~国会決議見送りに関する経過報告~
   公益財団法人文字・活字文化推進機構

 拝啓  年末を迎え、ご多忙のことと存じます。
 2020年学校図書館年に関する国会決議は、一部政党の反対により
国会提出が見送られました。断腸の思いで経過と結果についてご報告
申し上げます。
 学校図書館議員連盟は臨時国会における国会提出・採択を目指して、
各会派と決議文面の調整を進めてまいりました。そして12月第一週
にも提出方針でいた矢先「日本維新の会」から決議案提出に反対する
ことが伝えられ、決議案提出の道は絶たれました。当機構に伝えられた
反対理由は「学校司書の配置・促進は公務員の増加となる」「学校図書館」
は不要であること」というものでした。
 当機構は、12月4日、懇意にしている大阪府議会議員・松浪健太郎
日本維新の会・元衆議院議員にご相談したところ、浦野靖人政務調査会
代行を紹介していただきました。当機構の肥田美代子理事長は、同日、浦野
政調代行に「あと1日が勝負」であり、浦野先生の英断をお願いする旨の
お手紙を差し上げました。これに対する見解は、日本維新の会からは示され
ないまま、2019年臨時国会は12月9日閉会しました。
 当機構は、日本維新の会の反対理由を確認するため、12月9日、特定
記録で「学校図書館年国会決議に関する件について浦野氏に送付いたしました。
 それに対する回答が、12月12日付で着信しましたので、賛同団体間で
情報を共有するため原文のままお送りします。地域活動の参考にご活用下さい。
 以上、経過と結果についてご報告申し上げます。

~学校図書館年に関する決議案~
 学校図書館は、学校教育の基礎的な設備であり、読書や学習などの
諸活動において重要な役割を果たしている。われわれは、子どもの
読書活動が、「言葉を学び、感性を磨き、表現力を高め、想像力を
豊かなものにし、人生をより深く生きる力を身に付けていく上で
欠くことのできないものである」ことに鑑み、これまでも2000年
「子ども読書念」、2010年「国民読書年」に関する決議をそれぞれ
衆参両院で採択するとともに、子どもの読書活動の推進に関する法律や
文字・活字文化振興法を制定し、すべての子どもがあらゆる機会と
あらゆる場所において自主的に読書活動を行うことができるよう、
積極的にそのための環境整備の推進に努めてきたところである。こうした
もとで、関係者の努力によって、学校図書館の活用や読書活動が盛んに
なりつつある。われわれにはこの機運をさらに後押しする義務がある。
 そのためにわれわれは、グローバル化と人口知能が進展する21世紀に
おいて学校図書館の活用教育を学校教育の核として位置づけ、2020年を
新たに「学校図書館年」として定め、学校司書の配置促進と専任化など
学校図書館のさらなる拡充に向けて、地方自治体の理解と協力のもと、
国をあげて不断の努力を積み重ねることをここに宣言する。

~日本維新の会:国会決議案反対理由~
 近年、日本の児童・生徒たちの読解力を中心とした国語の能力低下が
叫ばれているなか、学校における国語教育を充実させていくうえで、学校
図書館は重要な設備であることは疑いがなく、一概に不要であるとは
考えておりません。しかし学校図書館がお役割を十分に果たしうる環境
体制が整えられなければ無用の長物になりかねません。わけても公立学校
の図書館は税金で運営・管理されており、機能面だけでなく合理性も強く
求められます。教育のための設備とはいえ、無駄が認められないのは他の
公共施設と何ら変わりありません。
 そうした観点から、日本維新の会は、決議案にある「学校司書の配置
促進と専任化など学校図書館のさらなる拡充」には同意できません。公立
学校の図書館であれば、やみくもに公務員の数を増やすことにつながり
かねないと考えるからです。また図書館の司書は近い将来、AIにとって
代わられる業務と予想されます。たとえ過渡的措置としても。司書の配置を
促進すれば、図書館の機能が充実化され、子供たちへの国語教育に大きく
寄与するという発想が短絡的であり、時代にそぐわないものであると考え
ます。人員を増強すれば、教育の質が向上するというものではありません。
我が党は真に子供たちの国語教育の強化に資する、学校図書館の抜本的
改革を追及してまいります。最後に、過去に国会で採択された「子ども
読書年に関する決議」「国民読書年に関する決議」とは異なり、学校
図書館に特化した決議案であることの説明を事前に受けていなかったうえ、
党に対しても一切アプローチがなく唐突に賛成してほしい旨要請された
という経緯があったことを申し添えておきます。
 ※ 図書館司書の業務は将来AIに取って変わられる? 講談社α新書「仕事
消滅 AIの時代を生き抜くために」の中では将来AIにとってかわられる仕事
として図書館のサービススタッフが例示されています(31p)この記述を
真に受けたのでしょうか。しかし司書の主たる仕事であるレファレンスなど
をロボットに任せることができると本気で考えているのでしょうか。 
 人員を増強すれば教育の質が向上するというものではない? そもそも学校
司書が配置もされていない学校が多数存在しているのですから、0をなくす
ことは「増強」にあたりません。