日本の若者の自殺は、いじめなど学校やSNSにおける人間関係がきっかけになることが多い。韓国の若者は、これに加えて、絶えず競争にさらされているので、努力が報われず絶望し、将来を悲観することが引き金になりうる。進学はともかく、本来、就職は学生個人の問題であるはずだが、韓国ではあくまで家族全体の問題である。そのため、「とりあえずスキルを磨ける会社に入る」といった柔軟な態度がとりにくい。そういった体面を重んじる風潮と就職の厳しさが、若者を追い詰めている面があると考えられる。

高齢者の孤独

 韓国は2008年のリーマンショックから「超ストレス社会」を作り上げることで、日本より早く立ち直った。また、日本が民主党政権だった期間、超円高が放置され、日本経済の「縮小コピー」で同じような市場で勝負している韓国製品は超ウォン安の恩恵を受けて売れ、韓国経済は好調に推移した。

 だが、日本で安倍政権になってアベノミクスによる円安が続くと、韓国製品は再び日本製品に少しずつ駆逐され始めた。韓国経済は輸出頼みで、輸出が細ると経済全体が落ち込む。経済が落ち込むと、収入が少ない高齢者の生活を直撃する。

 韓国の特徴は、女性のほかに、高齢者の自殺率が高いことだ。年代別の自殺率を見ると、多くの国では退職年齢である60歳以降は横ばいか下がる傾向があるが、韓国は年齢が高くなるごとに自殺率も大きく増加する。年齢と自殺率が比例関係にある。

 韓国では儒教の影響が大きく、年功を重んじる傾向が強い。そのため高齢者は大事にされるのが当然という雰囲気があるのだが、最近は、そういった風潮を疎ましく感じる若者が増えている。急激に進む少子化と相まって核家族化が一気に進んだうえに、結婚しない若者も増えている。かつては若者として年配者の世話をしてきたのに、いざ自分たちが年配者になったら高齢者が病気になっても相談相手も世話をしてくれる者もおらず、孤立に陥る。そういった事情が、高齢者の自殺を増やす要因になっているのだろう。

 政府も高齢者が孤立しないように手を打ち始めていて、その効果も表れて高齢者の自殺も少しずつ減っているといわれる。だが、根本的な対策になっているとは言えず、OECDで自殺率ワーストの汚名を返上するのには力不足のようである。

 一部の報道では、韓国経済はすでにデフレに入ったのではないかと報じられている。もし韓国経済がこのままデフレスパイラルに入れば、自殺率がさらに上がる可能性もある。高齢者を中心に細かなケアを充実させることが重要だが、根本的には経済成長を拡大することが最大の特効薬である。今が正念場だと言える。