(前回のあらすじ:1573年夏、戦国時代に転生したオババとアメリッシュ。アバターとなった戦国時代の母娘を生かすため兵隊になる決意をした。鉄砲足軽隊として他の5人の仲間とともに古川久兵衛の配下に。彼らと共に密偵として小谷城へ向かう)
小谷城攻略に羽柴秀吉ったら、とても困ってた
夫でない、あるいは、恋人でさえない男と、フンニャカ、にゃんにゃんにゃ〜〜ん、という状況になっちまい・・・
「こらあ!」と、オババが烈火のごとく怒鳴ったんであります。
そりゃ、怖いです。声でかいし、おそらく声量はオババか織田信長かって、そんくらい大きい。
で、ま、なぜ、こうなったか?
もう、仁なき世界なんでありますよ。ほんと、ないから。
その前に、まずは小谷城に向かった話から。
浅井長政が住む小谷城は、山の中腹にあり攻略に難しい山城だったんだ。
居館もあった谷を守るように、出丸・金吾丸・大嶽城・月所丸・焼尾丸・福寿丸・山崎丸というふうに尾根に多くの砦が築かれていた。
小谷城歴史資料館にある図を見てみると、ちょっと様子がわかるかも。逆さVの字に砦が築かれている。
私たち5人は浪人の古川久兵衛とその妻である私、姑オババと使用人のトミとテンという名目で、まず横山城にはいった。
羽柴秀吉が前線基地としている横山城は、城というより砦に近く、私たちが到着した頃には、秀吉は浅井方の武将を寝返らせる算段に汗をかいているはずで、実際、これから起きる予定の『小谷城の戦い』でもっとも功績があったのは彼だった。
浅井家の家臣を籠絡(ろおらく)する工作。
つまり、秀吉の立場から話すと・・・
『羽柴秀吉です。無理してます。
お館さま、周辺の砦を守る武将をこっちへ寝がらせよと、いつも通りの無茶振り。家臣さんたちが浅井を裏切って簡単に寝返ってくれれば、苦労はありませんよ。
ちょっとした手土産を持って砦に行くだけで、けっこう、やばいです。
殺されても文句言えません。冷や汗かきながら行っています。
なにせ、戦国ですし、うちの殿、周囲みんな敵にまわしているんで。
かといって、殿に逆らうなんてできないです。ご存知ないかもしれないですが、信長公、失敗すると、かなり恐ろしいです。
鉄拳とんできます』
よくまあ、こんな山に城や砦を築いたってほど、深い山に沿って砦があって、まさしく天然の要塞。
昔の浅井家、かなり力のあった戦国大名だと理解できる。それこそ、新興勢力の織田なんかより、過去にはよほど力があったんだろう。
「この砦から2時間くらいで小谷城だよ、オババ」
囁き声でオババに言った。オババは汗を拭き、それから砦をながめた。
「2時間か。この夏の暑さのなか2時間か、水の補給が必要だな、熱中症になる」
「なあ」
私たちの頭である久兵衛が、また肩を抱いてきた。
こいつ、前から思っているが、とっても馴れ馴れしい。ときに馴れ馴れしいを通りこしてるから。そして、それが嫌味にならないから困るんだ。
「い、いちじ、なんとか。ねっっちゅとか、なんとか。何の話だ」
「ええい。肩を離さんか」と、オババが手を払った。
久兵衛は目を丸く大きく開けると、それから、ガハハってな顔で笑った。
この時代にいて気づいたことは、私が思っていた以上に戦国時代の男も女も単純で、いっそ男女間の距離が近いってこと。
庶民しか会ってないので、上のほうがどうなってるかなんて、実際のところわからないけど。
ただ、死が常に身近であって、みな刹那に生きていた。
だって、情報が少なく、ほとんどの人は幼いころから働き、学校で勉強するわけじゃない。
例えば現代ならgoogle検索やYahoo検索すれば、学校がなくても自宅が図書館になって、なんでも知る事ができるけど。
ここの人たちには無理。デモクラシーなんて、誰も聞いたことのない階級社会で、でも、その階級も案外と敷居が低く、いろんな意味で自由な時代だった。
戦国時代は夜も戦い
その日は秀吉が管理する横山城で過ごし、翌日に小谷城へ行くという予定で、簡易的な場所で野営した。
昼間、慣れない船に長時間ゆられ、そこから半日歩いて来たから、もう、疲れがたまって、そりゃ熟睡であります。
そして未明、奴がきたんだ!
人って、心から驚いたとき声がでない。
凍りついてしまい、手も足もでない。確かに体は20歳だけど意識は私だ。この時代にきて、このゆるゆるの風紀を見知って、仲間のヨシだって速攻で妊娠か?って時代に予想はできた。
いやもうね。予想と現実のこの乖離(かいり)のすさまじさ。
私はそんなにウブか。
若いって言われりゃ、嬉しいけど、しかし、これはない。
おまけに、風呂に入ってないから臭い!
川で水洗いするくらいだから、服も体も臭い。
夏だから、蚊も多いし、野宿であって山のなか真っ暗闇。
でもね、面白いことに夜目がきくようになるから。
で、いきなり覆いかぶさってきた男に、
とりあえず「もしもし」って言ってみた。
どうも、かなり興奮なさっているようで聞こえてらっしゃらない。
「もしもし」って言いながら、今度は後頭部あたりをつついてみた。
「なんだ」
顔が笑っている。
久兵衛よ、ほんと、おまえ節操がないな。
「あの、よろしければですが」
「なんだい」
「あ、あの、少し落ち着かれてはいかが、かと」
と、言った時だった。
「こらあ!」
オババが大音声を発したんだ。
だから言ったじゃないかって、たいてい、後で言っても無駄だけど。あえて言いたい。だから言ってないけど、言ったじゃないか。
オババは姑だぞ。そしてな、とても過剰な人なんだ、いろいろな意味でな。ま、知らないだろうけど、いっぺん、過去のディズニーオタクシリーズ読んできな。
で、結果として、こうなった。
久兵衛、いきなりオババにボコボコにされた。
たぶん戦国武将なんだから強いと思うけど、手をださなかった。
だから、言ったじゃないか。
ポリポリ。
これで後から「アメも悪い。すきがあった!」なんて怒られるんだからな。
きっと、怒る。
オババの愛情は、孫>息子>・・・私と自分の夫だからな。
いっそ、オババを襲えよ、久兵衛。
で、その翌日。
目の当たりに青あざをつくった久兵衛の顔を、トミもテンも私も見なかったことにした。
オババだけが睨んでいた。
朝陽が昇り、木々の間から日差しが斜めに差し込み、小鳥が泣き、そして、久兵衛はいきなり、頭を下げた。
「すまん。2度とせん」
「まあ、よい!」と、オババが言った。
どっちが上じゃ。
オババの良いところは根に持つ事がないところだけど、しかし、今回は少し根にもってる。
それは、私の危機というより、大事な息子の嫁になにをって気持ちだろう。厳密にはマチは嫁でさえないが。
まあ、ともかく、私たちは小谷城へと向かった。
横山城から7キロくらいの距離、おそらく2時間ほど歩けば到着できる。
「アメよ」
オババが睨んでる。
いいかい、私のせいじゃないから。こういうのセクハラとモラハラが一昼夜で2度くることだから。
「隙をつくるな!」
ほら、やっぱり、怒ってる。
だから、言ったじゃないか。
言ってないけど・・・
・・・つづく
高速ネタでコメント、本当にありがとうございます。
前回のブログで、私の高速道路運転につきまして、コメント読ませていただき、おもいっきり笑いました。
皆さまのおっしゃりたいこと、わかっております。
もうね高速ネタは家族の語り草になっているんだから。
そんな高速ネタでコメントいただいた方、まとめてお返事したくなりました。
では高速ネタコメント、一挙公開!
3回連続10cm (id:sankairenzoku10cm)さん
アメ様の高速道路合流問題、懐かしいですね。その後少しは上達されましたか?
答え:そのように簡単にものごとが解決されては、人生、楽しみがなくなります。きっぱり!
苦い唾。背中を流れる嫌な汗。どちらも高速の合流で経験したんでしょうね(´▽`)
答え:冷や汗どころじゃない緊張であります。じっくり疲れます。1日寝込みます。そして、私は20年以上ゴールド免許。ふふふ・・・
首都高とかさ、高速道路とか、アメさんにピッタリの時間帯があります。『真夜中』です。さすがの大都会も、夜中は車がとても少なかったっすよ。じゃ、そゆことで、アメさんが遠出するときの移動は真夜中決定!!
答え:良い子は真夜中に寝ています。
首都高の合流は特に怖いですよね(;'∀')
答え:そうなんです。もう度胸試しの段階になってます。ほら、あの、小さいころに友人なんかと行った、お墓探検レベルです。
歴史ドラマですね〜高速のるの、私もコワイです〜💦
答え:お仲間だあ。握手、握手!
合流www 首都高で運転したことはないですが むかーしむかし海外で運転して 事故した記憶がありますw
答え:米国の高速を車で走ると、助手席でも冷や汗かきます。誰も私にハンドルを渡しません。正解です。
都会の高速道路って入る車と出る車が一緒になるとこあるよね 信じられない
答え:え? ほんとに? それは知らないです。アカン、そこまで難易度が高くなると運転できないナリ。
タコスカ (id:kefugahi)さん
アレはなんだったか…。思い出せないがカヌーの体験みたいのをやりました。皆が要領よくやる中くるくるとその場で回るどんくさい男。いたたまれず消えてしまいたい。二度とカヌーやるかと誓った。半泣きになってきた。
答え:そういう同じ思い、小さ時からなんどもしてきたんで、お仲間です。高速、乗れますか?
船の上でアワアワしてる光景が目に浮かびますw車も怖いけど水の上ってさらに怖い٩(๑º∀º๑)وファイトー
答え:ふふふ、高速合流時の私の光景をお目にかけたい。ある友は息をつめてました。降りたあと、彼女、青ざめてましたが、なにも言いませんでした。言葉がないってことでしょうか。おそらく、彼女がファイトと言わないことだけは知っています。
登場人物
オババ:私の姑。カネという1573年農民の40代のアバターとして戦国時代に転生
私:アメリッシュ。マチという1573年農民の20代のアバターとして戦国時代に転生
トミ:1573年に生きる農民生まれ。明智光秀に仕える鉄砲足軽ホ隊の頭
ハマ:13歳の子ども鉄砲足軽ホ隊
カズ:心優しく大人しい鉄砲足軽ホ隊。19歳
ヨシ:貧しい元士族の織田に滅ぼされた家の娘。鉄砲足軽ホ隊
テン:ナイフ剣技に優れた美しい謎の女。鉄砲足軽ホ隊
古川久兵衛:足軽小頭(鉄砲足軽隊小頭)。鉄砲足軽ホ隊を配下にした明智光秀の家来
*内容は歴史的事実を元にしたフィクションです。
*歴史上の登場人物の年齢については不詳なことが多く、一般的に流通している年齢などで書いています。
*歴史的内容については、一応、持っている資料などで確認していますが、間違っていましたらごめんなさい。
参考資料:#『信長公記』太田牛一著#『日本史』ルイス・フロイス著#『惟任退治記』大村由己著#『軍事の日本史』本郷和人著#『黄金の日本史』加藤廣著#『日本史のツボ』本郷和人著#『歴史の見かた』和歌森太郎著#『村上海賊の娘』和田竜著#『信長』坂口安吾著#『日本の歴史』杉山博著#『雑兵足軽たちの戦い』東郷隆著#『骨が語る日本史』鈴木尚著(馬場悠男解説)#『夜這いの民俗学』赤松啓介著ほか多数
NHK大河ドラマ『麒麟がくる』
麒麟とは、中国神話にでてくる聖なる獣だそうです。
顔は龍、体は鹿、牛の尾と馬のひづめを持ち、体全体を鱗におおわれ、体長は5メートル。水陸両用ってことでしょうか。1000年生きるそうです。
『十二国記』小野不由美著にも出てくる麒麟と同じで、この霊獣は非常に優しく、足元の虫さえも殺すことができないそうです。