1月末、(少なくとも自分の)twitter のTLが騒がしくなっていました。
遂に異世界への転生すら果たすのか、島耕作よ(詠嘆)といった心持ちでしたが、改めて考えてみると、異世界転生ものと『島耕作』シリーズには高い親和性があるかもしれないと思ったりもします。
異世界もの、自分もそこまで多くは読んでいないかとは思いますが、幾つか読んだ傾向として、ハーレム的な状況に自然となっている、というのは感じられます。*1『島耕作』も、気が付けば美女と懇ろな関係になったりして、そして偶然にもその女性がライバル会社の重要なポジションに立っていたりして、取引を有利に進められる情報を得たりする訳でして。
きっと異世界でも島耕作はトントン拍子に出世して、まずは叙爵されて「男爵 島耕作」あたりになり、「子爵 島耕作」「伯爵 島耕作」「侯爵 島耕作」「公爵 島耕作」と順調に爵位を上げていき、最後は「大公 島耕作」あたりに落ち着くのだろうか、...とか考えざるを得ない。いや、騎士団長ということはその1つ上だと準男爵からでしょうかね。
まぁそれは置いといて、その後作画を担当するのが『拝み屋横丁顛末記』の宮本福助さんという発表も為されました。
掲載誌が「ZERO-SUM」である点と絵柄で考えれば、まぁ他には有り得ない納得の選出かなと思ったりしつつ、遂に本日、その第1話が掲載される「ZERO-SUM」2019年5月号が発売となりましたので、
さっそく買ってきました。٩( 'ω' )و
甲冑を身に纏い、凛々しく口を引き結びつつ剣を掲げる島耕作が印象的な表紙です。
ということで、ちょっと内容に触れつつ感想みたいなものを書いてみようかと。
(原案:弘兼憲史 漫画:宮本福助 協力:別府マコト『騎士団長 島耕作』「月刊コミックZERO-SUM」2019年5月号3ページ。)
冒頭の1コマです。何が起こっているか判らないまま眼前に広がる青空を見て、男は「なんだこれは」と考えます。これは大多数の読者の代弁でもあり、「こっちの台詞だ」と考えた方も少なからず存在することでしょう。
その後の島耕作の回想から、時間軸的には(というのも変な話ですが)『課長 島耕作』と『部長 島耕作』の間の時期であることが判ります。中沢社長に部長就任を打診され、自宅に戻り課長時代に思いを馳せつつ酒を飲んでいた筈が、気が付けば見たこともない場所で天を仰いでいた、という流れであることが描かれる。
その回想シーンで、トラックが走行しているコマが描かれています。おっ、これはもしや数多の転生者を異世界に送り出してきたトラックなのか!と思ったりした訳ですが、ページをめくるとそのトラックは何事もなかったかように島耕作の前を通り過ぎていきました。やはり島耕作ほどになれば、異世界に赴くにあたりトラックなど必要としないのかもしれません。
(同誌24ページ。)
そして医務室のような場所に運び込まれた島耕作の許を訪れた人物が2人。一人は入って早々に島耕作を怒鳴りつける、容貌・言動共に(現世)の福田部長と瓜二つの人物。そしてもう一人が、島耕作の容態を気遣う、島耕作の同期・樫村と同じ顔の人物です。
そしてカシム(樫村と同じ顔の人物の、異世界での名前)によって、島耕作が目覚めた場所がファーストターフ王国であり、シマやカシムはトマベチ王に仕える王国騎士団の一員であることが明かされる訳です。
(同誌25ページ。)
ファーストターフ(First Turf)、島耕作が勤めている会社「初芝」を英語にしたものですね。(^ω^)
と、ここで個人的に少し残念だったのは、樫村がおっさんのままだったことですね。
樫村は美女として異世界に転生して、島耕作の前に現れて欲しかったなと。
(`・ω・´)
樫村健三については既に皆さんご存知かとは思いますが、実は樫村は同性愛者でして、結婚して子供も設けることでその性嗜好は隠し続けているのですが、大学生の頃からずっと島耕作に想いを寄せている訳です。
樫村がその秘めた想いを島耕作に伝えた際、断られてしまう訳ではありますが、その後も同僚として、また友人として付き合いは続いていきます。しかしながら、出向先のフィリピンで一緒にゴルフをしていた際、島耕作を恨むテロリストの凶弾に倒れることになってしまうのです。
むしろ異世界に赴くにあたり、島耕作よりも境遇としては相応しい感があります。
そして前世とか異世界が題材となる場合、転生後の性別が変わるのはそれほど特殊な例ではない。名作『ぼくの地球を守って』の槐がそうですし、『蜘蛛ですが、なにか?』の大島叶多(カティア)もですね。あと、同じ「ZERO-SUM」で連載している『ボクラノキセキ』の主人公、皆見晴澄と準主役のひとり広木悠もそうですね。
なので、樫村が女性として転生していれば、島耕作も間髪入れず褥を共にしまたいろいろな展開が生まれたのではないか...とか考えてしまったりもする訳です。まぁ、これは単なる個人的願望に過ぎないので今後どういうふうに物語が進んでいくのか期待したいところです。
さて話を元に戻しますと、このあと島耕作と樫村(異世界の名前だと「シマ」に「カシム」ですが、元の名前で統一します)は街の巡回に出るのですが、そこで珍しい光景を目にします。
(同誌33ページ。)
果物を欲しがるスライムと、それを追い払おうとする店のおばちゃん。
そのやりとりを見ていた島耕作は、おばちゃんから果物を買って、そのスライムにあげます。因みにごく当たり前にお金を払い、リンゴの味を知っていたことから、島耕作が自分はずっとここで騎士として生きているらしい、ということを朧げに理解する。その演出が巧いですね。
そのやりとりの直後、近くでひったくりが発生します。
騎士の務めとして犯人を追う二人。程なく犯人を追い詰めるものの、逃げた男は盗んだ財布を何処かに隠したらしく、白を切ります。そして樫村は男を連行し、島耕作は財布の捜索を行うことにする訳です。
するとそこに、先程リンゴをあげたスライムがいるのです。付いてくるように訴えている(しかも喋る)。付いていった先には、盗まれた財布が。
しかしそれを受け取ろうとすると、スライムはその財布を自らの体内に取り込み、こんな言葉を島耕作に投げかけるのです。
私を満足
させてくれたら
この財布
渡してあげる
(同誌41ページ。)
お?これは... と、予感を感じさせてくれますね。そして、
(画像上:同誌43ページ。 画像下:同誌44ページ。)
人の形に変化したスライム。その姿は、もちろん大町久美子です。
島耕作の永遠の恋人にしてセレブレーションファックでもお馴染み、大町久美子です。
そして大町久美子の姿になったスライムは、島耕作を宿屋に連れ込む。
島耕作に覚悟を問う大町久美子。「私を満足させてくれたら」の意味を理解する島耕作。
(同誌48ページ。)
少なくとも自分は満足でした。
これでこそ『島耕作』だ、セレブレーションファックなのだと叫びたくなる、スライム初登場から15ページで閨を同じくする疾走感。
これは異世界転生ものでありながら、確かに『島耕作』なのだ...そんな感情が確かな実感を持って押し寄せてくる。
その後、島耕作は大町久美子から、あなたはこの世界に転生したのだ、前世の記憶を思い出して戸惑っているのだろうと言われます。何やら多くのことを知っていそうな、ミステリアスな雰囲気も醸し出している...かもしれません。そして「私と寝た男は出世する」とも(因みにその台詞を言うときは、典子ママの顔になっています)。
そして前世の記憶・知識をもって、この世界でも上を目指すことを決意して、第1話は終わります。
先程書いたように、個人的には樫村の描き方に残念さを感じつつも、全体としては島耕作だと思える内容だったかな、と。今後も期待して読んでみたいところです。
といったところで、本日はこのあたりにて。