「人が足りない」日本企業が迫られる劇的変化

世界で一番人を採用しにくい市場になった

人口構造の変化がもたらした労働者数の減少。日本企業にはどんな影響があるだろうか(写真:CORA/PIXTA)

現在、日本の国内企業と外資企業が直面している最大の課題は、人口構造の変化だ。近年の日本社会の高齢化と出生率の低下は、企業の顧客数の減少だけでなく、日本の労働市場で雇用可能な労働者数の減少をももたらした。 2015年に日本経済は「完全雇用」の状態となって以来、雇用可能な労働者の数は着実に減少している。

足元の失業率は、女性2.2%、男性2.6%で、過去30年間の最低となっている。従業員の考え方の変化と相まって、これらの数字は日本の人事担当者たちを悩ませている。2018年の日本人被雇用者の転職者数は過去最多となった。

転職者の数はほかの国々に比べるとまだ低いが、日本企業の多くは依然、従業員たちが同じ会社に数十年勤め続けることを当てにしているため、憂慮すべきものと言える。こうした変化は、日本企業にどんな影響を与えるだろうか。

人材採用が著しく難しくなっている

日本企業にとって悩ましいのは、転職者が増えている一方で、デジタル戦略など新たな事業分野でのスペシャリストを十分な数だけ採用することが困難になっていることだ。目下、日本は採用する側にとって最も厳しい求人市場と見なされていることは驚くに当たらない。人材派遣会社のマンパワーによると、日本企業の81%が新たな従業員を見つけるのは難しいとしている。これは世界で最も高い水準だ。

労働力不足は、求職者の交渉力を増大させる。従来、日本企業における採用活動は新卒中心で、企業で実地に仕事の仕方を学ばせることに重きを置いていた。雇用した従業員の多くは、キャリアの終わりまで同じ会社で働き続けたからだ。

だが、過去数年間で、転職はより簡単で、より有利なものになった。多くの国においては、転職が、キャリアのスピードアップや給与上昇の最も簡単な方法となっている。日本でもまた、転職理由の多くは給与アップだ。従来より会社への忠誠度が低い従業員も増えている。離職率の上昇は、多くの人事担当者にとって予期しないものだった。

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  • ニュートロン7c04fb1683fe
    低賃金の非熟練工がほしいだけの企業は淘汰されてしかるべき。
    そもそもこんな低賃金ではそのうち外国人も来てくれなくなる。
    今でも途上国の労働者で一番優秀な層はアメリカやオーストラリアに行き、日本に来るのは二番手か下手をすると三番手の層しか来ない。
    まだ日本が金持ちの先進国と勘違いしている内弁慶官僚とロートル経営層が多すぎる。
    up33
    down0
    2019/12/16 08:36
  • といざヤす9fb97ee2a27b
    この手の記事を読むたび、毎度不思議なんですけど・・・
    こういった記事の筆者さんは、決まって「専門的能力を持つ人間を中途採用して効果的に生かせ」とおっしゃいますが、その人間に「最初に専門的能力を教育するのは誰か?」については、まったく言及しないんですね。
    専門的能力を持つ人間が、海のあぶくから自然に生まれて、巨大ホタテの貝殻に乗っかるんでしょうか?

    世の中の会社のすべてが「我が社に役立つような専門的能力を、誰かが教育してくれているはず、どこかに人材がいるはず」という青い鳥症候群になったら、結構怖いことだと思いますが。
    up32
    down4
    2019/12/16 06:31
  • はらぴーc48f16528fa2
    人手が足りないんじゃなくて、『安価な賃金で来てくれる』人手が足りない、の間違いです。
    ここが昔の人手不足とは違う所ですね。
    だから大手などは単純に人減らししたり、可能な限り機械任せにしてみたり、それでもどうしても必要なら作業レベルを下げて、低賃金な低レベル労働者でまかなってみたり。結果、高等技術を持つ労働者は不要だったり、生み出されなくなったりするわけです。
    日本の未来は先細るばかりですね。
    up24
    down0
    2019/12/16 07:49
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