※幡野広志さんへ相談を募集しています。専用フォーム（匿名可）からご応募ください。

1年ほど付き合っている同い年の彼がいます。付き合う前から仕事大好き人間でした。
楽しそうに仕事の話をする姿はカッコよく、がむしゃらに頑張る姿に惹かれました。
上昇志向が強く、業界内で名を上げたい、難しいかもしれないけどできることなら独立したいと話していました。

付き合い始めはまだ比較的時間がありましたので、週に2、3回は会っていました。
しかし今年の8月にあるプロジェクトが始まり文字通り目が回るほどの忙しさが続いています。全国を飛び回り朝6時から深夜0時頃まで土日休み問わず働いています。

過労死するんじゃないかとヒヤヒヤします。
私と知り合う前ですが過労で倒れた経験があります。（本人から聞きました）

5年前に父を亡くし、大切な人を失う辛さは想像以上に心を蝕み、受け入れるのに時間がかかったので余計に心配してしまいます。2人の時間がどんどん少なくなっています。

以前は忙しい中でもある程度の見通しが立ったそうですが今回はいつまで続くか分からない、来年度もっと忙しくなるのか落ち着いているのか見当がつかないと。会えるのも数時間で最近は月に2、3回ほど。

寂しい気待ちは負担にならないように可愛く伝えてみたり程々に抑えて、頑張ってるね応援してるよ等、励ましています。忙しい中でも1日1通でもLINEをくれたり休憩時間の5分で電話をくれたり少しでも時間を作ろうと努力してくれているのを感じます。

彼のことばかり考えていると寂しい気持ちに支配されて悲観的になってしまうので、会えない時間は友人や家族と過ごしたりしていますが彼と過ごす時間に勝るものはないのです。

完璧主義・理想主義で仕事も完璧にやりたいし私に寂しい思いや不満を感じさせたくないと言われました。先日初めて2回連続ドタキャンをされたときも「会いたかったなぁーでも仕事だし仕方ないよ。また隙間時間見つけて会おう」と明るく伝えましたが彼の中ではかなり罪の意識を感じたようです。

「仕事は完璧にしないといけない。失敗できないプレッシャーがすごい。◯◯（私）のことは好きだけどこのままでいいのか。明日の予定も急に変わるし◯日に会えるかもなどと無責任なことは言えない」

真面目な性格なのでいっぱいいっぱいなんだと思います。彼の言っていることも分かります。そして彼の仕事を理解し今後も付き合って行きたいのであれば、割り切ってそういうものだと受け入れて自分の時間を充実させる、寂しさに耐え切れないのであれば、仕事そこそこでもっと自分との時間を作ってくれる人と付き合えばいいのです。 話は簡単ですが選べません。苦しいです。

結婚してしまえば…と考えることもありますが今仕事で頭がいっぱいの彼に結婚を考える余裕はないでしょう。そして私自身も今の状況でこんなに寂しいのに1人の時間が多い2人暮らしを始めても大丈夫なのか？と思います。が、始めてしまえばなんとかなる！と思うときもあります。

金銭的な課題もあります。同棲話をもちかけましたが彼は実家の家賃を折半しており且つ生活費も入れています。同棲するとなると彼が親と話し合う必要があります。奨学金の返済もあります。また出張が多いため経費の立替が給与を上回ることもあり、親に助けてもらいながら回しているそうです。

自分から別れを切り出す勇気もなく、ドンと構える心もなく、現状にあっぷあっぷしています。いっそのこと嫌いになれたらいいのにと思う時もあります。でも彼を失いたくないのです。代わりの人はいないのです。くるしいです。

今までそれなりに恋愛をし、燃え上がるような恋もいずれトロ火になることを知っています。好きで好きでどうしようもなくても、いつか気持ちが落ち着いたり、時には嫌いになってしまうことも知っています。

ただ先が見えないことが不安なのでしょうか。真っ暗闇のトンネルの中にいるようです。

（匿名希望　28歳　女性）

なんだか大変な働き方をしている彼氏さんですね。彼も28歳ということですが、まぁ若いうちはそういう時期は誰でもあるかなぁという気はします。独立を考えているのならば尚更です。

彼の年収はご存知ですか？　付き合って一年ぐらいだと知らないかもしれませんが、彼の会社の名前で調べましょう、そして同業他社の年収も。結婚を前提にすすめるならば必須作業です、そしてこれは彼の収入に頼るということではなく、彼の金銭感覚を推察するためのものです。

残業代は出ていますか？　たぶん安い給与でサービス残業で働いているような気がするんです。彼氏さんが営業職で誰かの経費を自分が立て替えているという状況でもない限り、自分の給与を経費立て替えが上回る、ということはそうないとおもうんです。給料がそもそも安いか、そもそも営業職なら法人クレジットカードを持たされたり、事前に現金で渡しますよね。

そして、実家の家賃を折半して生活費も払いつつ、給与をこえた経費立て替えぶんを親に助けてもらっているというのは、金銭の収支感覚としてはどうでしょうか。ぼくはいいとはおもいません、あなたの彼も、彼の親も。

彼氏の月給が100万円ぐらいあって、実家が家賃80万円のタワーマンションで、経費立て替えが40万円をこえるという富豪パターンならまた違うけど、でも奨学金を返済しているというならそうじゃないでしょ。

業界内で名を上げたい、独立をしたいという気持ちはとてもよく分かりますが、ただのやりがい搾取にあっているのではないでしょうか？「うちの業界はこれが普通だから」って彼は自分にいい聞かせながら。年収が低いのも仕方ないかもしれませんが、その働き方にぼくは疑問を感じます。

だいたい過去に過労で倒れているのに、いまでもそこまで働かせる会社ってどうですか。すくなくとも会社は彼のこと大切にはしていないですよ。重要なポジションでも唯一無二の存在でもありません、本当に大切ならそれなりの扱いをします。

ぼくがなにをいいたいかというと、彼はお金のことをあまり考えられていないのではないでしょうか。自分の時間を拘束されて、時間を売るという感覚もないのではないのでしょうか。

彼がもしも正社員で低賃金サービス残業という状態ならば、残業をなるべく避けて命を守りつつ、給料を時給換算したときの単価を上げ、いい仕事をするために睡眠や休憩をとれれば、あなたとの時間も捻出できます。

そしてそれが不可能なのであれば、環境のいい同業他社に移るか、独立の準備を進めます。実家の家賃の折半もやめて、あなたと同棲して支出も減らします。そしてあなたとの一緒の時間をすこしでも増やします。すこし極端なことをいいますが、これが独立する人の合理的な発想です。

彼はあなたとも会えない生活をして、明らかな過労状態で、いったい月にいくら貯金ができているんですか？

彼は本当に独立する気がありますか？　きっとやんわりとな目標なんでしょうけど、独立する気がないのであれば、上手くサボるということを覚えなきゃ。真面目になんでも完璧を目指して過労状態で働いているんでしょうけど、業界内で名前をあげるなら仕事の量をこなすのではなく、仕事の質を上げないと。

彼との結婚は、いまはしない方がいいと、ぼくはおもいます。真面目な人なんだとおもうけど、ちょっとバカ真面目の要素がおおいじゃないですか。結婚するなら賢さや合理性の要素がないと。彼と結婚したらこれからトラブルが起きたときに、あなただけで解決することになりますよ。

結婚して子どもがうまれたら、きっと彼は真面目に、さらにがむしゃらに働いちゃいますよ。「パパになったんだから」って自分にいい聞かせながら。あれってたくさんの人がやってしまうけど、ぼくはいつも逆だとおもうんですよ、子どもがうまれたら旦那さんはがむしゃらに働くのではなくて、仕事をセーブしなきゃ。

もしもがむしゃらに働いて稼ぐなら、シッターさんを利用して子育ての人手を増やすべきでしょ、そういうのが必要経費です。必要経費も払わないで、ましてやサービス残業でがむしゃらに働かれたら、あなたが追い詰められるだけです。だから彼の給料や職場の環境を調べましょう。

子どもがうまれたころには、あなたの愛情は旦那さんから子どもに大きく向くでしょう。あなたの彼は家庭をかえりみない旦那になる可能性がとても高いとおもうんです。いまのあなたにしていることは、いつか子どもにもします。

そして過労死のリスクや病気のリスクもあるわけですけど、ぼくはいままでに家庭をかえりみなかった旦那さんが病気になって仕事を失い、献身的に支えられているというケースを残念ながらいまだに見たことがありません。

「悪いけどはやく死んでほしい」そういうことをいっていた奥さんには何人かお会いました。もちろんぼくが会っていない人と、会った人の話なので全てではないですよ。

あなたはあなたで自分の年齢的なことも考えて、これからさきここまで好きになれる人と出会えるかという不安があるとおもうんです。彼と別れればあなただって傷ついて落ち込むわけです、他の男性を探しても好きになれるかどうか、いい人に出会えずずっと一人でいるということも考えるとおもうんです。

「自分から別れを切り出す勇気もなく」の正体はきっとこれでしょう。あなたが本当に心配しているのは、彼のことではなく、あなたが孤独になることじゃないですか。

でもね、それが当たり前ですよ。自分の人生なんだから、自分をいちばんに大切にするべきです。他に船がないからって泥舟の豪華客船にのる必要はないですよ。船長の人柄がいいのかもしれないけど、求めべきは合理的な判断や経験です。

ぼくは2つ方法があるとおもいます。1つはこのまま彼と付き合いつつ、他の男性を探すということ。メリットは孤独のリスクをなくしつつ、別れたあとの傷つきや落ち込みを新しい彼氏で軽減できます。デメリットは罪悪感です。正直なところ、ぼくはこれをお勧めします。

もしあなたに他に少しでも気になる人がいたらこの相談をしてみましょう、泥舟にのりながら釣りをするような気分で。その気になる相手が「オレだったらそんなことしないけどね」なんていってきたら釣り上げたようなものです。

もう1つは、彼に生活の改善を真剣に相談して求めることでしょう。過労で倒れるまで仕事をすること、職場の待遇や環境のこと、独立のことや実家のことや、お金のこと。絶対に彼を責めないで、本人がどこまで考えているのか聞いてください。

そしてなんでこれをおすすめしないかというと、そんな時間がないってことなんです。そういう会社って時間を奪うことでブラックな状況から逃げられない鎖にしているんだよね。もしもこれができなければ、なおさら結婚は難しいでしょう。

そして彼は親にも搾取されてる可能性があります。親も彼の金銭を搾取することで逃さない鎖にしていないかな。試しに結婚をして実家を出たいということを、彼の口からいってみてもらってください、最初に「おめでとう」といわなければ確定でしょう。彼の親は泥舟の先客です。

もしも彼が改善をしてくれればドラマのハッピーエンドのような結末ですが、彼には彼の考えがあるし、はっきりいって大変です。そう簡単にはできないでしょう。

まずはあなたがいい船に乗ることを考えて、その船に誰と乗りたいかということを考えましょう。

今週の幡野さん

気仙沼にいました、寒かったです。
いろんな人がいろんなことを教えてくれるんだけど、言葉が半分以上、理解できませんでした。