働き方改革で様々な関連法が改正される中で、2020年4月(令和2年)から派遣労働者にも『同一労働・同一賃金』が適用されます。 今回の法改正は『通常の労働者(いわゆる正社員)と派遣労働者との間の不合理な待遇差を解消すること』を目指しています。
つまり、派遣社員として働く方が、『業務の内容+責任の程度』が通常の労働者(正社員)と同じなら、同じ給料を払うべきということです。
今までは、正社員と同じ業務をしていても、給料に差があったり、通勤手当が支給されなかったり、賞与が支給されなかったり、福利厚生施設が利用できなかったりなど、正社員と比べて不利な扱いがされていました。
実は、 EU諸国では、フルタイム社員とパートタイム社員が同じ仕事をしている場合、1時間あたり同じ賃金を支払う『均等待遇』をEU指令によって加盟国に義務付けています。
下の図を見てください。
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EU諸国では、パートタイム社員の賃金水準が正社員の7割~8割あるのに対して、日本は6割にも満たしていないのが現実です。
日本の現状では、サラリーマンの3人に1人は非正規で働いています。中には、同じ仕事をしているのに賃金だけが低いという方もいらっしゃると思います。
今回の改正で、同じ働き方や業務内容であれば、賃金も同じように払うことによって、働く人(非正規の方)がモチベーションが上がり、結果として、企業としても生産性向上につながるということです。
それでは、労働者派遣法改正のポイントについて説明します。
今回の法改正で、『派遣先の通常の労働者との均等・均衡待遇を図る方式』か、『派遣元における労使協定に基づいて待遇を決定する方式』のいづれかの方式によって派遣労働者の待遇を決めることが義務化となりました。
派遣先の通常の労働者との均等・均衡待遇を図る方式
『派遣先の通常の労働者との均等・均衡待遇を図る方式』では、派遣先の従業員の待遇と均等・均衡になるように設定することにより同一労働同一賃金ルールに対応する方式となります。
派遣元における労使協定に基づいて待遇を決定する方式
『派遣元における労使協定に基づいて待遇を決定する方式』では、派遣社員の待遇について、厚生労働省が職種ごとに毎年定める賃金以上により対応する方式となります。
では実際、働く給料が以前と比較して、どのように変わるのか?①基本給・賞与・手当等 ②通勤手当 ③退職金に分けて説明します。
①基本給・賞与・手当等
多くの企業で採用するだろう『派遣元における労使協定に基づいて待遇を決定する方式』で説明すると、お給料を同種の業務に従事する一般の労働者の平均的な賃金額として厚生労働省令で定めるものと同等以上であることにしなければいけません。
厚生労働省で定める同等以上とは、次の計算式が決められています。
【一般労働者の職種別の勤続0年目の基本給・賞与等×能力・経験調整指数×地域指数】
例えば、大阪府に勤務する人事事務員(経験調整指数3年)の場合、【(基準値)1,235円×(経験調整指数3年)131.9×(大阪府の地域指数)108.3=1,764円】
つまり、上記の計算例の場合、最低でも、1,764円以上の時給単価を支払うことが必要です。
※経験調整指数は派遣元の人事評価によって決まります。例えば、人事事務員の経験は2年だが、能力が3年の場合、経験調整指数は3年となります。
②通勤手当
通勤手当の決定方法は2通りです。実費支給により『同等以上』を確保するか、一般の労働者の通勤手当に相当する額と『同等以上』を確保するのどちらかで決定します。
実費支給により『同等以上』を確保するとは、一般通勤手当額72円以上を支払うことが定められています。
例えば、1日8時間労働の週5日勤務の場合、【72円×8時間×5日×52週(1年換算)÷12か月=12,480円】つまり、最低でも月12,480円以上の交通費を支払うことが必要です。
③退職金
勤続年数などで決まる『一般的な退職金制度の適用』か、『時給に6%上乗せする退職金前払い方式』か、『中小企業退職金共済制度などへの加入』かを選択しなければいけません。
① 一般的な退職金制度の適用
派遣元が定める退職金制度と厚生労働省局長通達にある一般の労働者の退職制度を比較し、一般の労働者の退職制度と同等以上を支払うことが必要です。
②時給に6%上乗せする退職金前払い方式
一般の労働者の平均的な賃金額として厚生労働省令で定めるものと同等以上の金額に6%の退職費用を上乗せした金額を支払うことが必要です。
③中小企業退職金共済制度などへの加入
中退共を利用する場合は、一般賃金の6%を拠出することにより一般の労働者の退職制度と同等以上を支払うことが必要です。
最後に
今回の派遣法改正は非常に複雑です。おそらく派遣会社の担当者でも、完璧には理解できていないと思われます。(交通費だけを払ったらいいと解釈している方が多いと思われます。)派遣会社が言った言葉をうのみにしないで、最寄りの労働局に相談すことも重要ですよ。