『韓国の伝統文化 日本文化とのかかわりの中で』金渙著より
日本の天孫降臨神話
檀君神話と日本の天孫降臨神話を比較考察してみます。『古事記』上巻に天照大神と高御産巣日神は、天孫瓊瓊杵尊に神勅を下されて、「この豊葦原水穂国はおまえが治める国である。よって命令の通りに天降りなされよ」と仰せ付けられました。こうしたことがあって、五伴の緒(五つの部曲の族長)にそれぞれ職務を分担させて従者に加え、瓊瓊杵尊は天降りなさった。その際に八尺の勾玉と鏡、それに草薙の剣の三種の神宝、それから常世思金神・手力男神・天岩門別神をも瓊瓊杵尊にお従わせになって、天空に幾重にもたなびく雲を押し分け、威風堂々と道を押し分けて、筑紫の日向の高千穂の槵触峯に天降りなされた。ここにおいて瓊瓊杵尊は「ここは遠くは韓国に面し、近くは笠沙の岬にまっすぐ通じて、朝日のじかにさす国、夕日の照り輝く国である。だからここはまことによい土地だ」と仰せられて云々となっています。いま両神話を比較してみると、①共に天孫が神の命令をうけて下界を治めるために天降りした。②檀君神話の天符印三個は天孫降臨神話の三種の神宝に該当する。③檀君神話で風伯・雨師・雲師三職能神を率いて天降ったのは天孫降臨神話の五伴緒に該当する。このような共通点と瓊瓊杵尊が筑紫の日向の高千穂の槵触峯に天降って、その第一声が「ここは遠く韓国に面し・・・」といったのを考えあわせるとき、天孫降臨神話は檀君神話が海を渡って日本に受容されたものであり、これは日本の支配階級の淵源が朝鮮半島からの渡来人であったいうことをうらづけるものです。
伽耶大学校内で行われた第15回高天原祭に参加させていただきました。日本の建国神話にある「高天原」の故地が、宮崎県の高千穂ではなく、韓国の慶尚北道高霊郡の高霊だという説があります。
「高天原の故地」筑波大学名誉教授 馬淵和夫氏の論文によれば、韓国でも「高天原」と高霊とを結びつける学説はあるようで教授はこの地こそ「高天原」だと書かれています。ではなぜこの地なのか・・・?文章が長いのですべてをお伝えできませんが、『古事記』の「韓国に向ひて」の韓国は「後世の当て字であって「伽羅国」が本来であろうとし、天孫およびその一行は、自分たちが今離れてきた故郷の伽羅の地を望みやって、それとのつながりを確かめたい気持ちから「韓国に向い」といったのであろう。とあります。又、高霊の遺跡には五世紀より古いものが出ていないが私説の弱点とも書かれています。
『古事記』の神話ゆかりの地
ニニギノミコトが旅立った天磐座
第14回高天原祭が開催された高天原公園=加耶大学校キャンパス |
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神位奉安で香や水を捧げる高霊郡の郭龍煥郡守 |
釜山空港から送迎バスでおよそ2時間、大河洛東江に沿うようにして北上する。西方に霊山・伽耶山(1430メートル)を仰ぐ。
よく知られているように、高天原は『古事記』や『日本書紀』に伝えられ、イザナギノミコトが生んだ天照大神やスサノオノミコトが住んでいたという神話上の居所だ。
その所在地について、天上説、九州説など諸説ある中で、高霊に比定したのは、30年ほど前、当地を訪れた故・馬渕和夫・筑波大学名誉教授(言語学)。日本神話と加耶神話の類似性や、考古学、言語学上の観点などから、高天原の故地と確信し、加耶大学校の李慶熙総長(当時)と意見が一致したことに始まる。
それを受けて李氏が、加耶大学校の敷地に約5万坪の山地を高天原公園に造成。99年6月、「高天原故地」石碑の除幕式と第1回高天原祭を行った。
今回の高天原祭(主催=加耶大学校、高霊郡)には、日本からの参加者数十人を含む学者、歴史愛好家、地元住民、学生など約300人が参席。特に今年が『古事記』編纂1300周年に当たることから、神話にゆかりのある宮崎県からの参加者が目立った。
式に先立ち、李慶熙前総長は「韓国と日本は深い縁があります。互いに永遠に親しく交わりましょう」とあいさつ。さらに昨年11月に亡くなった馬渕氏への追悼の言葉を述べた。
式では、加耶神話の神々と、日本神話の天照大神、スサノオノミコトに対し、「神位奉安」が行われた。高霊郡の郭龍煥郡守、加耶大学校の李尚●総長、日本の南邦和氏(作家、詩人)の3人が献官を務め、香や水を捧げた。
この日、午後には加耶大学校で、島根大学の金秀明研究員が「島根県内の加耶文化」をテーマに学術講演。その後、天孫ニニギノミコト一行が発ち九州の日向に向かったという天磐座の史跡を見学。李氏が調査の結果、2年前に比定した所だ。
そこは洛東江河畔にあり、大きな岩場が川面に浸っている。かつては船運が盛んで、李朝時代まで開浦渡船場があり、伽耶山海印寺の「八万大蔵経」(ユネスコ記録遺産)は、高麗時代、製作地である江華島からここまで船で運び海印寺に納めたと伝えられる。
大学周辺には大加耶歴史館、于勒博物館、大加耶王陵展示館(総じて大加耶博物館という)があり、加耶の歴史文化を紹介。年間入場者数は、国立中央博物館(ソウル市)、国立慶州博物館(慶州市)についで韓国で3位という。
キャンパスの北西の丘陵上には、壮観な眺めの王陵・池山洞古墳群があり、高霊郡内には、大加耶城跡、井戸跡、造船場跡、岩壁画、壁画古墳など多くの史跡が点在。古くからの豊かな歴史を感じさせる。日韓古代史に関心のある人には必見のスポットだ。