最新の話題にめざとい人にとって、世界でも最先端を行く中国の決済事情というのはここ数年耳にたこができるほど繰り返されてきた話題だろう。特に、中国アリババ集団(Alibaba Group)の金融子会社が提供する「支付宝(Alipay)」や中国テンセント(Tencent)の「微信支付(WeChat Pay)」などは、増え続ける中国からの旅行客とともに日本国内においても対応店舗が拡大している。
「支」の漢字があつらえられた青いロゴマーク、いわゆる「アクセプタンスマーク」を見たことがない人の方が少ないかもしれない。
ところが日本でも見かけるこのAlipay、実際に利用しようと思うとハードルが非常に高い。Alipayアプリが持つ決済や送金機能を利用しようとすると、中国国内の銀行口座と電話番号が必要になり、“普通”の日本人ではアカウントの有効化さえできない。せっかく、中国全土で現金なしに周遊が可能な決済インフラがあるのにもかかわらず……だ。
つい先日まではライバルにあたるWeChat Payに現金チャージを行い、これを中国現地で利用するという業があったのだが、この仕組みは制度変更により突然使えなくなってしまった。金融サービスのルールは日々刻々と変化しているとはいえ、これでは中国国内の人々と外国人旅行者とで様々なサービスの利便性に隔たりができてしまう。
こうした中、2019年11月4日になってSNS上で「AlipayでTour Passというのが利用可能になっている」という情報が拡散して話題になった。Tour Passとは一種のプリペイドカードのようなもので、ここにクレジットカードなどを経由して残高チャージを行うことで、Alipayの残高として利用できるようになる。
日本国内で発行されたカードでもチャージに利用できるので、使う金額をあらかじめチャージしておけば飲食や買い物にすぐに利用でき、残高が足りなくなったときはインターネットに接続して再びカードからチャージすればいい。
ただしTour Passには若干の制限があり、中国国内での決済にしか利用できないこと、送金機能は利用できないこと、一部のサービスは認証ではじかれることなどの問題がある。それでもほとんどの買い物には問題なく利用できるため、これから中国を訪問してみようという方はぜひとも使ってキャッシュレス体験を満喫してほしい。また、WeChat Payも同様の外国人旅行者向け対応を発表しており、そう遠くないタイミングで利用可能になるはずだ。
日本でもLINE PayやPayPayなどのサービスが登場してかなり身近になった。スマートフォンのアプリ上にQRコードやバーコードを表示させて行う「コード決済」だが、基本は中国でも一緒だ。むしろ先行する中国を参考にして作られているため、中国でのトレンドがやや遅れて日本に入ってきたと考えていい。今回はせっかくTour Passが使えるようになったので、Alipayを例に紹介していく。
中国でAlipayはこう使う
Ailpayの支払い方法は主に2種類で、アプリ上にQRコードやバーコードを表示させて、店員がPOS端末の赤外線スキャナー(もしくはカメラ)で読み込むタイプと、店舗に掲示されているQRコードを利用者がアプリからカメラを起動して読み込み、支払金額を入力するタイプのいずれかになる。後者は露店などの個人店やタクシーなどが該当する。
1点気を付けたいのは、掲示されている支払先のQRコードが店舗用のアカウントになっておらず、支払いが個人送金扱いとなってTour Passでは取り扱えない場合があることだ。Alipayが使えない場合は基本、外国人には現金以外の支払い手段がないため、最低限の中国元は携帯しておくことをお勧めする。
また興味深いのは自動販売機(自販機)を利用する場合で、自販機に表示されているQRコードを読み込んでAlipayで支払うものだ。QRコードを読み込むと「ミニプログラム」と呼ばれる“アプリ内アプリ”が起動し、当該の自販機で購入可能な商品の一覧が表示される。商品を選んで決済すると、自販機から自動的に商品が排出される。割とアナログな仕組みの自販機がデジタル化されているようで面白い。
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