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【研究結果】本当に何かを習得したいなら、学習ではなく〇〇が効果的

英語学習の科学

筆者の専門は言語学で、特に「第二言語習得」(second language acquisition)と言われる分野です。あまり馴染みがないかもしれませんが、「第二言語習得」とは、母語以外の言語(外国語)を学習するプロセスを解明することを目指す研究領域です。

第二言語習得研究の特徴の1つに、学際的であることが挙げられます。すなわち、言語学はもちろん、心理学・脳科学・文化人類学など様々な分野の知見を取り入れ、発展してきたということです。

特に、記憶や学習のメカニズムを解明することを目指した認知心理学の研究から、効果的な外国語学習法に関する多くの示唆を得ることができます。

 

テスト効果:テストが記憶を強化する

今回は、認知心理学者である米国ワシントン大学のヘンリー・ロディガー教授とパデュー大学のジェフリー・カーピキ教授が行った研究をご紹介します(*1)。この研究は、外国語学習ではなく、母語での読解を扱ったものですが、外国語学習にも多くの有益な示唆を与えてくれます。

彼らの研究では、アメリカの大学生が「太陽」や「ラッコ」などに関する英文テキストを読みました。この研究では、(1)繰り返し学習条件、(2)テスト条件、(3)繰り返しテスト条件という3つの条件の効果が比較されました。

(1)繰り返し学習条件では、実験参加者は指定された英文テキストを20分間読みました。(2)テスト条件では、参加者は指定された英文テキストをまず15分間読みました。その後、英文を見ずに10分間で英文の内容をできるだけ思い出し、紙に書き出すというテストを受けました(ここで言う「テスト」とは、学習効果を測定するための事後テストのことではなく、練習の一環として行われるテスト形式の活動を指します)。(3)繰り返しテスト条件では、参加者は指定された英文テキストをまず5分間読みました。その後、英文を見ずに10分間で英文の内容をできるだけ思い出し、紙に書くというテストを合計で3回受けました。

実験の5分後と1週間後に、英文の内容をどのくらい覚えているかを測定するテストを行いました。5分後と1週間後の正答率は、以下のグラフのようになりました。

上のグラフからわかる通り、5分後の正答率は(1)繰り返し学習条件が83%で最も高く、(2)テスト条件が次いで78%、(3)繰り返しテスト条件が71%で最も低いという結果になりました。

一方、1週間後のテストでは、全く逆の結果が得られました。すなわち、(3)繰り返しテスト条件の正答率が61%と最も高く、(2)テスト条件が次いで56%、(1)繰り返し学習条件が40%で最も低くなりました。

(*1)Roediger, H. L., & Karpicke, J. D. (2006). Test-enhanced learning taking memory tests improves long-term retention. Psychological Science, 17, 249–255.