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【社説】

ウクライナ紛争 粘り強く対話を重ねよ

 和平に向けた再起動を歓迎したい。ウクライナ東部の紛争をめぐり、関係四カ国首脳による和平協議が九日行われた。対話を粘り強く積み重ね、六年越しの紛争に終止符を打ってほしい。

 親ロシア派武装勢力の後ろ盾であるロシアと、ウクライナという実質的な紛争当事者、それを仲介するドイツとフランスの計四カ国の首脳が顔をそろえたのは三年ぶり。和平プロセスが頓挫した二〇一五年の停戦合意に新しい命を吹き込めるか。その成否がかかった四者会談だった。

 三項目の短い共同声明によると、四首脳は年内に停戦を完全履行することのほか、捕虜・拘束者の交換、兵力の引き離しでも合意した。

 半面、親ロ派武装勢力の支配地域に「特別の地位」と呼ばれる自治権を付与することや、支配地域とロシアとの国境管理権をウクライナに引き渡すことについては結論が出なかった。

 ロシアのプーチン大統領は今年、東部地域住民にロシア国籍を付与することを認めた。クリミア併合に続き東部でもウクライナ分断を進める強硬姿勢は、ウクライナを欧州志向へ追いやっただけだ。旧ソ連圏を自分の勢力圏と見なすロシアだが、ウクライナは「脱ロ入欧」路線を歩んでいる。

 それにロシアは和平問題を進展させないと、欧米による経済制裁が解除される展望は開けない。

 一方、プーチン氏と初めて顔を合わせたウクライナのゼレンスキー大統領にとっては隣の大国ロシアにどう向き合っていくかは最大の課題である。

 ウクライナにはロシア産天然ガスを欧州に輸送するパイプラインが通る。その通過料収入に関する契約の期限が年末に迫るなか、ロシアとの交渉が難航している。通過料収入は年間約三十億ドル。国内総生産(GDP)の2%ほどに相当する。

 こちらの交渉が和平交渉にも絡んで複雑化。加えて、ゼレンスキー氏はロシアへの譲歩に反対する右派などの圧力にさらされ、苦しい立場にある。

 「ミンスク合意」と呼ばれる一五年の停戦合意が有名無実化したように、今回の合意事項も履行されない可能性は否定できない。まずは合意事項の着実な実行を求めたい。

 一四年のクリミア併合直後に始まった紛争は約一万四千人の犠牲者を生んでいる。悲劇をとめる努力を惜しんではならない。

 

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