先述したように、韓国は儒教の影響がいまだに強く、父権社会の影響が強い。若者は年配者の目を常に気にしており、とくに若い女性への束縛が日本以上だ。「韓国人アイドル」の自殺が多い理由の一つに、「若い女性は貞淑でなければならない」という強い意識を持ち合わせる男性が多く、女性タレントの奔放な行動を見つけると集中的に罵詈雑言が浴びせられて、しかもその状態が長期間にわたって続くことが挙げられる。その激しさは日本の比ではない。

 今年自殺したアイドルグループf(X)の元メンバーで歌手・女優のソルリ(25)は、タレントが倫理的なことで批判を受けることに反抗して、ノーブラだとわかる画像をわざとSNSにあげるなどして、かえって反発を浴びつづけて、それは自殺するまで続いていた。ソルリの場合、批判コメントを取り上げる番組の司会をするなど、それを逆手にとるようなことまでやったのに、結局、番組が続いている間に自殺してしまう。いくら反抗しようが多勢に無勢だ。

 また、そのあとを追ったとみられる元KARAのク・ハラ(28)は、親日であるがゆえに、不当に批判された例と言えるだろう。交際男性とのトラブルで自殺未遂を起こしたあと、日本に移住してタレント活動を続けなければならなかったのも、反日が倫理である韓国では「親日」というレッテルを一度貼られると、それを重荷として背負い続けなければならなかったからである。

 両者とも「韓国人女性としてあるべき姿」から逸脱してしまって、ネットで執拗に攻撃されたことが自殺の引き金になったと考えられる。社会的制約の強い韓国社会で、タレントはさらに厳しく倫理を求められる傾向があり、その結果、ストレスのはけ口として人気タレントが攻撃されるのである。韓国は芸能人にかぎらず女性の自殺率が高いが、その背景には女性への束縛が大きいことが影響しているだろう。

 若者の重圧は受験戦争だけではない。日本は産業の裾野が広く大企業は大企業なりに、中小企業は中小企業なりに、それなりの数の有利な就職口がある。それに対して韓国では、財閥の力が強く、大企業とそれ以外に二極化している。そのぶん良い就職口の数が少なく、それもあって苛烈な受験戦争が避けられない。

 また、日本より血が濃いぶん、子供は家族や親族の期待も一身に背負うことになる。幼いときからその重圧を感じて勉強に取り組まざるをえない。しかも、頑張って一流大学には入れたとしても、大学の中でも競争が激しく、実際に一流企業に入れる者はさほど多くない。韓国の若者失業率が高いのは、家族の手前もあって無名の中小企業で妥協することができず、就職浪人する学生が多いことも一つの理由である。