が現れ始めており、このような国で、もし不安が高まれば、非常に恐ろしい結果になりかねません。

(原文:Bill Gates says climate change is a threat to development because it leads to war

ゲイツが語る「政府の役割」

気候変動や乳幼児死亡率といった問題は、世界の企業のCEOに解決を求めていくだけでは、解決できません。

私は、その責任を政府に求めていきたいのです。

市場経済は、多くのことに有効ではありますが、マラリアや気候変動については、政府が市場をコントロールしない限り、通用しません。多くの国は「企業を使って教育する」という選択をしていないのです。

なかには、「完全な外部委託でできるんじゃないか」と言う人もいますが、そんな方法を取っている国はないのです。

ヘルスケアは最も複雑な問題の1つで、仕組みを作って、一部を民間に委託している国もあります。

誰も「軍事を企業がやるべき」とは絶対に思わないでしょう。だからこそ、乳幼児死亡率を改善し、人々に教育の機会を与え、気候変動の問題を解決する上では、その主要な役割は、政府が果たすべきなのです。

(原文:Bill Gates on the limitations of corporate purpose


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