●EPISODE4の裏側に迫る!
セガゲームスがPCおよびプレイステーション Vitaでサービス中の『ファンタシースターオンライン2』の大型アップデート“Reborn:EPISODE4”が2016年1月27日に実施される。この実施を前に開発陣を直撃。インタビューを行った。
2015年12月23日より始まった、東京、名古屋、福岡、札幌、大阪の5都市を巡りつつゲームの境界を超える『ファンタシースターオンライン2』(以下、『PSO2』)のオフラインイベントも、すでに福岡会場まで終了。各会場で“EPISODE4”の新情報も飛び出してアークスたちの妄想が加速するなか、開発陣の時間が確保できたということで、発表を受けて気になったアレやコレを質問してきたのだ。
──2015年12月23日のファンタシースター感謝祭2016東京会場では、アークスグランプリで白熱した戦いがくり広げられました。想定外のクリアタイムを目の当たりにした感想などを教えてください。
酒井智史氏(以下、酒井) 今回は大会を前にかなり練習ができる環境だったので、クリアタイムをどのチームも詰めていましたね。想定は3分くらいだったのですが、クリアタイムが2分を切っていて想定の倍くらいのタイムでした。
中村圭介氏(以下、中村) 開発陣がプレイしているよりもぜんぜん速いと言いますか、「これくらい上回るかな」という予想をさらに上回ってくるところが、やはりスゴいなと思います。
濱崎大輝氏(以下、濱崎) プレイスキルもありますが、戦略によってタイムを短縮したのも大きいと思います。いまよりも難しい、プレイスキルをフルに活かせるクエストもご用意できるのですが、さらに難度が上がると「どういうクエストが配信されたのかな?」と試したときに、「これ、ぜんぜんクリアできないなあ」と言ってスゴさを体感する前にクエストをやめてしまうこともあるので、「どこに落とすか」といった難度調整の難しさというものはあります。今回の開発の想定を上回ったという結果は、大会に参加される皆さんの熱というか、そういうところが反映されたものだと感じました。1回目にもかかわらず、これだけやり込んでいただけるというのはありがたいです。
陳智政氏(以下、陳) クリアタイムの速いなかでも、クラス編成などがチームによっていろいろと違うのがおもしろかったですね。
濱崎 チームによって差異が出ているところは、調整をしている側からすると喜ばしいというか、ありがたいところでした。
陳 ドラマもけっこうありましたしね。
中村 逆転劇はスゴかったですね。
濱崎 まさかの番狂わせが起きましたからね。
中村 最後まで諦めずに戦ったことで逆転できたところが圧巻でした。
──どのチームもブレイバーが、メインの戦力に比較的なっている感じでしたね。
濱崎 フォトンアーツのグレンテッセンがタイムアタック系のクエストでは取り回ししやすいというのがありますね。ブレイバーを選ばれる方が比較的多いだろうというのは想定していました。バウンサーやハンターがもう少し選ばれると思っていたのですが、タイムを極めるとなると「ブレイバーのほうが速い」と感じて選ばれたのかなと思っています。
●EPISODE4の新要素について~地球・東京~
──新惑星が地球、そして新フィールドが東京とのアナウンスには驚かされました。感謝祭でいざ発表されてファンの反応を直に見た感想はどんな感じでしたか?
酒井 もちろんその日いちばんの反響だったのですが、想像していたよりも、「ワー」とか「スゴい!」という反応よりは戸惑いのほうが多かった気がしましたね。でも、もともと賛否両論にはなるだろうなとは思っていました。
──想定の範囲内の反応だったと。
濱崎 「こんな感じか」と終わられるのでなく、「これでどうなるんだろう!?」というような、議論が行われるような反応があったということで、試みとしては成功したのかなと思います。あとは実際に体験していただいて、その不安を払拭していただき、「期待を超えていたな」という感想が得られればいいなと。反応が楽しみです。
酒井 不安に思っている方もプレイしてもらえればわかってもらえると思います。
陳 『PSO2es』のほうもウェポノイドの要素を動画で紹介したことについていろいろとコメントをいただいているので、反響があったなと思います。
中村 反響という意味では東京を発表したときのものがいちばん大きかったと思います。地球が出たときのどよめきにも近い反応は印象的でした。
──コンセプトとして、まず惑星が地球、フィールドが東京ということは、アニメとの関連ありきでの決定だったのでしょうか? その経緯などを教えてください。
酒井 もともと『PSO2』の企画段階のときから地球という話は出ていました。ただ、いきなり地球を舞台として出すというのは戸惑いが大きすぎるだろうと思われるので、EPISODE3までをひと通りやったうえで、地球が登場するという流れがいいのではないのかなというのがひとつ。もうひとつは『PSO2』を3年半やってきて、新しくこのタイミングで「『ファンタシースター』って、こういうものだよね」と思っている慣れのようなものを、その根本から“ブチ壊そう”と考えました。イメージを一新する部分がアニメやプレイステーション4版ですね。一旦リセット的なことをするのがプレイステーション4版の新規ユーザーにとってもプラスになるのではないか、というところで新しいイメージを出したかったという思いがあります。
──そんなに前から地球という案は出ていたのですね。
酒井 どちらが先かという話よりは、いっしょに考えていました。
──構想とアニメのタイミングがちょうどいいタイミングだったのですね。
酒井 ここがいちばん盛り上がるというか、地球にすることによって意義があるタイミングというのはあります。現実の地球を登場させるのは「ほかのオンラインゲームではなく、『ファンタシースター』じゃないとできない」と思っていましたので、そこが根幹にあります。オンリーワンのRPGを目指すにあたっても、ここで登場させるのがいちばんいいと思い、今回実装しました。
──EPISODE4の惑星や新フィールドを決めるときに、ほかにボツになった候補地などはありましたか?
酒井 ないですね。東京と言うのは最初から決めてました。
──賛否両論がありそうな設定に心配や不安などは?
酒井 ユーザーさんが不安になるとは思いますね。だけど、それは先ほども言いましたが、プレイしてもらえればわかることなのでそんなに気にしていません。これがおもしろいと思って作っていますし、『ファンタシースター』じゃないとできない状況ですし、こういうことをやることこそがやはり『ファンタシースター』ということの意義であると思っています。
──どんどん挑戦して“ブチ壊して”チャレンジしていくのが『ファンタシースター』ということなんですね。
酒井 はい(笑)。
濱崎 なんでもありっていうのが『ファンタシースター』のいいところですからね。
酒井 「バカじゃない?」と言われるところとかね(笑)。好き好んでバカをやっているというくらいです。
──シリーズディレクターの木村裕也氏も、この情報の公開を待ち望んでいたとおっしゃっていました。
酒井 アニメの件もあってEPISODE4の舞台が地球だとバレないようにしていたのが、やっと発表できましたからね。
──地球というのは、実際の地球と同じような環境なのですか?
酒井 世界設定として言えば、少し違います。未来の地球ではあるのですが、新しいエーテル通信という通信手段が普及している世界になります。アニメは2027年が舞台なのですが、EPISODE4は2028年が舞台で、これらは同じ世界の話になります。また、アニメの中でプレイされている『PSO2』というゲームは、いま皆さんがプレイしている『PSO2』とは少し違うものなんです。
──少し違うというと?
酒井 それは言えません(笑)。“同じものではない”です。
──では東京にいる幻創種は人々の恐れや想像が具現化したエネミーとのことですが、皆さんにとっての幻創種は何ですか?
酒井 それ言ったらネタバレになりそうで何も言えません(笑)。
濱崎 お金は怖いですよね。いろいろなトラブルもあるので……。
──東京には人型のエネミーとかもいましたよね。
中村 あれは、ドスを持っていたり銃を持っていたりするので、ただのゾンビではないんですよ。
濱崎 反社会的な……ゾンビみたいな。
中村 ただでさえ怖いゾンビなのに、そのゾンビになっているのがあっち系の人なので余計怖いという。名前はドスゾンビとチャカゾンビなので……。
酒井 幻創種には自分の妄想が具現化されている部分があります。
濱崎 電車のエネミー“トレイン・ギドラン”がそうですね。
酒井 「電車と戦えたらスゴいだろうな」と思い、考えました。
中村 具現化されるのは恐れなどだけではなく、想像や妄想も具現化するんです。
酒井 “妄想が加速するRPG”なので。大きな胸の女性が街を徘徊するとか……。
──それは陳さんが具現化させたエネミーということですね?
陳 大きいジェネとかですか(笑)。それはなかなかインパクトあるかも!
──超時空エネミーとしての実装待ったなしですね!? そういえば、ラッピーなど、ほかのエネミーは東京に出現するのですか?
濱崎 超時空は時空を超えられる存在なので、ラッピーやニャウも出現します。
──となるとMr.アンブラも出現するのでしょうか?
中村 Mr.アンブラは東京には出現しませんが、超時空エネミーなのでいずれ地球にも登場するかもしれません。
──ガル・グリフォンなど、期間限定クエストで出現したエネミーはどうでしょう?
濱崎 ガル・グリフォンも同様に今回は出現しませんが、今後登場することはあるかもしれませんね。
──T-REX、戦車、ロードローラーなど、東京に出現するエネミーには個性的なものが多いのですが、泣く泣くボツになったエネミー案などはありますか?
中村 ありますが、のちのち出るかもしれないので迂闊に言えないです(笑)。
──実現がきびしそうなものなどからは?
濱崎 実現がきびしいエネミーもけっこう実装してますからね(笑)。戦車やヘリは挑戦したエネミーだと思います。
酒井 「エネミーに顔がなくて大丈夫かな」と思って実装しましたからね。
濱崎 完全に物質のエネミーは本物に近いものもあるので、そういうところは攻めているかなというところはあります。「わりと実装できそう」と思っていたものは、実装していると思います。
中村 生物・非生物など、いくつかバリエーションを持たせています。重機の候補の中からロードローラーを選んだのでほかの重機はそういう意味ではボツになっていますが、ひと通りやりたいことはやれたのかなと思います。
濱崎 ちなみに、ロードローラーは中村が入れたいと言ったエネミーです。
──ロードローラーは会場でウケてましたね。
中村 あの重量感あるものが空からでてきたら怖いよねって感じで実装しました(笑)。
酒井 そこはショベルカーと思いましたが、ロードローラーになった理由は僕も知りません。
中村 ロードローラーであることが大事だったんです!
濱崎 ……リスペクトですよね?
中村 うん、まあ……(笑)。幻創種は、本体の一部に“想像しきれていない部分”があって、そこに恐ろしい想像が混ざることで“幻創攻撃”という必殺技を使ってきますが、ロードローラーは巨大なショベルを出してアスファルトをひっくり返す攻撃も使ってきますから、大丈夫です(笑)。
──中村さんのイチオシはロードローラーと(笑)。
中村 T-REXもけっこう質感などこだわって作りましたね。恐竜というだけでも怖いのに、恐れの具現化ということで、「このエネミーがこういう攻撃をしてきたら怖いよね」というものにどんなものがあるかを考え、開発でも時間をかけて相談しました。
濱崎 T-REXは見栄えもしますね。
酒井 ほかの惑星で出現しそうなものは意図的に外してあります。あえて現実に近いデザインにしていると言いますか、リアリティのあるものが予想できない攻撃をしてくるところにおもしろみを感じていただければ。
中村 基本的に架空のエネミーを出していないんです。たとえば、地球で怖いものでも妖怪など登場させてしまうと、黒の民とモチーフが似てしまいます。今回は現実の地球というのがモチーフで、そこにいる人々が実際に想像する怖いものというものをおもに選んでいます。
酒井 「こういうものと戦えたらワクワクするんじゃないかな」というのがキーになっています。
中村 戦車に砲塔を向けられたら怖いですが、それだけではなく、「戦車がしてくる想像を超えた攻撃って何だろう?」とか、シチュエーションを含めて現実的なものではあるんですが、「こんなことをしてきたら悪夢だよね」というものも取り入れています。幻創種は何者かが地球人の想像を具現化しているのですが、人々が正確に想像しきれていない部分があり、その部分がいろいろな形をとる可能性を持っています。
酒井 戦車やヘリは実物ではないということです。想像が具現化したものなので、実際の戦車やヘリに何かが取り憑いてあの形になっているわけではないのです。
──今回は第1フィールドの東京が実装されます。再現するのに苦労した部分とかありますか?
中村 現実の東京がモチーフなので、われわれが知っている場所ですから、どんなものがあったり、それがどんな大きさのものかというのを体感で知っているわけです。そこをゲームに落とし込むときにどれくらいリアルに寄せてどれくらいゲーム的にするかというところは調整に苦労しました。ゲームのカメラの問題もあって、画面で見たときに小さく見えてしまうようなところがあるんです。
──たとえば?
中村 たとえば、車線の上を歩いていたとき「なんか車線の幅、狭くない?」みたいな話が挙がりました。実際のサイズでいうとそれで正しいんですが、ゲームのカメラで上から俯瞰で見ると、ちょっと狭いような気がしてしまうと。開発が進んでクルマを道路に置くようになったらサイズ感がよくわかるようになったんです。クルマのサイズとプレイヤーの身長を比べたときに、「あ、車線の幅ってこれでいいんだ」というのがわかったりなど、試行錯誤しながらサイズ感の表現に苦労しました。
酒井 映像だけを観て「ちょっと小さいのでは?」と言われる方もいらっしゃいますが、実際にプレイしてもらったらわかってもらえるかなと思っています。じつは若干大きくしている部分もあります。
中村 エネミーも少し小さく感じるところもあって。原寸のサイズで作ってみたら、「これちょっと小さくない?」という話になりました。実際原寸よりちょっと大きく作ることで、われわれがイメージする大きさに見えます。現実味のあるエネミーと戦うという、いままでにないものを作るうえでは、そのあたりを本物に近い形でゲーム内に落とし込むのがたいへんでした。
酒井 トレイン・ギドランはとくにたいへんでした。そのままの電車のサイズで作ると戦うのが辛いぐらいものすごく大きくなってしまいます。ただ、リアルな電車の形ですごく小さく見えてしまうとそれだけで意味がなくなってしまう。できるかぎり実寸に近い形でゲームになる大きさがどのあたりかを調整しました。
中村 ゲームの遊びやすさやボスのことを考えると、本当はもう少し小さいほうがいいんですよ。でも、電車が小さいとウソっぽさが出てしまうので、遊びやすさとの兼ね合いの調整をかなり時間をかけてやりましたね。
──作り込んである東京ですが、ここは見てほしいというところは?
酒井 全部です(笑)。
中村 具体的にコレというものではなくて、皆さんのなかにあるなんとなくのイメージの東京らしさが再現できたと思います。
──フィールド内に隠しリリーパみたいなものが仕込まれていたりとかはあるのでしょうか?
中村 あのエネミーが具現化したかというのが、フィールドのなかに小ネタとして仕込んであります。「ああ、これだからトレイン・ギドランが具現化したんだ」というのがわかるようなネタになっています。そういうのも、ちょっと気にして探してみてください。
濱崎 ヒントは少し上のあたりです。見上げてみると「あ、アレだ」みたいな(笑)。
──フィールドでは歌入りのBGMが流れるのも注目ですね。
中村 東京のBGMをどうするかの打ち合わせをするときに、今回EPISODE4のテーマが”新体験”だというをサウンドディレクターの小林秀聡に伝えたら、「サウンドも新しいことやりたいと思っていたんですよ!」とすぐに理解してくれました。そこから“シンパシー”という、楽曲を小節ごとに管理して状況に合わせて自動的に曲を生成するようなシステムを使って、初の「“ボーカルを入れた楽曲”を作りたい」という提案が小林からありました。
──それは複雑な仕組みになりそうですね。
中村 提案を聞いて「シンパシーに乗せると歌詞がランダムになって違和感があるのでは?」と心配したんです。でも、そこは仕組みや歌詞の作り方に工夫があって、新しい雰囲気のフィールド曲として、無限にボーカル入りの曲が流れる仕組みができました。すでにPVで東京の昼と夜のBGMが公開されていますが、必ずしもあれと同じ通りに歌詞が流れるわけではなく、プレイするたびに組み変わるようになっています。
──小節ごとに繋がれていくのですか?
中村 歌詞は2小節ごとに組み替えられます。あと、戦闘状態か非戦闘状態かでも雰囲気が変わりますので、ぜひ体感してみてください。
──昼と夜でも日本語と英語に楽曲が変わりますよね。
中村 はい、夜は福山光晴が作曲した英語ボーカル曲で、めちゃくちゃアツい曲です。こちらも歌詞の組み替えがありますが、英語の歌詞なので注意して聴いてください(笑)。
酒井 フィールド曲に関しては小林にすべて任せています。PVを見て初めて聴いたくらい信頼しています。
中村 まったくリテイクもなかったですね。基本的に歌入りの楽曲は酒井が、フィールドBGMは開発ディレクターが監修していますが、今回初めてフィールドBGMに歌入りの曲が流れることになったので、どっちが監修するか悩みました(笑)。
酒井 「歌が入る」ということだけ事前には聞いていましたけどね。フィールドのBGMは基本的に任せていますが、メインテーマ曲はものすごいチェックします。小林が怒るくらいね(笑)。